L.O.D と言う考え方 | 社交ダンスはヒップホップよりやさしい

社交ダンスはヒップホップよりやさしい

学校教育におけるダンスと言えば,ヒップホップが主流となっていますが、社交ダンスは二人で助け合って踊ることにより誰でも覚え易く、技術とマナーが自然と身に付きます。
子供からご年配まで、踊ることにより相互理解が得られる、素晴らしい芸術的スポーツです。

スタンダードダンスを習うと、L.O.D (ライン オブ ダンス) 

と言う踊る為の壁に平行の仮想線を習います。

つまり、二人が部屋の中で踊って行く基準の方向を示し

この方向から様々なステップを踏む向きが決まります。

また、この踊る方向の基準は、川の流れの様に、全ての

踊り手が時計回りと逆に部屋を巡回して行く事を示します。

 

自分の立ち位置から360度を八等分して踊る方向を決め

基本的に逆行しないように自分達のルーティンを踊って

行きます。

進行方向に向いて直角の右方向を壁と言い、左方向を

中央と言い中央とL.O.Dの真ん中を中央斜めと言いい

壁とL.O.D の真ん中を壁斜めと言う事は多くの方が

知っています。

 

様々なフィガーはこの8つの方向に踊るように説明され

誰もがそのルールに従って踊る事で誰とでも踊れる様に

作られています。

その為、テキスト通り正確に踊れば間違いなく楽しい

社交ダンスが踊れるはずですが、残念ながら、男女が

完璧に角度を取りステップを踏んだとしても思い通りには

決して踊れません。

 

確かにステップの種類と踊り方を憶えるには良いのですが

いざ男女がコンタクトして踊るとなると、極めて不自然で

現実性の無い踊り方と言えるのです。

この踊り方は、足首から上が無い、つまり靴だけの男女の

踊りを説明しているに過ぎず、男女の上体が如何に動く事で

ステップが作られて行くかと言う事を習わなければ成りません。

 

特にローテーションを伴う音楽表現は、いかなるステップも

テキストに書いた様には踊る事無く、男女によって踊る環境

ペアに因る運動機能や体型、更にはフィガーの組み合わせで

大きく違ってくることを学ばなければ成りません。

同じ種類のフィガーであっても、ペアによって全くステップの

方向や大きさが違い、外見的に似ていても、ペア其々の異なった

運動表現から生み出されるオリジナルの踊り方なのです。

 

その為、正確にステップを憶えても、と言うよりテキスト通り踊れば

誰と踊ってもコンタクト面にはストレスが加わり、楽しく踊ると

言うより、外見を取り繕う事で精一杯の踊りと成ってしまいます。

もちろん、正しく方向を決められたステップをテクニックの通り

踊る能力は必要ですが、その基礎的な踊り方をお相手によって

環境によって音楽によって様々に変化できなければ成りません。

 

この変化を生み出すのが、お相手と音楽を充分に感じとり

其々の運動機能を正しく繋ぐ技術を学ぶ事に成ります。

男女が其々の記憶の元に自分の運動表現だけを行うと

上半身はしっかりと固定して踊らねばならず、外見的に

美しく見えても二人にとっては苦痛の踊りにしか成りません。

 

多くの踊り手が思い通り楽しく踊れない原因が、素晴らしく

完璧に覚えているステップやテクニックは有っても、目の前の

お相手との関わり合いのテクニックを知らない事に有ります。

自分のテクニックや記憶を元に踊ると上体は緊張して

お互いにコンタクト面に大きなストレスが掛かります。

つまり、相撲や柔道の試合の様な状態です。

笑顔で踊っていても格闘技の運動表現と成っているペアが

とても多いのが現状です。

 

自分の踊り慣れたパートナーや先生としか楽しく踊れない

と言った方は、残念ながらどんなにキャリアが有っても、

社交ダンスが踊れていないのです。

欧米の踊り手が日本人と踊ると楽しくないと言いうのは、

自分の頭の中の記憶と踊っている事が多いからです。

 

彼ら彼女らが言います、目の前の私と踊ってください、と。

沢山のステップやテクニックを覚えても、目の前の方を

楽しませられないのは社交ダンスでは有りません。

出来るだけ簡単なステップでお互いの運動機能が繋がり

ストレスなく踊れる事が社交ダンスの最大の目的でもあります。