社交ダンスは、食べ物では有りませんが鮮度が命である
と言う事を知っていますか。
つまり、今目の前で踊られているダンスは、その時二人が
感じた心の現れであり、流れている音楽の魅力なのです。
確かに、演ずる為に身に付けているステップや運動表現
テクニックは有りますが、それらには、ペアの心の様を表し
互いの思いを知る事と見ている人に伝える為の大切な
本来の目的が有ります。
多くのステップを身に付け様々な運動表現を覚えるのも
それらを使って自分達の心の思いを音楽的に表現し
豊かな感情を空間に開放する為にあります。
しっかりと記憶したステップや音楽表現を間違いない様に
再現する事は、自分達の思いを出来るだけ正確に伝え
互いにお相手を喜ばせ、見ている人達にもペアとしての
感動的な思いを表演する為であるのです。
この事は様々なスポーツや芸能にも共通する事で有り
人間の生き様を示す手段でもあるのです。
与えられた物をそのまま何も変えず提供すると言うのは
運送業の様なもので有り、その行為に互いの心が躍動し
感動するものでは無く、更にはその行為を見ている人にも
唯の作業にしか感じません。
どんなに素晴らしいルーティンで踊っていようと、見た目派手な
演出で踊っていようと、本当に心に訴える感動的な踊りは
とても少ないものです。
見た目の演出や複雑な運動表現に社交ダンスの価値を
感じている方々が多くて、一時素晴らしいと思っても直ぐに
感動は薄れ、まるでテレビのチャンネルを替えるかのように
別のペアに心が移って行きます。
一体何故、と言いたいところですが、簡単に言えば
例えどんなに素晴らしくともその多くが借り物の演技で有り
店先の商品を見せられている様にしか感じないのです。
私達は常に新しい物を求めている様で、誰もが実際は
本当に自分の心の一番デリケートな部分を満たしてくれる
生きる喜びを感じるものを探しています。
それは、演ずる側の演技に対しても、どれ程素晴らしくても
簡単に他の踊りと取り換えられる様なものでは無く、
唯一無二のペアとしての感動的な踊りを求めています。
それは決して派手な比較的な美しさや豊かさでは無くて、
ペアの持つ心の中の人としての愛情で有り真心なのです。
例え決められたルーティンを踊っていても、その踊りに中に
ペアとしてのオリジナルな思いが感じられる事なのです。
次から次に新しい物を買い求めてる消費経済社会の中で
人々が翻弄されて行くように、踊り手達が新しいステップや
運動表現を身に付ける事のみに気持ちが傾いているのが
残念と言えます。
現に、とても華やかな踊りを演ずるペアが、簡単なベーシックで
作られたルーティンを踊ると、途端にスケールも感動も薄れ
単なる確認作業に成っているのを何度も見て来ました。
素晴らしい感動的な踊りを見せる欧米の踊り手達の魅力は
誰にでも踊れる簡単なルーティンを演じる時、彼らがドレスアップし
華やかに演ずる競技ルーティンよりも遥かに心に深く印象的な
人間の暖かさを感じる事です。
如何に、互いの思いを大切にし互いに慈しみ合って踊っているか
社交ダンスの踊りのテクニックを遥かに凌ぐ感動です。
この事は、世界のトップクラスの踊り手の話では有りません。
社交ダンスを始めて間もない方々にも共通の思いで有り、
誰もが感じ自分の魅力として身に付ける事が出来るのです。
ただ、与えられた踊る為のアイテムやステップをそのまま
覚えようとするだけでは片手落ちです。
常に自分の心に問いかけお相手の気持ちに寄り添う気持ちが
とても大切です。
そしてその時流れる音楽は、自分達の思いをどの様に表すか
教えてくれます。
ただ素直な気持ちで音楽とお相手に心を向ける事が
社交ダンスを踊る上でとても大切です。
最近多用されるリモート形式のテレビ番組は、苦肉の策とは言え
本当に詰まらないテレビの本質を失った企画で有り、出演者も
見ている人達もそのもどかしさに全く心が動きません。
更に過去の番組を見せてスタジオや自宅からタレントがネットで
参加している様は、正に人と人との関わり合いを失って、
リアルな感動を取り去ったダシ殻の様な番組です。
近年の社交ダンスの踊りがこのつまらない番組と何だ変わらない
と言う事を解って頂けたいです。
社交ダンスは、男女が一緒にコンタクトして踊る事で、生きている
生の男女の心の感動が表現できるのです。
この素晴らしさは私達人間の生きる原点とも言えるのです。
ただ外見だけを美しく作り、決められた順番を男女が別々の思いで
間違いなく再現する踊り方が実に詰まらなくて楽しくないか
これから沢山のステップやテクニックを覚えて行く方々には
心して欲しいと思います。
コロナ禍で更に社交ダンスは風前の灯とも言えます。
一日も早く元の様に誰でも自由にコンタクトして踊れる日々が
戻って来る事を心から願いたいものです。