社交ダンスが思うように踊れない時、私達は、自らの
努力の足りなさ能力の無さ知識の足りなさを痛感し
更なる精進を心に科す事が多いですが、はたして
一生懸命頑張って、思う様に踊れる様にする事が
社交ダンスを上達させる方法と言えるのでしょうか。
昔から日々努力を重ねまい進する事が、習い事を
より上達させる方法と考えられて来ましたが、
本当に、練習を重ね与えられた課題を成し遂げる事が
最善の方法なのでしょうか。
ならば、頑張った人は全て夢を叶え、自分の思い通りの
踊りが踊れる様に成っているのでしょうか。
そう、その殆どの方が夢破れ、ほんの一部の方が
人々から羨望の目を向けられているに過ぎません。
私達の身体は、本来思う様に動く様に出来ているのですが
何をするにしても瞬時に最も適切な方法で行う事は
とても難しくて、繰り返し練習したり勉強したりしてようやく
思いを遂げられる様に成ります。
社会勉強も学校で習う学問も、言うならば、自らの心と
身体が思うが儘に感じ動けるようにする為に行うものです。
自分勝手な思いで行動したり話したりすれば、たちどころに
トラブルを呼んでしまい、幸せな社会生活は営めません。
社交ダンスを踊る時も、様々なステップを使い運動表現を
する事に依って、自分が思う様に演じているのです。
所が、実際に自由に演じようとしても、コンタクトして踊って
いる限り、自分の思い通りに身体を動かす事もステップを
踏む事も出来ません。
そこで様々なテクニックが生れ、男女が如何に動けば
トラブルが無くなるかという理論を学ぶのです。
しかし、習った通り踊ったとしても、誰もが自由に踊れる
と言う訳ではなく、むしろ、多くの場合、先ずコンタクト面が
異常に緊張し身体中の筋肉が動かなくなってしまうのです。
例え、動けたとしても、それはいつもの自分の運動とは
程遠い不自由で拘束された動きになるのです。
すると多くの場合、練習不足とか知識が足りないとか
言う理由で、動かない身体に鞭打って、動く様に強いる
努力を重ねるのです。
所が、どんなに頑張ったとて、思い通りにならない身体は
いずれ痛みや苦しみが生じ、楽しいはずの社交ダンスが
苦しみを押し殺して笑顔で踊ると言う、極めて不自然な
踊りと成ってしまうのです。
ここで大切な事は、人間の身体は、私たちが強要して
一生懸命頑張らないと動けない様に成ってはいなくて
元々、自由に楽しく、むしろ無意識に動けるように
成っているのです。
実は、上手く動けないと言うのは、間違った運動を行って
身体がその間違いを必死に訴えていると言えるのです。
更に苦しみや痛みまで伴うと、もはやその運動表現は
生命活動にとって危険と成っているのです。
スポーツをしていると、ややもすると苦しみを我慢すれば
素晴らしい未来が待っていると言う様な妄想があり、
多くの選手が間違った運動で怪我を負い、せっかくの才能を
潰してしまっているのです。
身体が思う様に動けなかったり、自由に音楽表現が出来ず
自分の事しか考えられない時は、間違った身体の使い方を
行っている事が多いのです。
多くの美しい運動表現や魅力的なフットワークは、見えた様に
動かしているのではなく、本来の身体の機能や性質に則って
反射的に行われた時生まれるのです。
大切な事は、この誰もが本来持っている運動機能を、具体的に
男女の身体を通して知る事です。
その動きは目立つ部分や筋肉運動で行うのではなく、どんなに
小さな表現でも全身から繋がった運動によって成される事です。
あらゆる運動表現は、自分が持っている長年使われて来た
運動機能を経てから様々な種目の演技と成るのです。
この男女が其々持っている機能を繋ぎ合ってお相手の動きを
感じる事で反射的に演じているのが社交ダンスです。
演ずる為のテクニックや運動表現の知識は有っても、それらは
お相手から伝わる心と身体の変化によって反射的に変化して
ペアとして最も相応しい音楽表現に成るのです。
自分が思うが儘の踊りが踊れるまでに、出来るならば、
自らの身体の不自由さを感じないで練習できる事が大切です。
音楽表現は、自分の身体が思うが儘に動けて初めて踊り手も
見ている人達も感動できる様に成るのです。
自分の足形や運動表現を考えながら踊っている様では
お相手も素敵な音楽も受け入れられないのです。
何度練習をしても思い通り踊れなかったり、音楽やお相手が
感じられない時は、その踊り方はあなたの身体にストレスを
与えるだけで有って、二人の間にトラブルを生じさせるだけです。
素晴らしいステップ、素敵なルーティン、魅力的な運動表現を
習ったとしても、そのまま習った様に記憶するだけでは、
自分の身体もお相手の身体も自由には踊れないのです。
様々な道具や知識を思うが儘に使える自らの運動機能を
初心者の時からしっかりと習い理解する事が大切です。
残念ながらプロの先生ですら知識を再現する事で踊っている
自らの身体を苦しめる踊りをしている方が数多くいます。
知識が多い事は社交ダンスを楽しく自由に踊る事では無く
それらの知識を自分とお相手の踊りに、反射的に変化させ
ストレスを溜めない踊りが出来る方がベストなのです。
自分の心と身体を知らないで、与えられた知識の再現にのみ
努力を重ねると、取り返しのつかないトラブルを呼びます。
私が現役当時何度も患った病や怪我は、その殆どが
間違った知識からの危険な努力の積み重ねであった事に
有ったのです。
自分の身体を知れば、心も身体も傷つくことなく、ペアとして
苦しむことなく社交ダンスの多くの喜びを感じる事が出来るのです。