社交ダンスは、男女が最も近接して対人関係を学ぶ場です。
ヨーロッパ社会で社交ダンスが踊られる大きな理由の一つは
子供達が社会性を身に付ける為、大人が、対人関係を
豊かに保ち、更には、世代を超えた心の交流を図る為です。
人の気持ちは外見では中々解らないものです。
特に、世代の感覚の違いは、お互いの誤解を生み、様々な
トラブルを生む原因と成っています。
かつて昭和初期の頃、人々は決して豊かとは言えなかった
日常生活の中で、家族であろうとご近所さんであろうと
心の距離は今より遥かに近くて、誰もが自分の周囲の人を
気遣って生きていました。
しかし、世の中が便利で豊かに成ると、お金さえあれば何でも
自分の思い通りに成り、人との関わり合いが希薄と成り、
自分の欲望を前面に出すことで、様々なトラブルが増えて
来ました。
他人の気持ちが解らなくなると、諍いが生まれ、多くの
悲しみや憎しみが生まれます。
社交ダンスは、男女の喜びを表現します。
踊る事で、お互いが目の前のお相手を心から信じ、
素敵な時間を分かち合うのです。
其々が身に付けるテクニックや運動表現は、ステップや
外見を美しく見せるだけでなく、お互いの気持ちを知る事で
思いがより豊かになるように助け合います。
社交ダンスは、お相手に対する思いが美しい表現と成り
幸せな時間を過ごせるだけでなく、見ている人達の心を
暖かくするのです。
しかしながら、多くの社交ダンスの場で踊られるダンスは
男女が自分のステップやテクニックを正確に踊る事に
心が集中して、目の前の方の思いが解りません。
その結果、コンタクト部分は、常に緊張が伴い
豊かな感情表現を伝え合うことが出来ません。
見た目美しくとも、笑顔の底には、自己満足と
コンタクトする事の苦しみしか伝わって来ません。
先生に様々なステップや運動表現を習っても
肝心なお相手を知るすべを習っていない為に、
習った通り踊る事しか出来ず、特定のお相手としか
社交ダンスが踊れず、男女が踊る喜びが得られない
自己満足だけの踊りが多く見られます。
社交ダンスは、音楽や環境、そして、目の前の方が
変われば、瞬時に一番的確な踊り方に出来なければ
意味がないのです。
自分の満足喜びしか感じられない踊りは、とても寂しく
お相手を失望させるだけなのです。
見た目の美しさだけでなく、心から男女が喜びを
表現できる社交ダンスが踊られることを心から
願いたいものです。