競技ダンスを見たり、プロのデモンストレーションを見ると
その歩幅の大きさに印象を抱き、より大きく歩幅を取れば
ダイナミックに上手に踊れると思い、常に大きくステップを
広げる事を目指しているペアが少なくありません。
その為に、床を強くプレスし、しっかりと蹴り出して大股で
演技しようとしている踊り手もいます。
確かに、歩幅が広ければ大きな演技をしている様に
思ってしまうかも知れませんが、その歩幅は、決して
左右の足を大きく広げる様にして踊っているのではなく、
目的の方向に、上半身を運ぶために、反射的に使われた結果
広くなる場合があるのであって、ただ、むやみに足を広げて
踊ろうとすると、両足がボディと繋がらず、足の引き寄せが送れ
腰が抜けたり、音楽から遅れてしまったりします。
そもそも、社交ダンスの表現は、足の広さで競うものではなく、
上体のパフォーマンスに応じて、反射的に足が広がると
言うものであって、見た目を真似すれば、かえって二人の踊りは
思いもしない苦しみを伴います。
更に、ステップの広さは、基本的に足の長さが短い方の方、
多くは女子の足の長さを基準に作られます。
つまり、両脚を広げて床をキャッチした時、立ち足に反射的に
ムービングフットが引き寄せられる事が重要です。
どんなに大きく広げても、ムービングフットを力任せに
動かさなければならない様では、本末転倒と言えます。
また、重心点を基準としたスウィング動作でステップを広げ
両足を通じてボディ表現をする為、片足バランスに成らない事が
重要と言えます。
駆けっこの様に、片足のばねによって体重を左右の足に移して
行くのならまだしも、社交ダンスは、二人のボディの運動で、
体重を移して行く為に、両足は、出来るだけ床から離さず
まるでバイオリンを演奏する時弦と弓を離さない様に
両足を床に対して使うのです。
日本の女子の多くが、男子の歩幅に合わそうとして、
許容量以上の歩幅を作り、片足が床から離れて踊っていて
ボディ表現がほとんどできない原因と成っています。
今だ、社交ダンスは、戦後の日本社会の様に、男子の運動が
常に基準に成っている事が多く、女子を踊らせる為の
男子の役割が理解できない男子がとても多いです。
正に、黙って俺について来い、とばかりの踊りが、
中高年の踊りに多く見られます。
床を両足で感じられない人は、音楽を演ずる事は不可能で
足形の上のリズムを間違わない様に演ずるしか有りません。
素晴らしいテクニックやステップを使っていても、音楽が全く
理解できていないペアが少なくないのが残念です。
両足は、リズムを奏でるだけでなく、上体の音楽表現を
指揮者の様に導く事が出来なければなりません。
ボディコンタクトをして踊る男女は、床にある接点が
常に4か所有ります。しかし、片足づつにしか接点が
感じられず、二人のペアとしての接点が2点に成っている
バランスの悪いペアの上体は、スチールパイプの様に堅く
冷たい外見だけです。
接点が4つある車と、二つの自転車は、どちらがバランスが
良いかは、誰でも解る事と思われます。