何故、床を蹴ってはいけないの? | 社交ダンスはヒップホップよりやさしい

社交ダンスはヒップホップよりやさしい

学校教育におけるダンスと言えば,ヒップホップが主流となっていますが、社交ダンスは二人で助け合って踊ることにより誰でも覚え易く、技術とマナーが自然と身に付きます。
子供からご年配まで、踊ることにより相互理解が得られる、素晴らしい芸術的スポーツです。

日本人の踊る社交ダンスの問題点は、多く有りますが、

最大の問題は、床を蹴ったり、相手を押したりして踊る方が

とても多く、更に悪い事には、その様に教える指導者が

いまだに多くいる事です。

戦後、社交ダンスが多くの日本人に踊られるようになった時

欧米のコーチャーは、口をそろえて、床を蹴って踊ている

日本人に、Don't Push  Never Push と叫びました。

 

しかし、プロを含め、多くの日本人は耳を貸さず、足形を

間違いなく踊るために、ボディを踊らせるために、相手を

リードし、フォローする為に床を足の裏で蹴って踊っていました。
確かに、、最終的には、足の裏が強く床を押して、身体を

目的の方向に推し進めるのですが、それは、男女其々が
身体を移動させるための様々な運動の結果、反射的に

行われる事であって、意思を持って床を押しながら

身体を推し進めなければならないのは、歩くのもままならぬ

高齢者の行為なのです。

 

この事は、陸上スポーツ界に於いても、同じ傾向があり、

地面をしっかりと蹴りながら走る事で推進力を生もうとして、

いわゆる、ピッチ走法と言う走り方が生み出されました。

しかしながら、伸び伸びと足を進め、スピードも落ちる事無く

走り抜ける海外のランナーに対して、いつも、足数ばかり

多くて前に進まない日本人のランナーは、惨敗でした。

 

この問題は、いまだ日本人のスポーツや社交ダンスをする人や

コーチャーたちの頭から離れず、ランニングの方法として、

足の拇指で地面を蹴る様にして走る事を、テレビなどで解説する

困ったコーテャーや学者を生んでいます。

大きな力で身体を推し進める最後の部分としては、解るのですが、

その部分に集中して地面を蹴れば、上半身が前に進んでも

次の足が前方に進めず、いわゆる失速状態と成ります。

 

高齢者だけでなく多くの人が行っているウォーキングの方法としても

足の裏で地面を蹴り出していないからと、地面を蹴りながら歩く事を

推奨している学者もいますが、いずれも、解剖学的な、部分的な

運動説明で有り、スポーツの原理が全く解っていない、木を見て

森を見ていない残念な説明です。

 

社交ダンスに於いても、床を蹴りながら踊ろうとする方は、決まって

押したり引いたりの、二人にとって不安定な上半身を作り、

蹴った足の引きつけが極端に遅れ、バランスを失っています。

人間の運動に於いて、意識をもって動かす部分は、基本的に

大きな重みが掛からない部分です。

特に上半身とムービングフットが適切な運動を行う事に依り

立ち足の推進力が反射的に得られるのです。

 

グループレッスン風景を見ると、コーチャーが、一生懸命

床を押す事を強調している場面を見る事が有ります。

残念ながら、戦後間もないころの日本人の踊りそのものであり、

社交ダンスの踊り方が、外見でしか理解できない頃の
踊れば踊る程踊り辛くなる踊りです。

 

音楽と相手を感じながら演ずるとき、左右の足で床を蹴りながら

どうやって踊るのでしょう。結果的に、相手も音楽も感じる事無く

ただ二人が社交ダンスの外見作りで四苦八苦するだけなのです。
床をどれ程の力でどの様なタイミングで押すかという事は、

上半身の意思によって、運動伝達によって、簡単に出来るのです。

 

街を歩いている時、地面を蹴りながら歩いている人は、かなりの

高齢者の方か足腰にトラブルを抱えている人です。

社交ダンスを練習に来る前は、健全に歩いて来た方々が、

社交ダンスの練習を始めた途端、不思議な運動を行い、

外見的に創り上げた不自然な格好で踊る事が多いです。

 

スポーツ万能の人が、社交ダンスと成った途端に、

その能力の半分も出せないのは、明らかに、間違ったレッスンを

受けていると言わざるを得ません。

まして、健康に成りたいとする中高年の方が、どう見ても

老化を促進して、不自由な運動を強いら得ている姿を見ると

やはり、社交ダンスは、日本に正しく伝わっていない事を
実感します。