地に足が付いていないと言うと、あまり好ましい
状態とは言えません。
精神状態であったり、日常生活であったり、
様々な状況に於いて、マイナスのイメージがあります。
私達二足歩行の動物は、如何に、大地に強く立てるか
しっかりと踏みしめて移動できるかが重要です。
増して、スポーツを行うと言う事は、普段以上に
下半身の強さと上体のバランスの良さが求められ
如何なる激しい運動を行っても、しっかり大地に立ち
スムーズな上半身のパフォーマンスが求められます。
社交ダンスに於いても、この事は重要であり、例え、
トウやボールで立っていても、踵から脊椎を通り
頭骨に至るまでのバランスが有ってこそ成り立ちます。
しかしながら、社交ダンスの様に、外見的な要素が強い
パフォーマンスは、印象的に、目で見えた映像的動作を
その部分を動かしている様に感じてしまい、多くの方が、
スポーツ選手が陥り易い、分析的麻痺となって、思った様に
演ずる事が出来なくなってしまうのです。
運動を反射的に行う為の大切なテクニックは、上半身を
出来るだけ真っ直ぐに保ち、外見的に美しい立ち身を
作る事は誰でも知っていますが、その行為の意味を
知っていないと、やたら、外見的な姿を強調するだけで、
かえって、上半身の過緊張を伴う、奇異な立ち姿と成り
見ている人には違和感を感じさせます。
真っ直ぐに立つ意味は、脊椎を通した上半身の重みを
感じながら、そのバランスを踵まで繋げる事です。
この感覚は、手の平に棒を立てて、バランスを取るような
常に固定されない、手の平の自由な運動で保つ運動と
同じであり、棒を握りしめている様なものでは有りません。
脊椎はややS字を保ち、頭や上半身の重みを、揺らぎを持って
つねに上方にバランスを取る様に感じる事で、脊椎周囲筋の
過緊張を防ぎ、下半身の様々な動きに対して、見た目、
真っ直ぐなバランスを保ちます。
大切な事は、上体の筋肉を固く保ち、脊椎周囲筋を固めると
脊椎から下半身に至る多くの神経機能を圧迫し、極めて、
反射機能が悪くなります。
初心者の様に、上体を固めて踊ると、頭で考えた事が、
反射的に下半身に伝わらず、常に、足に命令して動かすと言う
下半身が不自由な状態が起こります。
踊るだけでなく、あらゆる地上のスポーツは、イメージした事が
反射的に下半身へ伝わる事が重要です。
この時、上半身は、脊椎を通して、柔らかなバランスが保たれ
上体の重さは、下半身のカカトの真ん中まで感じられます。
つまり、頭からカカトまでの繋がったイメージが無いと、
反射的に歩いたり走ったりすることが難しくなります。
寝たきりの高齢者が歩くために、時々、踵を木づちで
叩いて刺激を与える治療法が在りますが、踵の存在が
無くなると、歩く感覚が無くなってしまうのです。
普段歩いている多くの高齢者だけでなく、若い人達であっても
歩き出すと、頭骨が足先の方に出てしまい、身体を倒しながら
歩いている方が目立ちます。
頭が前方に出ていると、足が地面に接地した瞬間、頭骨が
足の上に来てしまい、前傾と成って後足が残りがちとなります。
すると、後足がスムーズに振り子運動が出来ず、悪くなると
つまづいたり転倒したりします。
しかしながら、多くの初心者や上手く踊れ無い方々は、
足形で踊ろうとして、上体を突っ込んで踊っています。
正しい姿勢と言うのは、自然に、次の足が振り込まれる事が
重要であり、立った瞬間、脊椎のバランスを踵まで感じる事が
とても大切です。
正しいステップ、運動表現は、記憶通り、身体を動かしながら
確認作業をする様に行うのでは在りません。
人間の本来持っている反射機能を充分に活用できて初めて
思い通りの運動表現と成るのです。
思うがままに踊れると言う事は、足形や運動表現が、反射的に
音楽と相手に対して踊れたと言う事です。
踊りながら、自分の運動機能の解説をしている様では、
初心者の域を出ていないと言えるのです。
クラッシクバレーの美しいトウライズは、つま先で頑張って
踊っているのではなく、その前に、十分に重心を下げ
下半身のバネを、踵から頭骨に至る脊椎バランスを使い、
床から得た大きな力をライズや回転に変えているのです。
この事は、社交ダンスに於いても同じ事が言えるのです。
社交ダンスは、様々なステップの種類があり、男女其々の
やり取り、そして音楽表現と、沢山の事を一度に行う事が
要求されます。それらの事をすべて考えながらしていては、
とても二人の音楽表現とはなりません。
反射機能を活用する事で、私達は、音楽とパートナーに
集中して楽しく踊れるのです。
如何なる方法で、反射的に踊れるかを知る事で、
身体の負担は大幅に軽減され、音楽もパートナーも
より深く理解できるのです。