私達は、普段、自分の頭の重さについて、あまり
意識が在りません。
しかし、頭の重さは、人の体重の10パーセント前後
も有って、ボーリングの球が一個、乗っかているのと
同じなのです。
その為、スマホなどをしながら下を向いていると、
首周りから上半身にかけての負担は、小学生が
一人ぶら下がっている程と言われます。
しかしながら、頚椎周りには沢山の筋肉が有り、
それと共に身体の筋肉が支える事に依り、殆ど
負担を感じることなく生活できるのです。
しかしながら、脊椎からのバランスでこの重さを
支えていないと、頚椎の周囲の筋肉や肩回りの
筋肉が過緊張と成り、いわゆる、コリや痛みと成って
日常生活に負担をきたすのです。
所で、社交ダンスを踊る時、私達踊り手は、より美しく
のびやかに見せる為、頭骨を出来るだけ上方に伸ばし
美しい姿勢を保つ事に努力します。
多くの方が、普段猫背気味の生活を送っている事も有り
社交ダンスの様に、バランスと回転系の運動を求められると
如何に、床に対して垂直で、美しいボディラインが必要か
と言う事が解ります。
その為に、多くの方が、肩を抑えて、首を一生懸命上方に
伸ばす練習をします。
体形的な修正や外見的な美しさの練習には、初級の段階
に於いては、この様な方法も良いのですが、より豊かで
自然な運動を行うには、この部分的な運動練習では
かえって、不自然な運動をしてしまい、良く目にする
競技ダンサーの、異常な上半身と首の引き延ばしと成って
見ている人には、違和感しか感じられません。
日本のダンサーに多い、外見的に作られた上体の形は
同じような集団の中に在れば、差ほど違和感はないのですが
一般の人や、社交ダンスを知らない人からすると、
特殊な人たちの様に思えて、特に、感性の強い若者からすると
いわゆる、キモイ!と言う言葉で嫌われてしまうのです。
当然、美しいと思って踊っている選手からすると、心外と
思えるのでしょうが、身体の機能や原理を知っている方々が
見ても、やたら誇張して見えて、余り受け入れられないのです。
トップ、つまり頭の安定した美しい存在感は、頭の周囲や
上体の筋肉を意思を持って釣り上げているのではなく、
脊椎を通して、踵から頭骨までのバランスで生み出して
いるのです。
しかも、脊椎は、緩やかなS字を持って、重い頭を支え
下半身から骨盤を通り、脊椎というバランス経路を通って、
常に、反射的に動いていて、決して、頭が動かない様に
固定しているのでは在りません。
頭を支えている時は、上腕や首周りは常に柔軟性をもって
様々な運動表現を行っているのです。
特に、スタンダードダンスの様に、お互いが遠心力を使い
上体を広げるような運動を行う時は、なおさら、この縦の
柔軟性をもった繋がりが重要であり、重心点が相手と
やり取りをする事に依って、一番上にある頭骨は、
重心のやり取りと反射的に反応して、後方への運動を
示すのです。
その為、柔軟性のあるボディ筋肉の持ち主は、重心点を
相手の方向に動かす事で、頭が、必要に応じて、後方に
バックポーズと成って表現をするのです。
この事が、外見的に頭を後方に反っている様に見えてしまい
多くの、余り上手に踊れ無い方々が、身体を反らせて踊る
と言う大きな間違いを犯してしまうのです。
特に、身体の原理を知らない女子にこの傾向が多く見られ、
男子も、女子の上体を反らせて踊らせようとして、自らの
バランスと運動能力を失っています。
ゴルフのショットを横から見ると、後方に頭がある様に
見えますが、誰も、ゴルフは頭を反らせて行うと言う人は
いない様に、社交ダンスに於いても、社交ダンスは、
上体を反らせて踊ると考えている人は、旧態依然であり
男女共に、どんなに沢山のステップを知っていても、
例え、競技に出ていても、初心者の域を出ていないと
言えるのです。
エキスパートになると、自分の体重だけでなく、腕の重さ
脚の重さ、頭の重さ、腕の重さを感じて踊ることが出来ます。
もちろん、相手の各パーツんの重さを感じる事は当然です。
しかし、この重さが、固定されたものと成ると、途端に
荷物と成り、大きな負担が生じるのです。
中でも、頭の位置は、外見的に美しく見える様に作るのではなく
二人のやり取りで一番相応しい位置が、運動をするたびに作られ
最初から固定して踊るのでは在りません。
上半身が静かに安定して見えるのは、常に、全身が動き続け
バランスを作りながら、その都度、新たなる形を作っているのです。
見ている人の目には、他の部分との比較として、動いていない様に
更には、固定している様に見えてしまうのです。
運動をする人の身体は、全身の筋肉が片時も止まっている事無く
更には、心も記憶を辿る事だけでなく、状況に応じて、その都度、
躍動的に感動し続けているのです。
外見的な姿と言うのは、あくまで、印象であり、実際の運動とは
かけ離れている事が多いのです。
正しい理解をして、身体全体を繋げ、反射的に動く機能を作れば
社交ダンスは、それこそ、思うがままに楽しく踊れるのです。