多くの人達が、社交ダンスが踊れると言う事は
沢山のステップを知っていて、踊り方のテクニックを
知っている事と思っています。
その為、自分も、少しでも多くのステップを覚えて
相手と踊る技術を身に付ければ、思うがままに
楽しく踊れるものと信じています。
その為、出来るだけ多くの足形を覚え、テクニックや
運動表現を覚えようと努力します。
つまり、明治の書生さんが、辞書の単語と構文を
すべて覚えれば、自由に喋れて、海外の方と
苦も無くやり取りが出来ると考えてのと同じです。
しかし、結果はどうでしょう。
辞書の丸暗記をしようとしても、実際のやり取りは
日常会話すら苦労するのが現実です。
同じように、沢山のステップと技術を覚えた方が
決して上手に踊れるとは言えず、かえって、
相手にとっては苦痛である事も多いのです。
社交ダンスは、日常会話をする事とよく似ていて
沢山のステップと技術を覚える事は良いのですが、
そのステップとテクニックを相手に応じて使い分け
お互いに、言葉のキャッチボールができないと
一方的な主張に終わり、会話として成り立たず
自分の思いも相手の思いも解らないのです。
しかしながら、社交ダンスの多くのレッスンは
男女其々の、個人的なレッスンに留まっていて
沢山のステップを覚えても、踊り方を習っても
その時、目の前のお相手は、一体何を考え
何をしようとしているのかが解っていないと、
二人の踊りは、コンタクト面で固定しながら
お互いの主張を繰り返す、いわば、格闘技と
内容は変わらないのです、
社交ダンスのテクニックを使って、踊る姿も
美しく着飾っているから踊りだと言われても
残念ながら、男女の中身は、戦いの筋肉で
争っている事が少なくないのです。
所が、表現の記憶として、笑顔を作り、
柔らかい運動表現を見せているのですから、
身体の中は矛盾だらけであり、二人が創る
踊りは、社交ダンスとは程遠い事が多いのです。
しかも、競技選手の様に、外見的な見栄えを
表現しなければならないとなるとなると、
この、心と身体のアンバランスは、相当な物で
外見しか感じられない方からすると、
素晴らしい踊りと見えるかもしれませんが、
男女の関わり合いと、そこから生まれる
喜びを求める人達からすると、思いと裏腹に
違和感と押しつけがましさが感じられ、
特に、社交ダンスをあまり知らない方々からは
異様な集団にしか見え無いのです。
その様な踊りを目的として踊っている方達は
お互いに何の違和感も感じないのですが、
社交ダンスの意味を知っている方々からも
余り受け入れがたい踊りと言えるのです。
普段の生活においても、自分の事ばかり
喋っている方は周りから煙たがれますが、
男女共に、自分だけの主張をするペアは、
見ている人からすれば、ウザいの一言です。
社交ダンスは、一般の方の踊りであっても
競技会やデモンストレーションの踊りであっても
考え方を少し変えるだけで、二人の関係が
非常にしっくりして、見ている人からは、
愛情と心の豊かさを感じるものです。
ポイントは、社交ダンスを知っている方より
全く知らない方や子供達が見た時に、
驚きの表情より、親しみの笑顔を感じられ
暖かい賛辞が感じられた時です。
つまり、そんな踊りが誰とでも出来るのが
社交ダンスの素晴らしさと言えます。
相手と関わる為の沢山のステップや
テクニックを覚える事は、心のやり取りを
する為の道具として必要です。
しかし、相手によって、その道具を
どの様に使い分けることが出来るかが
社交ダンスを踊る人の大切な能力です。
習った通りの記憶の踊りであったり、
自分の一方的な考えで踊っていては、
どんなに素晴らしいステップを使っても
豊かな運動表現をしようとしても、それは
相手にとって苦痛でしかないのです。
人生における対人関係と同じく、
相手に応じて、その時の状況に応じて
お互いが楽しく気持ち良く踊れる様に
ステップを選び、運動を変化させられる
柔軟性のあるセンスを育てる事が重要です。
誰もが心の中は弱く繊細です。
何をするにしても、外から受けた様々な刺激で
委縮したり伸び伸びしたりするものです。
目の前の方が気持ち良く踊っていれば、
自分の心も反射的にリラックスするものです。
ならば、五感の全てを使って、相手の心を
癒す踊りを心がけましょう。
それには、相手の気持ちに心を傾けましょう。
すると、どの様に踊ったら一番楽しくなるか、
自然とお互いに解って来るものです。
その時、外見的には、そのペアにしかない
とても美しい物語を見る様で、見ている人の
心も癒されるのです。