スタンダードダンスであろうが、ラテンアメリカンダンスであろうが
二人のパフォーマンスは、コンタクトした後、踊り始めの数秒間で
決まると言っても過言では有りません。
私達は、基本的に、いつも、一人のバランスで地上に立ち、
様々な物とコンタクトする時、その対象物に対して、反射的に
最も相応しい運動を行います。
いつも慣れている対象に対しては、ほとんど、無意識の内に
流れる様な運動を行えるのですが、コンタクトしたものが、
あまり触れたり見たりする事の無いものであると、瞬時には
対応できず、五感を屈指して、コンタクトを試みます。
しかし、対象物が、形を変えず、更には、静止しているならば
殆ど問題は無いのですが、動物であったり人間であると、
その運動は、常に変化していくのが当たり前であり、その都度
対象物の変化を感じて対応しなければなりません。
社交ダンスを踊ると言う事は、一人のバランスを、二人のバランスに
変化させなければならず、更には、パートナーは、生き物ですから
常に、その変化を感じる必要があります。
この対応が非常に難しいのが、敵味方に分かれて戦うスポーツ
であり、どれだけ相手の変化に反応できるかが、勝つための
条件と言えます。
しかし、社交ダンスに於いては、余りにも変化が激しいと、常に
相手の行動を把握する事は難しく、長年の研究によって、お互い
踊る為のルールや共通のステップが作られて来たのです。
その為、相手が動くと言っても、その運動の方法は、予想が付き
的確に対応できるのです。
所が、的確に対応できるはずが、多くの方が、踊りだした途端、
二人の踊りは、まるで呪縛にあっているように、身動きが取れなくて、
ただ、外見的な美しさを維持する事と、自分のステップを間違いなく
踊る事にすべての神経が注がれてしまいます。
コンタクトして動き出すまでの、二人のボディコンタクトの
簡単な説明は、前回行いましたが、次に動く時に
二人が行う大切な運動が有ります。
まず、男子が行う大切な運動は、殆どの場合男子が前進で
始まる事から、男子は、女子に後退の運動を促さなければ
なりません。
この時、上手く踊れ無いペアの男子の多くは、男子が第一ステップを
決めようと、レッグを振り込み始めます。
すると、女子は、慌てて男子の足形を追いかけ始め、必要以上の
歩幅で第一歩を踏み下がろうとします。
この時点で、男子は、上体で女子を押し続け、女子は、ステップを
逃がし続ける、初心者に多い踊りが出来上がります。
大切な事は、男子は、ステップを踏み始める前に、コンタクトしている
上体を、目的の方向に重心移動し始める事です。
すると、その動きに反応して、女子は、ステップの準備を始め、
次に、相手の上半身の動きから、自分の上半身を準備し始めた
自らの足に乗せて行く様に立ち足で床をプレスして、男子に対し
自分がこれから踊るストロークと上体の動きを伝えます。
文章にすると、説明はとても難しいのですが、要するに、
男子は、一歩踏み込む前に、ボディのコンタクト部分で、
相手に後退のタイミングを教える事と、
女子が重心を、自分の後退した足の上に自分の歩幅で
下げる様に促す事が大切です。
女子の左右のレッグストロークが解ると、ペアとしての歩幅が決まり
女子がバランスよく上体を楽しく踊らせられる一つの条件が
出来ます。
当然、後退する時も、男子の上体の運動が女子の前進を誘発し、
女子の前進ストロークを計ります。
男子は、女子を上手く踊らせる為、出来るだけ力で拘束せず、
女子が自ら自然に動きたくなる条件を作る事が大切です。
女子の左右の足のストロークが前進後退と分かった所で
女子の下半身のステップの基準が解ります。
運動能力や下半身の柔軟性にも依りますが、男子は、女子の足の
ストロークが解ると、どの位置に自分の立ち足を置いて、女子の
運動を助ければ一番適切かが解り、ステップに関しての心配が
ほとんど無くなります。
多くの方の間違いは、男子が足幅を決めて、足の位置を決めている
と思っている事です。この事は、特に、欧米の踊り手の方々が感じる
日本人の踊りの七不思議の1つであり、男子が、自分で歩幅と
ステップを決めて女子に従わせると、殆どの場合、女子に嫌がられ
あからさまに踊る事を拒否されます。
つまり、スタートの時点で、男子が女子を押しのけ、自分の足型を
決めて、それに女子が必至で付いて行く踊りは、社交ダンスと言えず
社交ダンスの様々なテクニックや運動表現が使えない、息苦しい
形だけのダンスとなってしまうのです。
社交ダンスの技量は、踊り始めて、ほんの2、3小節を踊れば解ると
言われる理由がここに有ります。
多くの方々が、踊りだした途端、踊り終わるまで、苦行が続いて
行くのです。
しかし、社交ダンスの魅力は凄いものであり、お互いに、踊れ無い
苦しい条件で踊っていても、ほんの数分であるならば、我慢が出来、
異性と音楽の中で踊る楽しさが有るのです。
とは言え、社交ダンスの楽しさの裏に苦痛が有ってはなりません。
例え、自分の踊りに自信が無くても、組んだ途端、
相手が助けてくれて、お互いに自分の能力以上のパフォーマンスが
出来る様に、長い歴史の中で作られて来たのです。
ただ、楽しそうな外見を見て、その印象で踊ってしまうと、
途端に天国から地獄へと落とされるのも社交ダンスです。
本当に心から笑顔になり、自分の身体が、思うがままに踊る楽しさを
誰でも味わえると言う事を知って下さい。
始まる事から、