ドントプッシュ、ネバープッシュ | 社交ダンスはヒップホップよりやさしい

社交ダンスはヒップホップよりやさしい

学校教育におけるダンスと言えば,ヒップホップが主流となっていますが、社交ダンスは二人で助け合って踊ることにより誰でも覚え易く、技術とマナーが自然と身に付きます。
子供からご年配まで、踊ることにより相互理解が得られる、素晴らしい芸術的スポーツです。

格闘技において、ボディコンタクトを行なう相撲や柔道は
相手に対して、常に技を仕掛けられる様、上半身で
強いプレッシャーをかけています。

つまり、自分の思うパターンに持ち込む前提条件として
相手に対し圧力をかけ続ける事が必要です。
技を掛けるにあたって、前進する力を利用して、
相手の動きを封じ、バランスを崩す事に因って、
自分の技を生み出していくのです。

この事は、格闘技で勝利する大切な条件なのですが、
社交ダンスに於いて、同じパターンの踊りをしている
多くのペアを観受けます。
衣装を着ているから社交ダンスを踊っていると言っても
実際の運動は、極めて格闘技の運動に近いペアが
珍しくありません。

御互いに自分の習ったテクニックや足型、自分の動きを
頭の中で反復している様に見えます。
特にスタンダードダンスに於いては、二人でコンタクトし、
ホールドを取っている事から、自分の感覚だけで運動すると、
コンタクト面には、相手の身体とは繋がらない力が加わり
上体が変形したり、異常に硬直したりします。

格闘技を観れば良く解かる様に、二人が、御互いの動きを
封じて、自分の動きに巻き込もうとすると、接触面に強い
力が加わると共に、必要以上の緊張が上半身に現れます。
更に、下半身はおのずと遠ざかる為、胸を突き合わせたような
体勢と成ってしまうのです。

しかし、これでは、社交ダンスとして美しくありません。
かくなる上は、二人共しっかりと上半身を反り返り、
見たようなダンスの姿を作るのです。
当然、胸で押し合う形では両足は前進しづらく、進む為に
更に相手をプッシュしなければなりません。

初心者や余り社交ダンスがスムーズに踊れない方の多くが
実は格闘技と同じ運動で踊っているのです。
では、相手に何も運動を仕掛けないで踊らなければならないかと
言えば、全く逆であり、常に、御互いが自分の運動を相手に知らせ
何をしたいのかを伝え続けなければなりません。

大きな力を相手に与えるも、相手のバランスを崩したり、御互いの
上半身の形を変形させないためには、至近距離で、御互いに
助け合い、御互いを生かす踊りを知らなければなりません。

どんなにステップの種類を覚えても、外見的な運動を行なっても
この技術は、知らなければ、何年経っても楽しい踊りとは
なりません。
相手を押したりしないでも大きな力を与える事が出来、
激しく動いてもバランスを失わない方法を知っていなければ、
二人のダンスは、格闘技から卒業は出来ません。

多くの競技選手の踊りを見ても、運動が解っていて踊っている人は
非常に少なく、外見的な姿を保ちながら、ルーティンを踊っている、
笑顔で楽しそうですが、身体が悲鳴を上げているペアが多いです。
外見的に思える運動は、想像とは殆ど違っていて、どんなに
素晴らしい世界のコーチを受けても、DVDを見ても
その原理を知らなければ、それ以上の進歩は望めないのです。

例え世界チャンピオンであっても、私達と同じ身体をしています。
人として共通の運動を知らない限り、いくら似せようとしても
その素晴らしさに近づく事は不可能であり、対人的な運動の
基本を知ることが大切です。

しかし、高齢で有っても、体力が無くとも、人の身体に備わった
この運動は共通であり、知っていると、一生音楽を楽しみ
二人の世界を育てる事が出来るのです。