自分が感動した美しい表現をするには、柔軟性のある
強靭な体力と、音楽的センスが必要です。
エキスパートとしての踊りは、美しく感動的である為に
アスリートの様な力強い運動能力が必要です。
しかしながら、そんな条件を満たす人は、踊る人たちの
ほんの一握りにすぎません。
殆どの方が、その数分の一、数十分の一しかできません。
でも、その心の中と言えば、少しでもその感動を味わいたく、
毎日努力を重ねているのです。
特に、中高年の方々の努力は、若者たちにを凌ぐほどの
涙ぐましいものが有ります。
身体の至る所が衰えてきていて、更には、運動機能が
衰えてきている現実を感じつつも、少しでも満足出来る様
頑張っているのです。
ところが、実際は、中々大きな成果は得られず、時に
己の不甲斐なさに諦めてしまったり、社交ダンスから
遠ざかってしまいます。
では、中高年は、いくら頑張っても上手にならないのでしょうか。
いえ、そんな事は絶対ありません。
簡単に言えば、練習の仕方、踊り方が間違っている方が多く
我流になってしまったり、無駄な労力を使っているのです。
しっかりと理解できれば、一生、例え100歳になっても、
フロアーに立てれば少しづつでも進歩するものなのです。
中高年の方に限りませんが、一般に、踊れない方々の
共通の運動は、自分の体重とパートナーの体重を使わず
上腕の力で踊っている事です。
また、下半身をいくら鍛えても、その力を上体に伝える術を
知らないからです。
スポーツ全般に言えることは、体重の使い方を知っている人が
アスリートとして上達して行きます。
バットやラケットと言った手具を持ったアスリートは、いかに
下半身からの力をボールに伝えるかを考えます。
その為には、強靭な下半身を作り、その力を、柔軟に
上半身に伝える事に因って目的の運動を行ないます。
社交ダンスであっても同じ事が言え、床から得られた強い力を
上体に伝え、相手をリードしたりフォローしたりします。
しかし、この時違っているのが、伝える相手は、自分で動く
人間であり、ラケットやバットではないという事です。
社交ダンスに於いて重要な事は、上体の運動で、自分の身体、
つまり体重がどちらに動いて行くかを相手知らせる事です。
御互いに自分の体重を動かす事に因り、自分の意思表示を
するのです。
直接相手に向かって、力を与えると、相撲と同じく、上半身が
相手にもたれかかり、下半身が逃げてしまいます。
その為、多くの方々が、短絡的に、上半身を反り、下半身の
腰を入れる事によって近づけようとして踊れなくなるのです。
コンタクトの役目は、相手を捕まえたり引ったりするものでは
ありません。自分の身体の動きを相手に伝え、何をして欲しいか
伝える事に意味が有るのです。
その時、一番大切な事は、自分の体重が、次のステップに
的確に移って行く事であり、その時の形がホールドであり
二人のムーブメントと成ります。
自分の体重とその時バランスを取った上体の形が、滑らかに
次の支え足の上に移って行くのです。
この事を相手に知らせる為に、ボディのコンタクトやホールドの
接点が必要なのです。
御互いの体重が滑らかに移動する時、2人の身体は、二つの
駒が回っている様に、軸が全くぶれず、あらゆる方向に
回転しながら移動できるのです。
上半身を固めると、この駒の回転面を止める事になり、
御互いが上腕を固める事と成るのです。
中高年の方は、下半身のみならず、上半身も衰えがちです。
なのに、しっかりとホールドを固め、すでに体重が乗っている
下半身を固めて踊っているのは、非常に無駄な行為と言えます。
下半身は、力を入れても力を抜いても、体重は変わりません。
脚に力を入れると言うのは、自分が何かの目標や方向に
必要なスピードで体重を繋げようとする時初めて使われ、
その強さは、二人のやり取りで決まります。
脚に力を入れ、体重を重くして踊る様な感覚では、
スポーツの基本から外れた、違和感のある運動と成ります。
幾つになっても、自分の体重の使い方が解っている方が
技術を上達させることが出来、その重さは、正しく脊椎の
バランスを感じられないと理解できないのです。