スポーツをすると、その種目の基本の運動や
テクニックが有ります。
上手になるには、しっかりと、基本を身に付け
正しい運動を行なう事が大切です。
社交ダンスに於いても、基本はとても大切で
基本をしっかりと身に付けているかどうかで
将来の踊りが決まると言っても過言では有りません。
しかし、基本と言うと、基本のステップ、基本の運動
基本の形と言ったものが有ると思っている方が多いです。
ならば、これらのものを全てしっかりと覚えれば
上手く行くかと言えば、残念ながらほとんどの方が
自己満足の踊りとなるに過ぎません。
特に、基本の足型、上級の足型と言った物は有りません。
これは、レッスンをするにあたって、覚えるのに容易と
思われるステップであり、難しいステップの元となって
初心者から上級者に教えやすくしているだけです。
では、基本とは何でしょう。
基本とは、社交ダンスに於いて、全ての運動表現に
必要な身体の使い方と、それに伴う、表現です。
それが簡単なステップであろうと、複雑なステップであろうと
共通の運動であり表現なのです。
スポーツ選手も、プロの社交ダンサーにしても、
例え、観客が目を見張る様な演技が出来たとしても
日頃の練習は、基本的な極めて単純な運動を繰り返します。
かつて、日本に来日していたラテンの世界チャンピオンの
デモの前の練習風景を特別に見させていただいた時、
一時間ほどの練習時間の間、広い会場の真ん中で、
何度も、アマチュアのテスト生が行なう様なベーシックを
繰り返していました。
残り10分程になった時、2人は、フロアーの中を歩きながら
御互いにポジションを確認し、殆ど時間が無くなった時、
4種目の踊りを、各20秒程物凄いスピードで踊り、終わりました。
数日後、プライベートレッスンを受けた時、この事を聞くと、
何年も世界チャンピオンを続けていても、練習の9割以上は、
ベーシックのお互いの運動のコニュニケーションを練習すると
言っていました。
私が彼らの練習風景を見た時も、御互いに手を取ったり、
身体を接触したりして、ほとんど動かず、ただ二人の身体が
スローモーションを見る様にゆっくりと動いているだけでした。
もちろん、全種目を通して、音楽の表現を練習する時も
有るでしょうが、彼らの練習は、初めから終わりまで、
御互いのコミュニケーションに充てている様に
思われました。
この事は、いかに、世界チャンピオンで有っても、
基本のやり取りを大切にしているかという事です。
アマチュアのレッスンであっても、プロのレッスンであっても、
コーチャーから習うテクニックが、外見だけでなく、いかに
身体の中の運動に反映されて身に付いているかが大切であり、
外見を真似ても、決して自分の踊りとして身に付かないのです。
社交ダンスは、舞踊と違って、スポーツ的芸術です。
足型や運動は決まっていても、その表現の大きさ使い方
ステップの大きさ速さ等は、周囲の環境でも、音楽でも常に変わり
状況に応じて柔軟性を持って変化するものです。
この、あらゆる状況に瞬時に対応できると言うのが基本の運動
表現の一番大切な事です。
一番の対応が、目の前のパートナーで有る事は明らかであり、
いかに対人センスと音楽センスが優れているかが重要です。
社交ダンスは、自分の記憶だけと踊っているのではない事を
いつも心に留めて置く事が大切です。