(前回の続き)

分析・結果
 今回は、北海道のホッキガイ貝桁網漁業者を対象に経済実験、アンケートをおこない、その結果をもとに分析をおこないました。サンプル数は73です。資源管理意識を被説明変数、経済実験やアンケートで得たその他の変数を説明変数とし、回帰分析をおこなった結果を、表に示します。計測には順序ロジットモデルを用いました。(詳細は、ここでは省略します。)
 

 表内の計測結果の値に*印の付いている項目が「有意」、つまり、統計学的にみて意味がある(変数の間に関係性があると考えられる)項目です。資源状態が良いと思っている人ほど、また、リスク選好的な人ほど、資源管理意識が低い(水揚げをもっと増やすべきと考えている)ことがわかります。また、時間割引率は有意ではありませんでしたがプレゼントバイアスは有意でしたので、1つの意味においては、近視眼性が強い(近視眼的である)ほど、資源管理意識が低い(水揚げをもっと増やすべきと考えている)ことがわかります。なお、借入金については有意ではありませんでしたが、傾向的には、借入金が多い人ほど資源管理意識が低い(水揚げをもっと増やすべきと考えている)ことがわかり、p値が0.123であったことから、もう少しサンプル数を増やせば、有意な結果が得られる可能性があると考えられます。

まとめ・今後の課題
 今回の分析の結果から、(借入金が多く、)資源状態が良いと思い、また、プレゼントバイアスが強く(近視眼的であり)、リスク選好的な人ほど、資源管理意識が低い(水揚げをもっと増やすべきと考えている)ことが明らかとなりました。言い換えると、「不合理漁獲」は、当事者にとっては、(非効率ではあっても)決して不合理ではない可能性があるということです。今後は、こうした結果をもとに、どのように制度を設計することで、こうした非効率な漁獲を防ぐことができるのかを検討していく必要があります。
 また、今回は「資源管理意識」に関する分析結果のみを紹介しましたが、アンケートでは、「プール制」や「共同管理」についての質問もおこなっており、これら同士の関係や、これらと様々な特性・属性との関係についても、これから分析をおこなっていく予定です。これらについては、次の機会に紹介したいと思います。

本ブログで“経済実験”の様子について何度か紹介してきましたが、結果の説明をおこなったことはなかったのではないかと思います。

先日、それに関連する一般向けの記事を書きましたので、その内容を紹介したいと思います。

 

魚の乱獲はなぜ防げないのか?

 

背景・目的

 近年、水産資源の減少や漁業の衰退が、社会的に大きな関心を集めています。そして、こうした事態を引き起こしたわが国の漁業の問題は、しばしば「不合理漁獲」ということばであらわされ、一般に、(1)特定漁場への漁船の集中、(2)過剰投資、(3)小型魚の漁獲や過剰漁獲(乱獲)、(4)水揚げの集中(もしくは過剰漁獲)による値崩れ、などの問題を指します。こうした不合理漁獲はなぜ防げないのでしょうか?それを明らかにするには、まず、不合理漁獲がなぜ引き起こされるのか、言い換えると、不合理漁獲が、それをおこなう漁業者にとってどのような合理性を持つのかを明らかにする必要があります。

 本研究では、こうした視点に立ち、資源管理意識の高い漁業者とそうでない漁業者の間にはどのような違いがあるのか(→不合理漁獲は漁業者のどのような特性から生みだされるのか)を明らかにすることを目的とします。
 

課題・方法

 本研究では、漁業者の特性のなかでも、「近視眼性」(時間割引率・プレゼントバイアス)に注目します。「時間割引率」とは、将来得られるであろう価値を現在の価値に換算するときに使う割合のことです。「プレゼントバイアス」とは、時間割引率が時間とともに変化する度合いのことです。ここでは、先行研究で指摘されるアンケートによるバイアスの問題に鑑み、漁業者を対象に「経済実験」をおこない、これらを直接的に(経済学的にきちんと定義された形で)計測することにします。そして、こうして計測された時間割引率、プレゼントバイアスと、アンケートによって抽出した資源管理意識との関係をみることで、近視眼性の高さが、こうした問題の原因となっているかどうかを検証します。

 くわえて、こうした近視眼性を生みだす要因となりうるような、漁業者の属性にも注目します。たとえば、年齢が高いほど時間割引率が高くなる可能性があります。また、借り入れをおこなっている場合には、それに応じた利子率が上乗せされ、時間割引率が高くなる可能性があります。

 これら(時間割引率・プレゼントバイアス)の計測には、図に示す「時間選好ゲーム」と呼ばれる経済実験を用います。金額と受け取ることのできる期日が異なる2つの選択肢ABから、どちらが好ましいかを選んでもらう作業を、金額、期日を変えながら繰り返し、どこで選択がスイッチするか、また、期日の変化によりそれがどのように変わるかをみることで、これらの値を算出することができます。(具体的な算出方法は、ここでは省略します。)
 


 その他にも、資源管理意識との関係が想定されるため、「リスク選好ゲーム」と呼ばれる経済実験により、「リスク選好度」(リスクを好む度合)を計測し、これも分析に用います。これは、金額と確率が異なる2つの選択肢(くじ)ABから、どちらが好ましいかを選んでもらう作業を、金額、確率を変えながら繰り返し、どこで選択がスイッチするかをみることで、この値を算出するものです。

 なお、資源管理意識については、ここでは、「今後水揚げを増やすべきか減らすべきか」についてのアンケート(5件法)への回答を用い、また、上記の年齢、借入金、および資源状態についての現状認識など、資源管理意識に関係する可能性のある属性をアンケート項目にくわえ、これらも分析に用います。

 

(続く)

当講座の「社会調査演習」では、毎年、県内の市町村に泊りがけで出かけ、現地でフィールドワークをおこない、それを報告書にまとめています。
前期に調査内容を設計し、夏休みに調査をおこない、後期に報告書をまとめるという、1年がかりでおこなう、3コマ分のボリュームのある授業です。
 
今年度は、南伊勢町にお邪魔することになりました。
そこで、先日、南伊勢町の矢野 副町長にお越しいただき、町の概要や地域の課題に関する特別講義をおこなってもらいました。
ちょうどタイミングよく、4月に「あばばいっ 南伊勢(南伊勢学検定テキストブック)」が発売されたこともあり、1回の授業(+数週間の事前学習)で、短期間にしては、それなりに町の事が理解できたのではないかと思います。
何より、“(自称)口下手”な副町長のお話の上手さのおかげかもしれませんが。
 
 

単なる学生の実習ではありますが、「みえ地方創生コンソーシアム」構想とも関連し、たとえ僅かでも、地域の人が読んで「なるほど~」と思えるような報告書を作っていきたいと思います。
南伊勢町の皆さん、夏に向けて、どうぞよろしくお願いいたします。
少し前ですが、農業ICTの調査で、オランダのWageningen大学に行ってきました。
(私は、水産だけでなく、農業の研究もやっています。)
研究者からのヒアリングが主だったので農業の現場にはあまり行かなかったのですが、日本との違いに、色々と驚きがありました。
「国土の狭いオランダを参考に」というものの、残念ながら農業の条件は相当異なるようです…
 
2枚目の写真(の右側)は、数少ないオランダ名物「ハーリング」です。
半生のニシンをパンに挟んで(もしくはそのまま)食べるのですが、なかなかのミスマッチですね。
レモンを相当かければ、辛うじて(!?)美味しく食べられました。
 

すっかり忘れていましたが、だいぶ前に、「豊かな海」にヨシエビの記事が載りました。
 
http://www.yutakanaumi.jp/pdf/yutakanaumi/No034.pdf
 
49ページからです。
お時間のある時にでも、ご覧ください。