イタリア編は9日目から。
マルセイユから列車はニースを通り、モナコを通り、コルビュジエの休暇小屋のあるカップ・マルタンを通ってヴェンティミリアに着いた。
マルセイユを昼ごろ出て、ヴェンティミリアに着いたのが16:30過ぎ。ここで16:50発のミラノ行きに乗り換えて21:00少し前にミラノに着く予定だった。
しかしここで問題が発生する。そのタイムスケジュールに同意してチケットを買ったはずなのにヴェンティミリア→ミラノのチケットが18:50発の一本遅い便になっていたのだ。まあ、でも何とかなるだろうと思って駅で交渉してみると、前の便に変えるには席を確保するために+7ユーロ必要だという。
「でも、俺はこれに同意してチケットを買ったんだ」ってマルセイユの券売所のおばさんが事前に印刷してくれていたタイムスケジュール表を見せる。
するとイタリアの鉄道職員のおやじは「まあ、でもそれは俺の責任じゃないし」というからこちらも頭に来て「でも俺の責任でもない」って言ったら、「じゃあマルセイユまで行ってそのおばさんに文句言ってこいよ」と言いやがる。
あまりにも人を馬鹿にした態度をとるから本当に頭に来て日本語できたない言葉を投げつけて(こういうのはよくないってわかっているけれど、あまりにも頭に来たからね)、2時間ヴェンティミリアで時間をつぶすことに決める。
駅を降りてみると500mも行かずに大海原と出会う。ヴェンティミリアの情報が何もないから某ガイドブックを開いてみると、全然情報ないじゃないか。でも、今自分が地球上のどこにいるのかとわずかな情報を得ることができた。
とりあえずよくわからないから海岸沿いにふらふらと歩いてみる。ちょうど太陽が海の向こうに落ちていこうとしているところ、そして海はどこまでもどこまでも広がっている。素晴らしい景色を見ながらぼけーっとしていると空も暗くなり、だんだんと寒くもなってきそうだったので動いてみることに。
何やら海岸線から急激に上る丘の上に教会があるようなので細い路地を上って行ってみる。すると、そこは旧市街だったようでリスボンのアルファマよりも密集した町が広がり、細い路地が迷路のように入り組んでいた。
ヴェンティミリアは想像以上に綺麗で、ちょっと汚くて魅力的な都市。ここに立ち寄らせたのはマルセイユのおばさんのプレゼントかなと思った。だって前向きに考えなくちゃ勿体ないしね。
で、深夜11時近いミラノに降り立つ。ホテルまでは簡単にメトロで行けると思っていたら何やら鉄道のような感じの電車に乗り換えなければならずよくわからない。
とりあえず近くにいた若いサラリーマンのような人に聞いてみると、まあなんと親切なことか。英語もちゃんと喋れているのに英語が下手でごめんという。イタリアは悪い人だけじゃないんだってわかって一安心。
無事ホテルに着くと部屋は真っ暗でもうみんな眠っていた。
10日目、この日はミラノの中心部を見て回った。部屋は4人部屋だったのだけれど、2人は朝早く出ていってしまった。僕と残されたもう一人はどうやら日本人のような容姿。話しかけてみると日本人だという。
卒業旅行で途中友達と合流するけれどとりあえずは一人とのこと。日本人があまり使わないようなホテルの紹介サイトから予約したホテルだったのでまさか日本人に合うとは思っておらずびっくり。どうやってこのホテルをとったのか聞いてみると、別のホテルをとっていたのにオーヴァーブッキングでこちらに回されたとのこと。あらまあ、そういうこともあるんだね。こわやこわや。
彼女は無事バルセロナに着け、楽しい経験をして日本に戻れたかなぁ。いい経験ができているとよいけれど。
で、街に出るとあいにくの大雨。仕方なく露店の兄ちゃんから値切って傘を買う。そして教会があるごとに中に入って建築見学をし一呼吸整えてまた雨の中に出ていくということを繰り返した。
ミラノの中心はやはりドゥオモ。そしてガレリア。どちらも日本人のツアー客が多い。
まさにゴシックとしか言いようのないミラノ大聖堂。圧倒的。
ガレリアは美しい。内部空間になったことで風雨から守られることとなった外壁のフレスコ画も、建物の中に入る高級ブティックのショーウィンドウも床に敷かれた石もそして鉄とガラスのアーチもすべてがミラノにふさわしい雰囲気をまとっている。ファッショナブルという言葉が似合うと感じた。こういう空間がおしゃれな街ミラノを作り、そこに住む人々がこういう空間、空気感を作り上げている。
この日はたくさんの建築を見たけれど、面白かったのはサン・サティーロ聖堂。ブラマンテの手による小さな聖堂。
正面から見ると身廊と翼廊を持ついたって普通(といってもやはりブラマンテはバランス感覚がすごくいい)の聖堂なのだけれど
翼廊側へ少し角度を振ってみると、祭壇後部がだまし絵のようになっていることが分かる。
そしてトーレ・ヴェラスカ。近くで見てみると想像以上にかっこいいし、細かいところが丁寧だなと感じた。足元のベース(正確にはベースではないのだけれど)の存在が面白い。内部も1Fエントランスのみ見学させてくれた。
使われているマテリアルがよい。ただ、写真を見て想像していたのと違い(周りには結構ビルが多く)アイコンとしての役割は果たしていない。
予約していなかったので最後の晩餐は見られなかったけれども、サンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ聖堂なども素晴らしかった。
くたくたに疲れて夜ケバブを食べる。フランスよりもうまい。
11日目、この日は天気も回復し、太陽が顔を出した。ミラノをスフォルツァ城など少しだけ見てから念願のコモへ。
コモの駅に着く少し手前で電車の中からカサ・デル・ファッショが見える。世界で一番見たい建築はこれかもしれない。心臓がドキドキと高鳴った。
カサ・デル・ファッショが駅から一番近いのだけれど、焦らすように先に戦没者慰霊碑に向かう。
これはまあ、まあまあかなと。ただ、コモ湖に面して建ち、青い湖に照りつける太陽と鮮やかに晴れ渡る空のコンビネーション、それを受けてすっと立つ白い慰霊碑というのはよいもの。
そして、いよいよカサ・デル・ファッショへ。周りからじっくりと、細かいディテールまで舐めるように見ていく。俺ちょっと気持ち悪いなと思いながら。 そして大聖堂、線路、カサ・デル・ファッショという並びの関係性とか周辺のコンテクストまで含めて写真を撮りまくる。
正面にはイタリアの旗とEUの旗が。これってちゃんとした機関なんじゃないの?中見れるのか?と思いながら入ってみると、やっぱり警備員に止められる。NO VISIT!と。 でも、そこを何とかと必死にお願いしてみる。
少しでいいから、これ見るために来たんだからって。すると、警備員のお兄さん「じゃあ少しだけ、このフロアだけね。それから俺がちゃんと仕事していないことになっちゃうから誰か来客が来たら出てくれよ」と言って中に入らせてくれた。写真はもちろん撮れなかったけれど夢みたいな体験。
その夢みたいな時間はたぶん3分くらいだったと思う。結構すぐに来客が来てしまい僕は来客の対応をするお兄ちゃんの横へ。来客の対応が終わったらもう一回見せてくれないかなって思ったけれど、それは叶わず。
でも、ほんと親切な警備員のお兄ちゃんありがとう。普通は絶対中入れないらしいからね。カサ・デル・ファッショに対する愛が伝わったのかな。
時間が経った今思い返してみるとあれは夢だったんじゃないかとも思われる。
それぐらい俺は舞い上がっていて鮮明でありながら淡くもある記憶。1Fホワイエからの見上げはめちゃくちゃかっこ良かった。
で、サンテリア幼稚園へ。ここは平日なら内覧できたようなのだけれど、あいにくこの日は土曜で職員は誰もいなかった。
ただ、こちらは割とすけすけの空間なので外から注意深く眺めたのでもだいぶ内部の雰囲気もつかめたと思う。
そしてテラーニの集合住宅もいくつか廻った。その中でもかっこよかったのがこのジュリアーニ・フリジェーリオ集合住宅(これはテラーニの中では複雑、ヴィラ・ビアンカのようでもある)と
カサ・ぺドラグリオ。こちらはオーダーの原理にのっとったロースのようでもあるし、かっこいい。テラーニはある部分では非常にロースとも近いものがあるのではないかとも感じた。
ロース、テラーニ、アアルト、シザと僕が好きな建築家には何となく共通性があるね。
で、コモから帰りサン・シーロへと赴く。当日券を買うためだ。ダフ屋とも交渉するけれど条件が良くないから買わない。
当日券は18:30から売り出されることが分かり、それまでの間ジオ・ポンティのサン・カルロ病院の付属礼拝堂を見に行く。病院の付属施設なので入れるのだろうかと思ったがあっさりと内部に入ることができた。
祭壇に対して右側の六角形の窓と左側のランダムに開けられた細長い長方形のスリットの開口のバランスや
コンクリートの柱・梁などが面白い。なかなか心地よく穏やかな空間。
誰もいなかったので写真をバンバン撮ったけれど、誰かいたらそれは憚られただろうな。
当人にしても家族にしても病気が治るようにと必死に祈っている人たちを前に写真を撮ることは出来ない。
で、無事チケットも取れ、サン・シーロでインテル対サンプドリアの試合を観戦。チケットは23ユーロであった。たまたま一緒にチケット売り場に並んだ日本人と一緒に観戦した。
試合自体はサムエルが全く意味のわからない理由(一枚目のイエローはつぶしに行ったので仕方ないが2枚目のは完全に相手のシュミレーション。インテルのホームでああいうジャッジは意味がわからない)で早い時間に退場になり、すぐさまルッシオを入れて対応したのにコルドバまでが前半のうちにイエロー2枚で退場になってしまいインテルにとっては厳しい展開に。
サンプドリアがもう少しいいサッカーを見せてくれたらよかったのだけれど、全然崩せる気配がなくて試合自体は退屈なものに。
結局サンプドリアにも一人退場者が出てインテルも少し息を吹き返したけれど、どちらも決定機すらつかめずスコアレスドローに終わった。
ただ、劣勢の中でも光るミリートとスナイデルのうまさ。特にミリートの体の使い方、キープ力、そして味方も使えてと半端ないなと思った。すごい。まあ、総じて見ればすごいいい経験。楽しかった。
12日目、ミラノを発ち、ヴェローナ・ヴィツェンツァに立ち寄りヴェネチアへ
ヴェローナでは基本的にスカルパを見る。ヴェローナ銀行(日曜のため外観しか見られなかったが)とカステルヴェッキオである。
スカルパの建築を見て頭に浮かんだ言葉は日本語の「所作」という言葉。
たとえばダンスで体全体で何かを表現するときに指の先、足のつま先まで神経が行きとどいていることがすごく大事でそういう指先の所作の美しさが体全体の美しさを決めるわけだけれど、スカルパの建築はその指先、つま先まで配慮が行きとどいているというか所作が本当にきれいだなと感じた。
で、この日のヴェローナは日曜で大賑わい。街中ではヴェローナマラソンが行われており、トップ選手から市民ランナーまで大勢の選手が街中を走っていた。
カステルヴェッキオ。ある意味で非常に端正な建築。美術品の配置の仕方もうまいなと。それこそ指先までの配慮。
2セメの僕らの一つの大きなテーマは立体をどうやって美しく展示するかということだと思う。だからこそ、こういう展示の仕方一つ一つが気になる。
そして、展示品にふさわしい空間のマテリアルというものがあるなと。馬車には何がふさわしいんだろうって考えていた。
エントランスもかっこいいよね。すべてが心地よいスケールだしスカルパのすごさを思い知る。
電車に乗りヴィツェンツァへ。
ここはパラーディオの街なんだけれど、ここで一番感動したのはやっぱりテアトロ・オリンピコ。一見劇場とは思えないエントランス(多分劇場として使われていた当時は別の面がエントランスになっていたのだろうと思う)を入り、内部に入ると当時のままのクロークやトイレが残る。
そして内部に入った瞬間の感動と言ったら。鳥肌が立った。よい建築に説明入らない。ただただすごい。圧倒的。これはパラーディオもだけれどスカモッティのすごさじゃないかな。ここで演劇が見てみたいと思った。何度も客席を行ったり来たりして舞台上の見え方を検証した。
そして、パラーディオのバシリカ。昨日書いたブログのサッカーの写真はこの中のギャラリーに展示してあった。
パラーディオのすごさは一目見て「これパラーディオじゃない?」ってわかるところ。
この後くたくたに疲れていたけれど、遠くのほうに「あれラ・ロトンダだろっ」っていうシルエットを見つけてしまったため延々とそこまで歩く。
たどりついてみるとそこはロトンダでは無かったい。ただ、そこは高台だったのでヴィツェンツァの街を見下ろすことができた。で、今度こそあれロトンダだろっっていうのを見つけて、暗いなか延々と歩く。今度はそうだったのだけれど、もうとっくに開館時間は過ぎている。そりゃそうだよ冷静に考えれば。
この日は移動日ですんごく重い荷物持っているしほんとに疲れたし無駄足になってしまったけれど、でも見つけてしまったら行くしかないだろって辛い体に鞭打ってそこまで行ってみる俺は本当に建築バカなんだってことを実感できた。
この日はヴェネチアで安ホテルに泊まる。同部屋は日本人。やっぱりイタリアは日本人観光客が多いな。
13日目。マルセイユで別れた後、先にヴェネチアに来てずっとここに滞在していた東大生と合流。スカルパのブリオン・ヴェガを見にカステル・フランコという駅へ。そしてそこからバス。
ブリオン・ヴェガもまた素晴らしい。スカルパってすごいよ。そしてどうしてもスカルパからは日本的なにおいを感じざるを得ない。所作が美しい。
見学途中で曇っていた空が晴れて光が差し込むと、また別の表情を見せた。
この日は活動開始が遅かったせいもあり、ブリオン・ヴェガ一つ見るので精いっぱい。
14日目。この日はヴェネチアをひたすら攻める。細い路地や住居の中庭まで攻め込んでみる。中庭には必ず細い路地が続いており、その路地は建物の裏側の運河へと続く。
建築としてはパラーディオや安藤忠雄の美術館、サンマルコやヴィエンナーレなど。
特にヴィエンナーレは面白かった。現在修復中という感じのところも多かったし、建物内には入れないので閑散としていたが、外観と内部を窓からのぞき見るだけでも十分に楽しめた。世界中の建築家の作品があるし。
その中でもかっこよかったのはツヴェール・フェーン。生きている木をとりこんだ非常にミニマムな空間。天井のコンクリートの薄さと言いかっこいい。
パラッツォ・ドゥカーレとサンマルコ。パラッツォ・ドゥカーレは唸らされるけれど、隅のディテールがあまり好きではなかった。まあ、あれしか納めようはないんだろうけど。
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂。これはパラーディオではないしやっぱり建築としてはパラーディオがかっこいいんだけれど、ちょっとこの写真がかっこ良かったからあえてこれを選んでみた。集中堂形式というのはやっぱりどうも落ち着かないな。
そして夕日に染まるヴェネチアの空と運河。こういう何げない街の表情が一番美しいのかもしれない。
とりあえず前半戦はここまで。これだけ書くのにいったいどれだけかかったことか。
後半戦はボローニャ、フィレンツェ、ローマでっせ。
