・・・・・・・っということで、最初に断っておきますが、字幕なしの英語版で観たので、解釈が全く異なっているかも知れません。(;^_^A
リドリー・スコットは真面目な男です。
頭にクソが付くほど真面目な人間です。
【グラディエーター】と【エクスダス】でそれを強く感じました。
この映画は同じ事件を三人の視点から描き、立場によって微妙に証言が異なることから、黒澤明の【羅生門】と比較されるのは分かります。
しかし、作風は全く異なります。
反対意見はあるとは思いますが、黒澤明はエンターテイメントを重視する監督です。
決してクソ真面目一辺倒の監督ではありませんでした。
羅生門においてでさえ、それを感じないでしょうか。
今回の映画でもリドリーの真面目さが遺憾なく発揮されています。
エンターテイメントの要素は限りなく薄く作られています。
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ぼくがこの映画を鑑賞して残った印象は、「男って使い捨て」だなぁ〜です。
時代は14世紀後期で、百年戦争の真っ只中です。
舞台はフランスのノルマンディーです。
1)マット・デイモン扮するカルージュは好戦的で粗野な男。
傾いた領地を立て直す能力はなく、持参金目的で妻を娶る。
2)アダム・ドライバー演ずるル・グリはカルージュと親友で、彼とは異なり教養が高い。
世渡りも上手で、君主のピエール伯(ベン・アフレック)に気に入られ、何かにつけ、カルージュを手助けする。
3)ジョデイ・カマー演ずるマルグリットはカルージュに嫁ぐが、円満な家庭を築こうと努力する。
彼女は教養が高く、領地運営の才能があり、粗野なカルージュとは正反対の人格。
結婚6年経っても子供が産まれない。
このジョディー・カマーが美しい。
中世の美女役に完璧にハマっている。
ル・グリがマルグリットに一目惚れして、カルージュ不在中にマルグリットをレイプする。
もちろん彼女の方にも気があると一方的に解釈しての行為である。
中世の時代、こんなことは見過ごされ、被害者の女性も黙っているのが普通であった。
ところが、マルグリットは黙っていなかった。
どうして黙っていなかったか?
そこがこの物語のミソであります。
カルージュは国王シャルル6世の前での裁判を勝ち取るも、結局は決闘で白黒つけることになる。
三人の言い分が食い違うから判断がつかず、正義は神の手に委ねようというわけである。
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どうです?大真面目なストーリーでしょう?
大筋は単純ですが、三人はもちろんのこと、義母との確執、ピエール伯の思惑、彼女の女友達が重なり合って、見応えのある心理劇になっています。
そして、決闘のシーン。
カルージュが負ければ、妻のマルグリットも偽証罪として全裸にされた上、生きたまま火炙りの刑に処せられる。
息絶えるまで通常20〜30分かかるそうです。(ーー゛)
さて、どちらが勝利するかそれは観てのお楽しみ。
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リドリーにとっては自信作でしょう。
ひょっとすると、アカデミー賞も狙っているかもしれません。
しかし、欠点がないわけではありません。
まず、フランスが舞台なのに、英語です。
俳優もアメリカとイギリス人で固められています。
最大の欠点は、百年戦争と十字軍の時代が逆であること。
十字軍は百年戦争前の出来事です。
あと、ぼくの英語力の無さのせいでしょうが、三人の証言の論点のズレがあまり明確でないこと。
本当は羅生門のように微妙な違いがあるはずなのに、概ね三人の証言が合っている点。
これは致命的だと思うんです。
レイプされる時、義母が外出しているという点が説明不足。
義母がル・グリを手引きしたのではないかという疑問は残ります。
あと、マルグリットが男どもを手玉に取ったという説がありますが、深読みしすぎでしょう。
男は名誉のために命をかけるのは分かるけど、実は女性の名誉だって大切だという教訓。
これは現代に通ずるメインテーマです。
面白い点は、彼女は裁判直前に子供を産むのですが、ちょうど妊娠とレイプされた時期が重なるのです。
果たして、生まれた子供の父親はどちらか分からずじまいであること。
それでも、彼女は父親など関係なく生まれた息子を深く愛するのです。
そこで、ああ、結局男って使い捨てだなぁ〜という感想になるのです。(^^ゞ
迷うことなく★★★★★