・・・・・・・っということで、ぼくは飯盛山の登山道の入り口に座っている岩です。
最近よく通るお爺さんからは、「岩(がん)ちゃん」と呼ばれています。
ぼくがここにいるのは、八ヶ岳が山体崩壊した888年(仁和4年)の噴火の時からなんです。
信じられないでしょうが、八ヶ岳は活火山で、富士山より高い山だったんですよ。
それがドッカァ~ンと噴火して今の形になったんです。
その噴火のとき、ぼくは今の場所まで吹き飛ばされたんです。
だいたい10kmですね。
あのときはビックリしたなぁ~。
いきなりですもんね。
スッゴい音だったんですよ。
気が付いたときは空中を飛んでいました。
ぼくがいた場所がどんどん遠ざかっていきました。
変な話、サイコーの眺めでしたヨ。
そのまま放物線を描き、グルグル回転しながら地上に激突しましたよ。
木々をなぎ倒しながら今の位置で停止しました。
あれから1,132年、ずっと動いていません。
飯盛山の登山道が出来て以来、沢山の人間がぼくの前を通り過ぎていきました。
ぼくも歳を取りました。
黒々と光っていた肌は、酸化して茶色っぽくなりました。
ひび割れもでてきました。
その間に松の種子が根を下ろし、少しずつ成長してきました。
あと数百年もすれば、ぼくは根が張る力で割れてしまうかも知れません。
昨日も、いつものお爺さんが挨拶代わりに撫でくれました。
初めて会ったときは30年くらい前でしたが、人間ってすぐ衰えてしまうんですね。
最近はストックを突きながら、歩くのも辛そうでした。
そういえば、このあいだ落書きされた跡を見つけて、えらく怒っていましたね。
あのお爺さんと会うのも、残り数回でしょうね。

