・・・・・・・っということで、不思議な映画です。
一言でいうと、見る側の心理がもてあそばれます。
ジェシカ・チャスティンが出演していたのが見た動機です。
主演は、マイケル・シャノン。
二人とも折り紙つきの演技派です。
あらすじをざっと言えば、シャノン演じる土木作業員が、あるとき巨大な嵐が襲ってくるイメージに囚われます。
何度も夢に出てきて、現実の生活でも嵐の幻覚に襲われます。
それは竜巻のようなんですが、人や動物までも狂わせる不気味な嵐なんです。
ここがポイントで、単なるディザスタームービーだと思ったら大間違いです。
彼は妻(チャスティン)と難聴の娘を助けようと、庭に3人が避難できるシェルターを堀り始めます。
彼は自分の精神の異常を自覚していて、自発的に精神科にかかります。
何故なら、彼の母親は統合失調症で施設に入所しているからです。
観客は彼の見る幻覚と、現実の社会を交互に見せられます。
これがミソで、心理がもて遊ばれると書いた理由です。
だんだん妻も職場も町全体も、彼の妄想に巻き込まれていきます。(当然観客も。)
そこから先はネタバレなんですが、ネタバレしてもたぶん理解できないでしょう。
そもそもネタが何なのか説明できないからです。
だらだらした121分の映画が突然終わって、観客は放り出されます。
この映画は何を伝えたかったんだぁ?との疑問を持たされながら。
謎解きは観客に委ねられ、各自の解釈はまちまちでしょう。
でも、考えなければならないのは【嵐】が何を表しているかです。
当然、何かのメタファー(隠喩)です。
残念なことに、大部分の観客が嵐そのものと受け取っているのではないでしょうか。
「嵐=漠たる不安」でしょう。
日々の生活は平穏に過ぎていくように見えます。
実際に人生の大部分は退屈なものです。
しかし、そんな平穏な生活を一変させてしまう惨事は常に潜んでいるのです。
惨事は自然災害でも、テロでも、経済破綻でもなんでも良い。
その惨事によって、人々の心は狂気に駆られてしまうのです。
主人公はその恐怖に気付いてしまった。
彼の目からすれば、気付かない人々の方が異常なのです。
流石に二人の演技は素晴らしい。
緻密なシナリオも良い。
精神科医や取り巻く人々の使い方も良い。
でも、胸張って推薦できないのが残念です。
とはいえ、新型コロナで浮き足立ってしまっている今なら、この映画の意味が理解しやすいでしょう。
文句なしに★★★★★。