・・・・・・・っということで、映画【ミッション・ワイルド】は失敗作だったけれど、描こうとしていたことは意欲的でした。
いまBLM運動で、黒人が背負っている境遇について注目されていますが、実は女性の権利も問題だということをこの映画は訴えています。
時代は1800年代の中期、ネブラスカがまだ準州だった頃の話です。
江戸にペリーがやって来るちょっと前ですが、その頃のアメリカは野蛮だった。
インディアンを駆逐して、白人たちが定住を確かなものにしつつある時代でした。
主役のヒラリー・スワンクは、30過ぎの行き遅れの女性役。
女手一つで農場を経営する強い女性です。
彼女は頭が良く教養もあり、将来を見通すことができました。
このまま女一人ではやって行けないと知っていました。
近所の下らない男に結婚して子供を作ろうと、彼女から迫りますが断られてしまいます。
男勝りの彼女が男にとって負担なのです。
そんな中、精神が狂ってしまった女性3人を、650km離れた隣の州の教会に届けるという任務を彼女は引き受けます。
この辺のストーリーが不自然なのですが、これがないと物語が成り立たない。
気の触れた3人にはそれぞれの事情があるのですが、共通するのは夫に用無しと見捨てられていることです。
その用とは、子供(特に男の子)を生むことです。
当時の男性社会のアメリカにおいて、女性の価値とは生むことと、それに伴う行為の対象でしかなかったのです。
ちょっと目を逸らしたくなるシーンが続くのですが、それが元で3人の女性は精神を病み、用無しとなったのです。
当然、独立心の強い女性のヒラリー・スワンクと人生に立ち向かう力のない女性たちの対比として描かれます。
・・・・・・・
旅が始まると同時に木に吊るされかけているトミー・リー・ジョーンズを助けます。
彼女は、女一人で何週間も旅を続けるのは不可能だと知っていたのです。
$300という報酬に釣られて、男は一緒に旅をすることになります。
このトミー・リーが無法者で、平気で悪を働く。
神なんて一切信じていない。
一方、スワンクは信心深い。
女性の不平等が第1テーマだとすると、神の存在は第2テーマとなります。
こんな悪者のトミー・リーも、荒野を旅するとなるとめっぽう役立つ。
インディアンに襲われそうになったり、悪い奴に女性を拐われたときも、命がけで戦ってくれる。
そう、厳しい自然環境の中で生きるには、粗野で無教養だとしても男に頼らざるを得ないことを暗示しています。
観客は男勝りのスワンク、無法者のトミー・リー、か弱い3人の女性の対比の中で、女性の人権というものを考えざるを得ない仕掛けになっているのです。
・・・・・・・
ここから先はネタバレ。
トミー・リーは実際に老いぼれです。
スワンクは映画の中で31歳のオールドミス(?)という設定です
そのスワンクがトミー・リーに結婚してくれと迫りますが、自由人のトミー・リーに断られます。
それでも彼女は裸になって、恥をかかせないでと男に体を預けます。
それを3人は見守ります。
翌朝、男が目覚めると彼女がいません。
林の中で首を吊ったスワンクを発見します。
ここで、観客は予想外の展開にビックリさせられます。
何故彼女は自殺したのか?
・・・・・・・
彼女を埋葬し金を見つけたトミー・リーは、3人を捨てて立ち去ります。
ところが、3人が彼を追いかけてきたのです。
何故?
ここで、男の心に変化が起きます。
もちろんスワンクの存在が彼の変化を招いたのですが、無法者の彼の本質は善だったのです。
このあと、旅の終盤でホテルに泊まろうとしてひと悶着あるのですが、結果的に彼は3人を無事届けることに成功します。
届けた先の牧師の奥さんがメリル・ストリープスなんですが、大した役柄ではありません。
最後に、スワンクのために立派な墓標を木に彫らせ、彼女の埋葬地点まで戻ろうとするのですが、渡し船の船員が墓標を蹴飛ばして川に流してしまいます。
それを知らずに酔っ払ったトミー・リーは渡し船の上でやけくそになって歌い躍り、辺り構わず拳銃をぶっぱなします。
最後は、観客に銃口を向けて撃ったところで映画は終わります。
こう書くと、良さげな映画と思われるかも知れませんが、映画評に書いた通りです。
ただ、いろいろと考えさせられました。
映画の中でトミー・リーは騎兵隊に属していたことがあり、インディアンを散々やっつけたことになっていますが、インディアン虐殺は史実でした。
船着き場で鎖に繋がれた黒人たちが一瞬現れます。
たかが200年足らず前のアメリカって、ずいぶん野蛮な国だったんだと思わされます。