おっ!元気そう。
安心したのもつかの間、あの人誰?
・・・と、壁を指差す。ギョッ!
そこには白い壁があるばかり。
ぼくが壁の前に立って、ホラ、壁でしょ?というと、もっと上、あれが見えへんの?と来る。
ゆうべ電話があって、あれは◯◯ちゃんからだったと言う。
そのうち、犬が見えてきて、次に猫が登場して、あら可愛いと笑う。
犬が足を上げてオシッコしとると指差す。
仕舞にはライオンが出てきて、喰われそうだと心配する。
次に駅のホームが出てきて、電車が入ってくるのだそうだ。
看護師の声が外から聞こえると、壁を指してドアが開いとると言う。
昨夜は金星が見えて綺麗だったらしい。
いちいち反論するのが面倒になってきて、そうだねと相づちすることにした。
いつものように、とっくに亡くなった兄たちの話を、まるで生きているかのようにする。
急に危ない危ないと騒ぎだすが、車同士の衝突が見えているようだ。
点滴の中に何か幻想を誘発させる薬でも混じっているのか?
看護師に聞くと、薬のせいじゃなくて、環境が変わったとき老人に良く起きることだと言う。
自宅に帰った途端、普通にもどることがしばしばだと言う。
それにしても目をはっきり開けて言われると、心配になる。
父は亡くなる寸前に何かを見ていたようだが、これほど酷くはなかった。
空中にしきりに文字を書いていたが。
母は、幻想の世界から戻って来られるのだろうか?
それとも・・・
