・・・・・・・っということで、また変な小説を読んでしまった。
【石田依良(いしだ・いら)】という作家が書いた、「1ポンドの悲しみ」という、短編集。
何か時間つぶしになる短編を探していて、偶然題名に惹かれて購入。
例によって、作者に対する予備知識一切なし。
昔、ショーン・ペンが主演した【21グラム】という映画を連想した。
なかなかいい映画だった。
他にベニチオ・デル・トロとナオミ・ワッツとぼくの好きな俳優が出演していたな。
・・・オット、映画の話ではなく、小説の話。
10編からなる30歳前半の女性の恋の物語。
この作家は2003年に直木賞を受賞したことがあるらしい。
ぼくが無知なだけで、たぶん有名な作家なのだろう。
上手い。
文章表現に光るものがある。
特に、女性の心理を表現する才能に長けている。
あとがきを読むと、女性に絶大なる人気があるそうで、
その理由がよく理解できる。
だが、ぼくは嫌いだ。
・・・・・・
「下心」見えすぎなのである。
もちろん、男というものは女性に対して「下心の塊」であるとはっきり断言できる。
女性の心理というものはものすごく複雑だ。
特に恋愛に対しては、その複雑さは男が想像出来る範囲をはるかに超えている。
だから、女性の恋愛感情を上手く表現することが出来さえすれば、それだけで上手い小説が出来上がる。
もちろんその感情については、女性が一番詳しい訳で、
女性作家が女性を視点にして小説を書くのが最も正確であるといえる。
ところが、ここが女性の心理の複雑なところで、女性が書いたものに対して、
「よくぞ書いてくれた」とは思うが、それだけでは満足できないのである。
彼女達は、男性に女性の心理を理解して欲しいという欲求を、心の奥底に持っているものである。
要するに、女性の心理をよく表現できる男は、それだけで憧れの対象になってしまうのである。
恋愛の対象は、男である。
その男が、女性の気持ちを理解してくれないところに、恋愛の全ての問題が発生する。
(まあ、そこが面白いのだが。)
だが、ぼくは男だからはっきり断言できるが、
「男は女の気持ちを理解できない。絶対に。」と。
そう考えて間違いない。
男性は女性意に比べて、恋愛には貪欲ではない。
単に、セックスに貪欲なだけだ。
そう考えて間違いない。
恋愛に貪欲な男性がいたとしても、それは一時的な現象である。
それに比べ、女性は恋愛に真剣だ。
ずっと、ずっと重要だと考える。
そこに、こういう【石田依良】のような男が出現する。
女性の心理を巧みに表現できる技術を持った男だ。
女性はそこで思う、「女性の気持ちを理解してくれる男性っているんだ。ステキ」と。
ぼくが彼の文章を「上手いな」というのは、そういう視点からの感想だ。
彼のあとがきを読んでも、その理由が分かる。
色んな女性から経験した恋愛を必死で聞きだし、メモするのだ。
そして、それらを繋ぎ合わせて思いっきり膨らまして書く。
女性の好みそうなシチュエーションをちりばめて。
恋愛実話が話のベースになので、必ず女性の心理を代弁していることになる。
多かれ少なかれ、男性が女性の視点で物語を書くには、この手法以外考えられない。
なんつったって、「絶対に、男は女の気持ちを理解できない。」のだから。
あとは、上手く書くか下手に書くかだけ。
要するにそこに才能の差が出てくる。
その点、【石田依良】はとても才能がある。
まあ、「下心の塊」なのは、ぼくら男性から見れば、ミエミエなのですがね。