【藤十郎の恋】
菊池寛著
ニンテンドーDS文学全集
これはなかなか、巧妙な筋立てである。
三幕ものの戯曲である。
この作品のキモは、本当に藤十郎は演技のために、他人の奥さん(人妻というのかな?)を誘惑したのであろうか。
それとも、本当に恋をしていたのだろか。
大方の解釈は、芸のために人を利用したというものであろう。
そうでなければ、相手の奥さんが、これ見よがしに楽屋で自害するわけがない。
そして、人の生命をも踏み台にして、自らの芸の昇華させるという、
藤十郎のマキャべリにも似た冷徹さに拍手を送るのが普通であろう
だが、本当に、藤十郎は恋をしていなかったのだろか。
もし、恋をしていたのなら、自殺した相手の奥さんが早とちりだったことになる。
自殺の報を受けて、藤十郎が眉一つ動かさなかったのは、後者の解釈のほうが深みがあると思うのだがどうだろう。
イヨ~ッ「藤十郎ォ!!」っと掛け声をかけたくなるような、そんな物語である。