【ヘミングウェイ短編集(1)】
ヘミングウェイ (著), 大久保 康雄 訳
新潮文庫
1970年06月発行
読み方によっては、ヘミングウェイは短編がヘタだ。
O・ヘンリなんかと比べたら、雲泥の差だ。
なにしろ、起承転結がない。
エッ!これで終わるの?っという中途半端な物語が殆どである。
でも、この物語の中で、【キリマンジャロの雪】だけは、出色の出来である。
作家として、自分の才能には自信を持っているものの、結局一つも小説を物に出来なかったという物語である。
いつか書こうとネタをいくつも貯めているのだが、それが日の目を見ないうちに主人公は死んでゆく。
まさしく、この短編集は、ヘミングウェイがいつか書こうと思って貯め込んでいた話を集めたものである。
ヘミングウェイは自分が体験したことしか書けなかった、
・・・・・・っというより、体験したこと以外は書きたくなかったのだと思う。
だから、世界中を旅をし、戦争にも首を突っ込み、女性関係もそれなりに、狩に、釣りに・・・・・・っと、自分を追い込み続けたのであろう。
さらに書くが、ヘミングウェイは作家としては下手だ。
でも、彼独特の世界を持っている。
読者は、そのヘミングウェイワールドに惹かれるのである。
彼の視点、着目点、表現法は独特であり、誰にもない世界である。
自分も、自分の魅力が何であるかを知っていたのだと思う。
だが、同時にその魅力を維持するのに、とても苦労していた事が伺える。
そうなのだ、彼は自分の才能の限界をちゃんと理解していたと思う。
前にも薄々感じていたが、この短編集を読んで、なぜ彼が自殺の道を選んだのか、はっきり分かった気がする。