【国まさに滅びんとす】
中西 輝政著
文春文庫
2002年10月刊
この著者のことは、【大英帝国衰亡史】というハードカバーを読んで知っていた。
とてもよく書かれた本だった。
「山本七平賞」がどの程度の賞か知らないが、最近にないしっかり書かれた本であったと記憶している。
それが1997年の出版で、今回の本は翌年1998年出版の文庫版である。
【大英帝国衰亡史】のヒット(?)に気をよくして、あるいは、書き足らなかったことを書いた本である。
そのためか、かなり著者の素(ス)が色濃く出ている。
内容としては、大差ないと思う。(記憶があいまいだが。)
語り口が英国を礼賛しすぎという気もしないではないが、日本の現状を考える上で示唆に富む書となっている。
本文にかなりラインを入れてしまった。
「橋に辿り着かないうちに渡ることばかり考えてはいけない」とか、「ファクツ・アンド・フィギュアーズ」、英国における「Wisdom」の意味、「人生の営みとは過程が全て」とか、「早く見つけ、遅く行動し、粘り強く主張し、清く譲歩する」英国外交の基本などなど。
解説に書いてあった、著者が英国の大学に入って国際関係学をやりたいと言ったら、「そんな学問はない。あるのは外交史だけだ。」と言われたエピソードは、イギリス人の歴史に対するスタンスを非常によく物語っていると思う。
著者は大学の教授である。調てみたら京大だそうだ。
とても構成がしっかりした好著であることは間違いないが、前の著書でも感じたチョット「?」な部分もある。
それは、政治的な(愛国心的な?)発言が強いことである。
言いたいことは、英国衰亡の歴史から、日本の現状が類似していることを挙げ、それに対する認識と対策を求めることであるから、政治的な発言になってアタリマエではある。
しかし、「大学教授」として守る線はあると思う。
ちょっと、その線を越えているのが気に掛かる。
前回の本に比べ、その感が強い。
ナ~ンて思うのは、安部内閣のブレーンの一人であったことを、知ったからだ。
安部元総理は、「美しい日本」というキャッチフレーズでも感じたことだが、どうも自分の頭で考え出したコピーじゃないんではないかということである。
彼の政治理論面で、この中西輝政という教授は、かなり大きな部分で支えていたのではないかという気がする。
ブレーンを持つのはいいが、自分のものとして消化されていなけらばならない。
安部晋三いう政治家には何か、そういった未消化な影が付きまとっていると感じるのは私だけだろうか。
大学教授は政治に口出しするなといっているのではない。
中西教授がもし、自分が政治に対して影響力を持っていると思っているのなら、それは間違いだということだけである。
歴史家としての彼の役割は、「ファクツ・アンド・フィギュアーズ」を、しっかり提示することに、あえて留めるべきである。
私の何となく感じたことだけをもとに、ケチをつけているようだが、本書はとてもよい本なので、お勧めである。