・・・・・・・っということで、ぼくが高校生の2年だった頃、まだベトナム戦争が続いていた。
1968年か1969年頃だ。
学校の近くで、アメリカの【LIFE】という雑誌を買った。
なぜ買ったのかは定かではないが、たぶん何かその雑誌を買うのは格好が良いと思ったのだろう。
今でも鮮明に覚えているのだが、何ページかにわたってベトナム戦争で戦死した兵士の顔がズラッと並んでいた。
多分、先週戦死した者たちだっただろう。
その多さに驚いた。
小さな写真と、名前、出身、年齢が書かれていたと思う。
殆どが軍服を着て、にっこり笑っていた。
ある者は戦闘服を着ていて、胸の左右に手りゅう弾を付けていた。
ただそれだけである。
その頃アメリカは泥沼にはまり込んだような状態で、沢山の兵士を次から次に増強していた。
しかし、北ベトナム軍のテト攻勢などがあって、戦況は不利な様相を呈していた。
アメリカ全体が厭戦気分に覆われ、反戦運動も盛んになっていた。
デモ行進や、反戦集会、多くの言論が戦争への疑問の声を上げていた。
そんな中で出版されたのが、このLIFEの号だった。
ぼくは、この号がとどめを刺したと思っている。
アメリカ国民は、この号で一気に無意味な戦争をしていると気付いたのだ。
当然、戦争を継続する意見も依然強かっただろう。
なんたって、それまでアメリカは戦争に負けたことが無かったのだから。
共産主義は悪で、自分たちは正義の戦争をしていると信じて疑わなかったのだから。
しかし、どんな言論や運動よりも、ただ戦死した兵士の顔を並べるほうがずっと戦争の本質を突いていた。
黒人、白人、ラテン系、アジア系。
誰もが青年の顔。
戦意に高揚した表情。
将来を疑っていない目。
そして、あまりにも若い年齢。
これらの若者がいまも戦死して、来週も再来週も同じくらいの戦死者が並ぶことを実感するのである。
みんな分かっていると思っているけれど、本当は分かっていない。
実感として痛みを感じられないのなら、分かったとは言えないのだ。
LIFEのこの号が果たした役割はとても大きかった。
ネットを探していたら出てきた。
1969年6月27日号だった。
これによると、1週間の戦死者数は242人だったそうだ。
faces of american dead in vietnam one week's toll
ちょうど50年前(半世紀前)の記憶だったんですね。
不思議なことは、いまもアメリカは別の戦争を継続していること。