歴史上の人物をどう料理するか、この監督が選んだ手法がギリギリまで枝葉を削ぎ落とすこと。
もちろんチャーチルという人間像をあぶり出そうとしているのだが、彼が一番困難だった短い時期を選んでいる。
だから伝記を連想させる邦題より、原題の【Darkest Hour】のほうが相応しい。
実際のところは知らないが、彼が誰からも好かれていなかったことを強調している。
国王からでさえ嫌われていたことになっている。
しかし戦時内閣では、敵が最も嫌がるリーダーを据えるというのが定石。
敵から好かれるのが一番困る。
その点、流石に議会制度では一歩先を行く英国ならではである。
ねえ、安部さん、トランプさん。
ドラマ用に専属タイピストを狂言回しで使っているが、これが大成功。
平民の生活を知らず、政治の中でしか生きてこなかったチャーチルに、民衆の視点を気付かせる美味しい役柄になっている。
市民と触れ合う地下鉄のシーンは蛇足なくらい。
ゲイリー・オールドマンの神がかった演技、スピーディーな進行、時折混ぜるスローモーション、適切な配役、よく練られた台詞、時代考証など全てにおいてハイレベルな作品に仕上がっている。
戦争シーンには金がかかっていないが。(^ω^)
しかし、何かもの足りないのだ。
たぶん大方の意見とは逆だけれど、オールドマンの顔を無理矢理チャーチルにしてしまったことによる違和感だ。
メークアップ技術の勝利だということは解る。
オールドマンの演技が必要だったことも解る。
たぶん一切の予備知識なしに見たなら、彼の顔に施した大胆な大改造は見抜けないだろう。
しかし、チャーチルに似た俳優は他にいくらでもいるだろう。
首から顎にかけての違和感は最後まで拭いきれなかった。
チャーチルについての常識はかなり持っている方なので、あまり感動がなかったのかも知れない。