ドラマ【ジェネレーション・キル】 | so what(だから何なんだ)

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・・・・・・・っということで、アメリカHBOで放送された7週連続ドラマ。

 

 

以前ヨーロッパ戦線を描いた【Band of Brothers】と太平洋戦争を描いた【The Pacific】が優れた作品だったので、今回イラク戦争を描いた本作にも期待して鑑賞した。

 

前2作と異なる点は、原作が実際に従軍した記者によるものであること。

 

時代が限りなく現代に近い戦争を描いていること。

 

その結果、「物語性」が極端に少なくなった。

 

特に戦争ものは、語り継がれていく間に物語として面白くしようとする意図が働き、「美談」や「誇張」が加わっていくものである。

 

最近の映像技術の進化により、第二次世界大戦の戦場をリアルに描くことができる。

 

だからこの3作目もどんなにリアルに描いても、同じような戦争ものになるリスクが予想された。

 

そこで今回狙ったのは、物語性を完璧に排除すること。

 

従軍記者が見たとおり、経験したとおりを徹底的に忠実に描いている。

 

その結果、無意識にしても物語性を期待していた視聴者は完全に裏切られる。

 

DVD4枚、全7話、7時間近くずぅ~~~~っとハンヴィー( 高機動多用途 装輪車両 )に乗って移動する兵士たちを見続けさせられる。

 

確かに緊迫した戦闘シーンはところどころ挟み込まれるが、ほとんどが兵士たちが交わす「超」汚い会話ばかりで構成される。

 

だから、正直なところ単調で面白くないドラマなのである。

 

しかし、よく考えると本当の戦争は面白いはずがないのである。

 

戦争の大半は戦闘ではなく、退屈な待ち時間であり、移動する時間であり、不味い携帯食を食べ、排泄し、不眠に悩まされることで費やされるのである。

 

これを観ればアメリカの海兵隊がどんなものかが解る。

 

よくここまで正直にさらけ出したと感心させられる。

 

仲間同士が人種差別を隠そうとせず、個人のプライバシーを蹂躙し、女性を蔑視するし、アラブ人を蔑むし、異文明に対する敬意もない。

 

広島に原爆を落としたパイロットがうらやましいなどサラッと言ってのける。

 

兵士たちがロクでもない以上に上官や指揮官も無能である。

 

作戦もデタラメだし、命令も統一されていない。

 

精鋭だと思われている海兵隊の実態はそんな連中で構成された集団なのである。

 

それでもアメリカ軍は最強であることに異論はないだろう。

 

しかし、その強さの秘訣が圧倒的な資金力によるものだと判る。

 

最新の兵器を用い、無尽蔵の弾薬を消費し、常に敵より量と質で圧倒する。

 

敵の位置をちょいと無線で連絡すれば、すぐさま空爆や砲撃を加えてくれる。

 

各兵士が暗視スコープをヘルメットに装備していて、夜間の戦闘では圧倒的に有利になる。

 

兵士たちは無線で常時連絡を取り、部隊はネットワーク化されている。

 

アメリカ軍が世界最強なのは、兵士が優秀だからではないのである。

 

そうはいっても、このドラマは戦争の残虐性、矛盾、兵士たちの心の葛藤をきちんと描いている。

 

物語性を求める人にはオススメしないけれど、現代の戦争とはどのようなものかに興味のある人は絶対に見ておくべきドラマである。

 

 ちなみに主役はいない。


例によって兵士の顔の区別がつかない。