・・・・・・っということで、昔々、そのまた昔の話。
社内でパイロット養成の募集があり、なぜかぼくが当選した。
実にオイシイはなしである。
アメリカに派遣され、訓練費はもちろんのこと滞在費、交通費も会社持ち。
さらに、給料までもらえるのだ。
こんなオイシイ話があるものだろうか?
バブルだったんだなぁ~~~
・・・・・・
社内から4名が選定され、アメリカで合宿生活が始まった。
その中の一人がN君としようか。
とある公立大学卒で、数学的な能力はサスガだった。
ぼくよりほんの少し年下だったけれど、初対面で????マークがぼくの頭の中を駆け巡った。
彼をアメリカの空港で出迎え、宿舎に向かう途中、珍しくB17が係留されているのが見えた。
B17といえば、第二次世界大戦中米軍の爆撃機で、ヨーロッパ戦線で活躍した機体である。
多少、飛行機に興味のある人間なら、常識中の常識の機体である。
そこでぼくは当然知っていると思い、彼に向かって、「ホラ、アメリカはあんな古い機体でもちゃんと飛べる状態なんだよ」と言った。
ところが、彼はB17を知らなかったのだ!!
「・・・・・・」
社内で彼がパイロット養成に当選したのは、彼が自ら「飛行少年」だと猛烈にアピールした結果だったと知っていた。
ぼくは、とても自分のことを「飛行少年」だったなんて、口が裂けても言わない。
それでも、B17くらいは知っている。
彼と初対面で、この人物は怪しいと睨んだ。
・・・・・・
共同生活中、同じような事象が沢山起きた。
知ったかぶりをするのである。
その都度、ぼくは「正確な事実だけを言いなさい」と何度もたしなめた。
サスガに彼はキレて、「それだったら何も言えないではないですか」とぼくに反論してきた。
それでも、絶対に真実以外のことを言ってはならないと彼に念を押した。
なぜなら、航空のことを知っている社員は、この会社にいないのだから。
キミが言うことは全て真実だと取られる。
ぼくは営業だから、テキトーなことを言っても許される。
だが、キミは技術者として派遣されたのだから、話を膨らませることは絶対に許されないと断言した。
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さて、その後、N君はそれなりの要職に就き、新しい機体の開発のキーマンになった。
そして、アメリカから開発第一号の機体が輸入された。
6人乗りの機体なのに、燃料を満タンにしたら2人しか乗れない代物だった。
ぼくは、彼を呼びつけこう言った。
「ぼくは技術者じゃないけれど、こんな簡単なことくらいは分かる。
技術者であるキミが、なんでこんな簡単な欠点を初期の段階で指摘できず、こうやって輸入するまで放っておいたんだ?」・・・・・・と。
バブルの時代の話である。
当然会社は莫大な金をドブに捨てて、航空ビジネスから撤退した。
彼は、子会社の閑職に追いやられた。
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当時から分かっていたが、N君は優秀な男であった。
だが、社会の常識が欠如していた。
大学でも、研究室でも彼はリーダー的な立場だったと思う。
だが、ちょっと齧ったくらいの航空の知識で、自らを飛行少年といいふらすような人間だったのだ。
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長々と書いてきたが、小保方女史の事件を見聞きするたびに、このN君のことを思い出すのである。