・・・・・・っということで、ぼくが定年退職直前の今年2月ごろ、H君がひょっこり事務所に顔を出した。
彼が会社を辞めてかれこれ10年が過ぎていた。
会社を辞めたあと、自分で会社を立ち上げ社長に納まっていたのだ。
若いと思っていたが、彼も50歳に手が届くところまでになっていた。
だけれども、新入社員で入ってきたときと全く同じく、自分の価値観だけでものを言う態度は変わっていなかった。
そういう性格の人間には、社長業が適しているかも知れない。
彼は子供のときから自分の勉強部屋に「社長室」と書いた紙を貼っていたくらいだから。
会社は順調とまではいえないけれど、最小限の税金を納め、社員にもボーナスが出せていると聞いて心底嬉しかった。
というのも、彼が会社を辞めて会社を興すと聞いて、ぼくは大賛成したからだ。
「それが君の宿命だよ」というぼくの言葉が、思いのほか彼の背中を強く押したようだった。
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しばらく昔の思い出話に花を咲かせたが、彼が顔を出したのはどうもぼくの定年のことを聞きつけたからのようだった。
遠まわしに定年後の身の振り方を探っていた。
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言っちゃあナンだが、元部下が社長の会社に行くことなんかあり得ませんから。
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当然、その後飲み会になると彼は確信していたようだが、用事があるからと断った。
ホントーは用事なんかなかったけれど・・・。
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以上でH君シリーズは終わります。