・・・・・・・っということで、優しさとはナンだろう?
本当はショートショートにまとめようと思ったが、ショートショート未満のまま書いてしまう。
異論反論はあってアタリマエ。
ぼく自身も整理がついていないテーマなのだから。
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ぼくが小学校の頃からの友達で、とても優しい男がいる。
ぼくとはまるっきり違って、彼は長身でとても男前だ。
その上、勉強もよく出来た。
当然のように女性にはモテた。
ところが、本人は自分が女性にモテることに全く無頓着なのが面白いところだった。
残念ながら、彼はスポーツはあまり得意ではなく、どちらかというと運動神経は鈍いほうだった。
ところが、そういういわゆる典型的なプレイボーイタイプとは異なる点が、却って幅広く女性の心を引き付けるものなのである。
要するに高嶺の花のように見えて、実はギリギリ手に届く範囲の対象と見えるのである。
ぼくらの世代は今とは全く異なり、女性のほうから「告白」するなんてぇことは皆無だった。
ぼくは彼の親友という立場にあったので、相当数の女性が彼に片思いしていたのを知っていた。
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先日、久しぶりに彼と会って居酒屋で飲んだ。
ホントーに久しぶり、なんてったって高校卒業以来だ。
こういうことを可能にしたのは、FaceBookで彼の消息を知ったからだった。
ある程度酔いが回った時点で、当然のように共通の友人であったA子の話題になった。
A子はブスじゃなかったけれど、決して美人とは言いがたい、並よりチョット下の女の子だった。
彼らが付き合うきっかけを作ったのはぼくで、A子が彼のことを好いていることを知って、ぼくが冗談でけしかけたのだ。
端から見て気恥ずかしくなるほど、A子は一方的に舞い上がっていた。
彼に想いを寄せていた女子たちが、なんで彼がA子なんかと付き合っているのか、やっかみの目で見ているのが面白かった。
でも、ぼくは知っていた。
彼は特にA子が好きだったわけじゃないのだ。
たまたまA子が積極的に近づいてきたから付き合ったまでで、本心はもっと魅力的なB子やC子のことが好きだったのだ。
彼は優しさゆえに、断れなかったのだ。
彼とは別々の大学に進んだから、その後二人の間にどういうことがあったのか詳しいことは知らない。
結局長年の交際の末に別れてしまったことは知っている。
ここまでは普通にある話だが、後味が悪いのはA子が彼と別れた後、自殺してしまったのだ。
彼女は妊娠していたらしいとのまことしやかな噂が立ったが、真実のところは分からない。
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酔いが回った彼は、あのときはA子にフラれたのだとしきりに訴えた。
彼女がぼくにフラれたから自殺したんじゃないのだと。
彼女が彼に愛想を尽かし、同棲していたアパートを自らの意思で出て行ったのだと。
A子が彼と結婚したがっていたのは彼も知っていた。
でも、彼は彼女と結婚する気は全くなかった。
「だったら何で?」と聞くのは野暮だ。
彼は優しすぎる男なのだ。
ときに優しさは残酷なものである。
優柔不断とは異質なものだ。
だって、結婚しようかしまいか迷っていたわけではないのだからだ。
人は「いつまでそういう関係を続けるつもりだったのだ」と糾弾するだろう。
でも、ぼくは知っている。
「いつまでも」というのが彼の答えであることを。
それのどこが優しさかと言われるかもしれないが、それこそ究極の優しさじゃないだろうか。
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そう、それは弱さかもしれない。
本当の優しさとは真に強い男だけが持つものだといわれている。
たぶんそれは正論だろう。
だけれどもぼくはその考えに若干違和感を持つ。
自分は傷付いてもいいけれど、相手はぜったいに傷付けたくない。
そういう究極の優しさは、究極の愛につながるのではないだろうか。
・・・・・・・えっと、かなり酔っ払って書いていますので、あしからず。(^_^;)