・・・・・・・っということで、昔は犬を番犬としての機能だけで飼っていた家って多かったんじゃないだろうか?
要するに、今のように愛玩動物(いわばペットね)というよりも、防犯のみを目的とする飼いかた。
そういう犬は一日中鎖につながれていた。
ぼくが子供のとき、目の前の家にいた犬がそうだった。
道路に面したブロック塀に開けられた窓から覗くと、目の前に犬が繋がれていた。
顔を近づけると、激しく吠え出すので迫力満点だった。
学校の行き帰り、ぼくは必ずその犬にちょっかいをだしていた。
棒切れを差し込んでつついたり、ガブリと噛み付かせイライラさせたり、水鉄砲で狙ったり、石ころをキャンディーの紙で包んで目の前に置いたり、相手が襲ってこないのをいいことにしたい放題をしていた。
そういうことで、彼のぼくに対する吠え方は尋常じゃなかった。
・・・・・・・
ある日、学校からの帰りに家の前の角を曲がったとき、道の向こうにその犬がたたずんでいた。
首輪をはずして逃げ出したのだ。
犬と目があった途端、ヤツはぼくを目掛けて突進してきた。
そりゃそうだろう、ヤツの気持ちは良く分かる。
もちろんぼくは家に向かって走り出した。
あの時ほど怖い思いをしたのは、この人生で他になかった。
まるでマンガのように、間一髪で勝手口に飛び込みドアを閉めることができた。
・・・・・・・
えっと、何の話だっけ?
あっ、そうそう、犬を繋ぎっぱなしにすることだった。
飼い主のオヤジは腹が出ていて、いつもステテコにランニングシャツ姿だった。
彼がその犬を連れて散歩する姿を一度も見たことはなかった。
当然ウンチもオシッコも、鎖が届く範囲内だった。
憎っくきクソガキを食い殺すことが出来なかったのは悔いが残るだろうが、彼にとって首輪をはずして自由になれたあの日が、いちばん幸せな一瞬だったのだろうナ。