・・・・・・・っということで、大学時代の友人でKという男の話をしよう。
出席番号が隣同士だったのが、知り合うきっかけだった。
彼はバスケットの名選手で、背が高く、男から見ても格好良かった。
もちろん女性にも、モテまくっていた。
二人とも酒が好きで、よく授業をサボって、昼間から酒を飲む仲だった。
卒業後も、彼から誘いの電話が来て、ときどき会って飲んでいた。
あるとき、指定の居酒屋に着くと、彼は女性を連れていた。
小学校からの幼なじみだそうで、ぼくと同じように、彼が酒を飲みたくなったときに呼び出される対象リストの中の一人だった。
特に美人でもなく、スタイルもパッとしないが、利発そうな目が印象的な子だった。
彼の彼女に対する態度は、とても女性に対するものではなかった。
冗談の域を超えるくらい、相手の容姿を貶(けな)したり、からかいの言葉を発した。
酒が入ると、さらにそれは過激になり、聞いているぼくのほうはヒヤヒヤものだった。
それでも彼女は如才なく彼の攻撃をかわし、逆にウィットのある逆襲をしたものだった。
ぼくは、彼女の彼を見る視線に熱いものを感じ、彼がトイレに立ったときに、露骨に彼が好きか聞いてみた。
普段はそんな露骨な質問はしないのだが、お互い酔っていたせいにしよう。
「私には雲の上の、届かない対象よ」・・・っというのが彼女の答えだった。
・・・・・・
このあいだ、しばらくぶり、というより20年ぶりで彼と会って飲んだ。
流石に、昔のモテ男も相応に齢をとり、頭はほとんど白髪で覆われていた。
でも、体は引き締まっており、スポーツマンの面影は十分残っていた。
驚くことに、まだ独身だった。
酒が進むうち、ふと話題が彼女のことに及んだ。
あのあとすぐ、彼女は会社の同僚と結婚して、男の子を二人儲けたのだが、次男を産んだあとガンで亡くなったのだと聞いてぼくも驚いた。
ガンと気づいたときは、もう手遅れだったそうだ。
彼が病院に見舞いに駆けつけたときは、もう話すことも出来ない状態だったらしい。
ぼくが、「本人の口から聞いたのだけど、彼女は君のことが好きだったんだよ」と言うと、
そんなはずは絶対ないと、意外なほどキッパリと断言した。
酔っていたせいにしては、断固たる口調だった。
彼は、窓の外に目を移して、
「だって、あのあとぼくは彼女に結婚を申し込んで、断られたんだよ」
とぽつりと言った。
・・・・・・
これだけの話です。