・・・・・・・っということで、最近の子供達は「真の闇」を知っているのだろうか?
ぼくらの世代は、夜はもっと暗いものだった。
いまの世の中は、一日中明るい。
夜だって懐中電灯をつけなきゃ歩けない場所なんて、皆無になってしまっている。
その証拠に、夜中に走っている自転車さえも、ランプを点灯せずに平気で走っているではないか。
(そういうのを見ると必ず腹を立てるんですけどね。)
夕暮れになると、人間から闇へと支配者が交代するような雰囲気があったものだ。
東北本線の夜行便に乗っていると、走り去る景色は夕暮れとともに本当に闇に包まれていった。
窓からこぼれる明かりの狭い範囲だけが人間界の限界で、それから向こうは完全に闇が世界を支配していた。
ああいう不安な気持ちって、最近の子供達は経験したことがあるのだろうか。
ちょっとした郊外でも、新月の夜は真っ暗闇だった。
足元さえも見えない。
手を前に出していないと何かにぶつかるのではないかと心配になる。
それでも、何か顔にぶつかるかも知れないなんて思い込んだら、足が前に出なくなる。
そういう闇の中には、日中には活動していない何かが活動を始めていると感じる。
そう感じるのが自然の感情だ。
絶対に理屈では説明できない何か。
そんなものが闇の中にあり、自然とそういうものに畏怖の念を持つようになるのである。
そういう心の動きというものは、人間には大事じゃないだろうか。
少なくとも、子供のときにそういう感情を経験していないと、大人になって何がしら悪い影響が出るのじゃないか。
ぼくが言いたいのは、闇を恐れなくなるということです。
本当の闇の怖さを知らない人間になることなのです。
どういうことかと言うと、心の闇なのです。
他人の心にはそういうものが隠れているということ。
そして、自分自身の心にもそういう闇を抱いていると気付くことなんです。
そういう闇には、理屈では理解できないものが潜んでいるということ。
いくら目を見開いても、何も見えない。
そういう経験を絶対に小さいときに経験しておくべきなんです。