・・・・・・・っということで、甘酸っぱい想い出。
中学生時代は不思議なことに、女の子を好きになるということがなかった。
1年生のとき、何のきっかけだか、ある女の子に冗談のつもりで意地悪をした。
美術の時間に「お父さんの仕事」という題で絵を描かされた。
ぼくともう一人の悪ガキがその子のオヤジは「汲み取り屋」だと囃し立てた。
ご存知ですかね?「汲み取り屋」って。
昔のトイレは水洗なんて殆どなかった。
市の職員が、バキュームカーで各戸を回り、吸い取っていたのです。
定期的なんだけれど、溢れそうになると電話をかければ、やって来るサービスもしていた。
このまま続けると、甘酸っぱい想い出じゃなく、臭い想い出になってしまうので、話を戻す。
その子はムッとした顔をしたけれど、何とバキュームカーのホースを持つ男の絵を描いた。
もちろん、その子の父親はそんな仕事に就いているわけでは全然なかった。
いじめられる理由なんか全くなかった。
相棒の悪ガキはそれを見て、さらに悪乗りしたけれど、ぼくは彼女に謝った。
なんと言って謝ったのかは、まったく忘れてしまったが。
・・・・・・
その子は、無口な子だった。
飛び切りの美人ではなく、どちらかというと地味な子だった。
ただ、ぼくなんかに比べたら、ずっと大人びていた。
いつも、静かに本を読んでいた。
彼女とはそれっきりクラスも一緒にならず、言葉も交わさなかった。
・・・・・・
そして、卒業となった。
最後にガリ版刷りの卒業文集がみんなに配られた。
家に帰って、何気なしに文集を読んでいたら、その子の文章があった。
読んで驚いたというより、戸惑いを覚えた。
ぼくに対する彼女の想いが綴られていたのである。
ぼくの名前は伏せていたが、「鼻の下に薄い髭を蓄えた」人物といえば、ぼく以外には居なかった。
中学時代、床屋では一度も鼻の下は剃らず、学校でも髭のFLとして有名だったのだ。
内容は忘れたが、かなり大胆な愛の告白であった。
卒業した後、彼女に連絡を取ろうとも思わず、それっきり一度も会っていない。
家に友達がやって来て、「あれはオマエに対するラブレターだぜ」と、からかおうとした。
「そんなはずねえだろ」と、ぼくはその手には乗らなかった。
今から思うと、会ってあげれば良かった。
たぶん、会ったとしてもどうにも発展はしなかっただろうが、今でも後悔している。
全員が読む文集に思いを綴るなんて、ものすごく勇気が要ったことだろうから。
今頃、どうしているだろうな?
まだぼくのことを覚えているだろうか。
・・・・・・
これで、このシリーズ、一応終わります。