風印 -windmark- -7ページ目

風印 -windmark-

「遠くふけふけ、どこまでも。」

君の名を呼ぶ
届かぬと思いながら
君の名を呼ぶ
聞こえていると知りながら

君の名を呼ぶ
無意味だと思いながら
君の名を呼ぶ
愛しいと知りながら

君の名を
僕はまだ知らない
この感情に 名前はない
この感情に 根拠はない
この感情に 自信はない
この感情に 答えはない

この感情に 嘘はない
僕がそこにいられれば
あなたがそこにいてくれれば
この感情に 終わりはない
囁く闇
癒えぬ渇き
数多の妄想が 脳を螺旋で抉って
逆行と発狂のリフレイン

ささやく声
言えぬ想い
数多の想像が 体を螺旋で巡って
解放と愛情のリフレイン

僕はかつてそれを『棘』と呼んだ
人は永遠にそれを『恋』と呼ぶ

あてもなく叫んだ声が

幾度も君を呼んだ声が   

その 聞き飽きた声が

僕の喉を焼き 僕の心を裂き

僕から君を 遠ざけてしまう



その掠れた声で 掠れた心で

僕はもう一度だけ

もう一度だけ 君の名を呼ぶ



緩く大気を震わす声が

低く地面を伝わる声が

その 耳馴れない声が

初めて君を 振り向かせてくれる
笑顔と涙が織り成す季節
道ゆくひとは 桃色に染まって
僕のこころは 春を嘆く
未だ散らない さくらの下で

出逢いと別れが芽吹く季節
まちの景色は 桃色に薄らぎ
僕のこころは 春を待つ
未だ咲かない さくらの下で
いつもの道から ひとつ外れて
知らない景色と消える灯り
かすかに残る夕陽のオレンジが
僕を導く午後6時

いつもの部屋に朝が訪れ
見知った景色と消える君
見えないはずの その残像が
僕を迷わす午前6時
あなたの『おはよう』と呼ぶ声
それが部屋に響く時には
わたしはきっと夢の中
素敵なセカイを 飛び回る

わたしを起こしてしまわぬように
静かに部屋を出るあなたの
笑顔はきっと夢の中
眠るわたしに 届いてる

あなたは今ごろ夢の中
わたしはそこにいるのかな
ひとり 幸せな夜を更かしながら
まぶたを閉じて わたしはつぶやく
『おやすみ、おはよう。』
夜明けの帰り道 僕が投じた
消えかけの 小さな小さな火は
鋭く天を突く 放物線を描いて
僕の視界から居なくなった

冬の曲がり角 僕が見上げた
曇りがちの 空に浮かぶ月は
柔らかく雲を撫でる 放物線を描いて
僕の視界から居なくなった

玄関の前 開く扉
僕が投げ捨てた 『忘れた何か』は
きっと この心の重力に引かれて
僕の視界に 舞い戻る
僕の世界に 舞い戻る
私の消えた この『セカイ』で
機械となった身体だけが動き続ける
この異様を笑う私は もういない
この異形を嘆く私は もういない

『死とは甘美なものである』と
かつて唱えた者がいた
それを生の逃げ道にしてはならない
なぜなら生を全うしてこそ死が訪れるから
生から逃げた先は『無』なのである

兎に角 今この身体を包む快感は
自らを消したふりをして得た
『擬似的な死』によるものではなく
今私が全うする生の裏面から
蝕むように滲んできた
『真なる死の影』がもたらすものなのだ
『世界は広い』と感じた瞬間に
世界は狭く縮んでゆく
『世界は狭い』と感じた瞬間に
世界は広く膨れてゆく

世界の中に私たちが居るのではなく
私たちの中に世界が在るのだ