
さて、前回の続きです。社内でダイエットプログラムのモニターをしている渡辺さん(仮名)。お酒飲んだあとにラーメンを食べることになりそうな日があるという話。。。。
僕はこう言いました。「渡辺さん、65kg(渡辺さんの目標体重)になるために、いま頑張っているんですよねっ!」わざと叱るような口調で強めに。
『あーーっ!そっかーーー(笑)』と渡辺さん。
実は渡辺さん、その前日のミーティングで、あるトレーナーが食事制限のうまくいかないお客様について話した時に、こんな発言をしたんですね。
『○○(某パーソナルトレーニングジム)のトレーナーは、お客様が食事の約束を守らない時は、強めに叱るっていうことをしていたよ。』
それに便乗して、他の社員からも、
『そうだね、そういうところは厳しくしっかり伝えていった方がいいよ。』
とのアドバイス。
そんなことがあったので、僕が渡辺さんにわざと叱るような口調で言ってみて、渡辺さんもその話を思い出し、苦笑いってわけです。
『冗談ですよ、渡辺さん。僕は別に食べるなとは言いません。それは渡辺さんに任せますけど、食べたら今までの努力が振り出しになりますね。でも、〆のラーメンを食べたとしても、僕は変わらず渡辺さんとトレーニングを続けて、応援していくだけです。』
僕はそう伝えただけ。
普通に考えたら、そんなのダメって言われることくらい分かっているはずです。ところがそれでもなお、僕に質問してきたのは何故?
もしあなたが本当のトレーナーなら、ここで読み進めるのをやめて渡辺さんの質問の意味を考えてみて下さい。
答え:相談でもお願いでもなくて、「食べる」という目的ありきである
僕はこれを「事前の事後報告」と言っています(笑)
これで渡辺さんは、叱ることが問題解決にならないことを、少しだけ実感したかも知れません。もし僕がその時、『じゃぁ渡辺さん、僕がダメって言ったら、ラーメン我慢してくれますか?』と質問したら何と答えたことか。あえてダメだと言うまでもないわけです。もう「食べるという目的が」できているわけですから。
お酒飲んでからのラーメンを許してもらえるかどうかなんて、誰がどー考えても相談するほど難しい問題ではないですよね。
おそらく体重増えて戻ってくるだろう。でもしょうがない。渡辺さんがそうしたいのだというのだから、それを僕が変えることはできません。その結果、どのようなことが起こることだけは伝えました。あとは渡辺さんが決めること。
トレーナーがそんなことでいいの?結果を出すのが仕事じゃないの?と思う人もいるだろう。もちろん本当にそれだけであとは何もしないわけではありませんよ。それについて話す前に以下の2つを考えてみて下さい。
A:お客様を叱り、約束を守らせる
B:お客様が自らの意思で約束を守れるような動機付けを行う
Aは分かりやすいですよね。ではBはどうでしょう?
Bという選択肢があることすら考えずに「叱るのはお客様のため」ということを言い出したら、それは良くない気がする。お客様以上にそんなことをしているトレーナーのために一番良くないと僕は思うんですね。
AとBの決定的な違いは?
A → 変わらなきゃいけないのはお客様
B → 変わらなきゃいけないのはトレーナー
お客様を叱ることで結果を出そうとするなら、『わたしは、お客様が理想のカラダを手に入れてほしいと思って、真剣にお客様のためを思って叱るっている』そう言い続けることができる。それを受け入れられなのならば、それはお客様の問題。
『あれだけ、念を押して強く言っておいたのに約束を破られたんじゃ、こっちもどうにもできない。』
最終的にはそう言って終わるしかない。
でも、Bのように、お客様が自らの意思で約束を守る努力ができるよう勇気づけることは、お客様に対して向けた視線と指をグルリと返して自分に向け続けることを意味する。これはお客様ではなく、トレーナーの問題。
意欲がもともと高いお客様であれば、叱ろうが褒めようが、伝えたことをしっかり実行してくれて、成果もだし、トレーナーに感謝もしてくれるだろう。でもすべての人がそこまで意欲が高いとは限らないわけですね。
飲みに行って、〆のラーメンを食べてしまうかも知れないという事前の事後報告をしてきた渡辺さんに対して僕はささやかだけど自分ができることをはじめてみました。
その結果、渡辺さんが自分の意思で「やっぱりラーメンはダメだ!やめよう!」と思ってくれたら、幸せだ。僕に叱られたから考え直すのではなく、自らの意思で意欲を高めてくれたら最高だ。
でも期待するなんて野暮なことはしないよ。仮にダメだったとしても、それでもただ自分ができることは何かを考え行動し続けること。トレーナーはそこでマインドを鍛えられる。相手に求めたり、期待したりるするのではなく、ただ願い、それを行動に移す。
自分はこんなにお客様のことを思って行動しているのに。。。そんなことを考えたらすべて台無し。結局お客様が変わることを求めていたことになる。
「トレーナーの愛の鞭」などなくても、お客様が自らの認識を変えた時、それを体験してくれれば、もうトレーナーは何もしなくても大丈夫。渡辺さんも自分からどんどんより良い結果を目指すように変わっていく。僕は、そんなお客様をたくさん見てきた。それで成果はでる(もちろん100%とはいいませんが)。
トレーナーはお客様を痩せさせることはできません。理想のカラダを目指そうとする意欲をサポートするところまでしかできません。現実的な努力をするのは、お客様なのですから。変えることができるのは、お客様ではなく自分自身だけ。
トレーナーとは○○であるべき、というのも良いが、その前に良き人間であろう。そんなこと伝えながら、新人トレーナーの研修はまだまだ続く。