詩人 意味を成さず  ~掌握~ -16ページ目

詩人 意味を成さず  ~掌握~

私が詩だと思ったものを
ロックンロール

父さんは余命宣告されたときに俺のワンボックスの運転席にのり「事実上の死刑宣告だな」とハンドルに突っ伏した

 

かける言葉なんてない

生まれて初めて余命宣告を目の当たりにした

 

父さんは車でどこかに飛び込むのでは思った

 

俺の車のキーを貸せと言われたら俺はどうしたんだろう

 

あれだけタバコを止めるように言っていた母さんはもうタバコをやめるようにとは言わなくなった

 

腕が上がらなくなり

顔が上がらなくなり

体の支えが必要なぎりぎりまで白いセダンに乗った

 

孫を抱こうとして真後ろにひっくり返った

姉ちゃんに子どもができて

父さんの死に間に合うように俺にも子どもができて

 

幻なんて一つもない

現実

現実はいつだって双曲線のように相反してすれ違っていく

 

思惑と不真面目の激突

際限のない混乱

 

 

ウナギを食べた

そばをそのまま食べた

父さんは小食だった

酒をのんだ

 

 

父さんは意気揚々と大学の体育学部に入った

数か月でアキレス腱を切った

もう走ることはできなかった

マネージャーを続けた雑草の男

挫折を共感できる魂の男

 

母さん

ここまできて嫁姑とかどうでもいいだろう

父さんを二つに分けて一体なにがあるんだ

だから

だから俺は自分が灰になったらその辺にぶちまいてくれって思うんだ

 

俺は父の教えを守っていない

守れていないことが多すぎる

母さんに一言も言えなかった


 

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その思い出の函館に俺の運転で父さんと二人

 

函館山と立待岬と五稜郭

 

なにもない

三枚の写真に写った父さんはやわらかい笑顔で白いジャンパー

 

 

父さん

父さんがいれば俺は今どれだけ救われるのだろう

 

父さん

父さんは二つに分かれてしまった

分骨の意義とはなんなのか

どうして父さんの骨は札幌と函館に分かれなければいけないのか

 

300キロメーターの分裂

永久の分断

 

ふんだんに盛り付けられた情けなさの塔

深海に到達する心残りのおびただしさ

 

薄い平面

感情にまかせたあさはかな明朗

 

 

狭い部屋

父さんの書斎はタバコの匂いが染みついていた

 

俺の読んだ本を読んでいた

俺の本が父さんの部屋に勝手に

 

父さんは釣れない釣りに行き

打てないマージャンをした

 

自分の生徒がバイクで死んだときダイニングチェアを叩き割った

温厚が叩き割った

 

常にセダン

最後までセダンだった

初めての車が廃車になったとき父さんは泣いた

 

車を愛していた


 

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ちさき子に水をうけとる遠道

 

薄紅が爆発した五稜郭

背丈程の樹木と共に

桜は好きではない

毎年をこれでもかと刻んでしまう

はきと

 

 

最後の旅だったのか

いや

最期にもう一度旅立つ

無へ

 

 

まぶしくはない日本晴

父さんにとって故郷函館での最後の日となった

 

くるみを二個持って

手のひらで回す

 

確定した届かなさが幅をきかせる

 

思い出は思い出を殺す

楽しかったことの裏側を探る

疲れ果てるほど境界を信じない

 

混じりけのない記憶はない

事実は一つだけれども

 

 

幼いころ

夏は毎年父さんの実家がある函館に行った

函館に親せきやいとこが集まった

 

あの頃は早朝がまぶしすぎて目を開けられなかった

 

道中長万部でジュースを飲む

俺は毎年熱をだして口内炎がひどかった

カニ飯が食えなかった

 

高速道路はなかった

 

長万部の海は砂浜が狭い

危なくて泳げない海

でも大沼よりも強烈に覚えてる憧憬

 

トンネルを通るたびに息をとめた

黒いナンバーは縁起が悪いと信じていた

子どもは平等に愛されるのだと思っていた

 

たまらなく瑠璃色の万華鏡

原色をちりばめただるま落とし

初めての映画館

興奮してしゃべりすぎていとこに怒られる

 

アリがばあちゃんの家を行進していた

いつも100玉を40枚ほどもらった

ビニール袋に入れてもらった

ばあちゃんの家にはいとこの写真が飾られていた

俺の写真は一枚もなかった

狭いばあちゃんの家にはたくさん布団があった

 

 

いくらでもバッタはいるのにセミは一度も捕まえられない

 

カステラと牛乳

オロナミンC

 

父さんは漬物が嫌いだった

 

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こちら札幌

札幌calling

世界の音楽そして

札幌の生身の音楽シーンに同期します

 

泊について考えたことは何回もあったよ

もし泊から放射能が漏れて

それが風向きで札幌に来たならば

僕らはどこににげるんだろう

 

こちら札幌

札幌calling

泊まで行ったことがある

なんだか小さな科学館がある

子どもも楽しめるそこそこのプレジャー

原発はいいところなのかと思っちゃった

 

こちら札幌

札幌calling

またうまく出来ているもんでね

泊に行っても岩内に行っても

神恵内に行っても原発は見えない

神恵内のバレー部はひどいらしいねえ

 

こちら札幌

札幌calling

なんでも泊は原発作るって金がね

金がたくさん落ちるらしいね

だからみんな言いなりで何でも賛成で

住民を巻き込んだやらせってなんのことかな

 

こちら札幌

札幌calling

原発ってやつは「絶対」「絶対」安全で

何かが起きることはないんだってね

まあ何かってのはよくわからないけど

職員の家族はみんな遠くにいるらしい

 

こちら札幌

札幌calling

 

泊りの敷地は山菜取り放題で

多分プルトニウムも採り放題

被爆者が2人でたらしいけど

被曝するって簡単すぎて参るよ

 

こちら札幌

札幌calling

札幌もそれなりに2回揺れは感じた

職場で何気なくテレビをつけたんだ

仙台の港が映し出されていて

あっという間に波にのまれていった

 

こちら札幌

札幌calling

何日もテレビに釘付けになるそりゃあね

札幌も十分にことの重大性は分かっていたさ

でもこちら札幌の人間にとっては対岸の火事

スーパーの少しの売り場が空になっただけさ

 

こちら札幌

札幌calling

テレビで見たんだよ福島第一原発

吹っ飛んだときには日本は破滅するのかと

福島はとんでもない道を辿るけど

札幌から見ればテレビドラマみたいなもので

 

こちら札幌

札幌calling

天気予報は晴れか小雨から気温か台風か

そんな感じだったけどもあの頃には

放射能が風でどちらに行くかなんて予報

とにかく札幌だけ助かればなんてねえ

 

こちら札幌

札幌calling

それから国中の原発という原発が止まり

何でなのか泊原発だけが稼働してね

知事のおばさんがなんか言ってたけど

日本で動いているのは泊原発だけで

 

こちら札幌

札幌calling

そろそろ札幌市民もわかり始めたわけだ

原発なんてなくても生活できるってことをね

この夏を他の県が原発に頼らずに乗り切って

涼しい札幌の電気が足りなくなんてならないことを

 

こちら札幌

札幌calling

そして孤高の存在泊原発もやっと止まる

最後まで運転させた北の大地それは

この震災がいかに札幌には関係ない

異国での出来事と感じた証になった

 

こちら札幌

札幌calling

今日の札幌は快晴PM2.5も黄砂もなし

快適なドライブをお楽しみください

札幌市民は世界一他人に無関心

津波も震災も被曝もよくわからない

 

こちら札幌

札幌calling

世界の無関心そして

札幌の生身の無関心に同期します

  

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あとがき 2018 9 10

上の詩は今年6月に書いたもの。

そして今回の9月6日の北海道地震。札幌市民は大きな停電や断水を経験し、セイコーマートやガソリンスタンドに長蛇の列をつくるわけだ。過去の他都府県の震災の重さにやっと気づくわけだ。笑っちゃうね。そんな私も純正札幌市民だ。まいったね。

 

 

 

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「フンフフン」 2018 4 13

 

ギターが弾けなくても

ピアノが弾けなくても

鼻歌でフンフフン

 

テレビのあの人の歌

歩いてもスキップでも

どこでもフンフフン

 

お家には誰もいない

いつ帰ってくるの

大好きなお母さん

 

知らない男の人に

ハダカを触られて

呼び名はお父さん

 

ご飯はきちんと食べてる

歯もちゃんと磨いてる

鼻歌でフンフフン

 

けっこうさみしいけれど

神様今日もありがとう

鼻歌でフンフフン

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どいつもこいつもなんでこんなにいらない口をたたくのか

黙って聞け

お前ら全員便器だ

口を開けて俺から漏れるものを受け止めろ

ションベンしたらなんでクソかけられなきゃいけないんだ

口開けて死ね

 

お前らの人生経験の全てを以てして俺を見下ろせ

俺の悩みはお前らから見れば小さなこと

どうせお前らはとっくに突破してきたこと

でも

今の俺は自分でそこをなんとか

自分の力でそこをなんとか

 

うるせえ黙ってろ

 

俺は酔ってる

お前らに酔ってるんじゃねえ

自分にもっと酔いたい

自分の力で

解決できる

お前たちのような

クソ便器

クソ便器

ちくしょう

お前たちのような

血の通った

歴戦の兵たちに

アドバイスをもらいたいんじゃねえ

 

だからしゃべるな

一方的に俺の話を聞け

 

ああ不安だよ

猛烈に不安だよ

何かにしがみつきたい

怖くないといえば

それは地球上でもっとも大きな嘘になる

 

引っ込みつかなくなる自分を求め

しゃべりながら整理する自分を求め

なによりも

きっと俺の現在をひたすらずっと垂れ流させてくれるくそ野郎どもに会うために

ここにきた

 

暖かい言葉はいらない

やさしく諭すのもやめてくれ

人間の数だけドラマがある

だからこそお前らは黙れ

俺はもうこれ以上お前らの話を聞くわけにはいかない

もう十分迷ったんだ

俺は迷っているっていうことを話にきたんじゃない

もう迷わないっていうことを話にきた

 

若い心が一所懸命に自分と戦い

何かを乗り越えようとする背中を

 

黙って見送れ

 

経験不足な俺が

失敗するのをわかっていても

俺に与えられるチャンスが

限られたものであるとわかっていても

 

ほほえみもせず

わざとバカにしたような顔で

 

黙って見送れ

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君は花が好きだ

僕は自転車が好きだ

君は絵が好きだ

僕はピアノが好きだ

君はパンが好きだ

僕はパンを嫌いだ

君はピンクが好きだ

僕は紺が好きだ

 

花や絵にあふれて自転車もピアノもない

僕は毎日パンを食べている

紺はピンクを精一杯引き立たせる

君は笑顔でいっぱいだ

僕も笑顔でいっぱいだ

 

君は僕の話をきかない

僕は君の話を聞いている

君の微笑は最高だ

僕の微笑も最高だ

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幼き少女は言いました

寒くて寒くて凍えます

温かいものをくださいな

残りのスープを温めてそっと渡してあげました

 

幼き少女は言いました

どこにも行くあてありません

わたしにおうちをくださいな

隣のばあさん刺し殺し荷物を全部捨てました

 

幼き少女は言いました

寂しい夜が続きます

誰か友達いませんか

首だけ人形こしらえてテーブルの上に置きました

 

幼き少女は言いました

わたしの話しを聞いてます?

もっと喜ぶことをして

上手に勃起を隠しつつ笑顔で相づち打ちました

 

幼き少女は言いました

この世の全てを我がものに

誰もがわたしを讃えるの

今解き放たれ僕は静かに後ろから少女に近づきまずは右手で絹糸のように白いサラサラとした髪に触れる

 

僕の右手は汗とは違う何かでベタついていた

ネトネトジトジトウチャウチャ

少女の髪の毛の数十本は溶けてー

振り返る少女

何も喋らない

左手を肩口に前を向かせる 

 

少女のワンピースに同化する

左手の中指が皮膚まで浸透する

薬指も小指も

 

赤い血の中を駆け巡る酸素

―ああ収縮

これが最後の肺呼吸になるとは!

彼女の首筋に口づけすると僕の顔の下から半分は少女のうなじにめり込む

彼女が僕を取り込んだのか僕が彼女を取り込んだのか

もはやそんなことは

 

花は咲いているがこちらを向いてはいない

声は聞こえているが獣の姿はない

星は手の届かない場所で寝ている

不思議と不安はない

誰もいないところで僕たちは確実に生きている

 

次第に丸みを帯びてきた

足も体も動けば動くほど塊になって

丸い

丸い

2つの脳を持った有機物

その脳もいずれには

 

彼女はまだ喋ることができるみたいだ

 

うん わたしは何も持っていなかったから

こんな形も素敵 私の自己実現

ワールドイズマイン

私は私の内面を追求したかった

あなたの目で私の追求を確認してほしい

あなたは私の客観的な自我

内蔵されたモニターのように

 

僕たちは言葉を使わなくても会話ができるようになっていった

世界は僕ではなく2人になった

モニター

無理だった

2人は2人とも主観だったから

会話する球

その会話を誰も聞くことはできない

しばらくしてこの世は終わりを迎えた

荒れ果てた漆黒の闇の中を球は永遠に彷徨う

今日も会話する

 

幼き少女は言いました

ここはいったいどこですか

あなたはいったい誰ですか

ちっとも心配いりませんあなたは人間なのだから

 

あなたは人間なのだから

 

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「SAPPORO CITY GIRL「」           2018 5 3

 

僕らのたまり場は札駅だった

講義を抜け出して誰も勉強しなかった

ミスドに荷物だけをおいて

君たちをナンパしまくった

あっというまに破廉恥なメンバーは

君たちの無垢な笑顔にダウンして

気づくと誰もが誰かと

少しだけ多くの時間を共有した

 

君たちはいつだってお茶目な顔して無理を言い

短い夏も長い冬もはつらつして新鮮を探していた

SAPPORO CITY GIRL

 

代ゼミのインチキなレンガのほうが

道庁のレンガよりもずっと親しんでいた

地下の食堂に集まるとき

君らはとってもおしゃれをしていた

4プラパルコアルシュイケウチ

プリヴィ札幌はダイソーになっちゃった

僕の好きな君のおしゃれのSOYRCE

丸井今井のイーストボーイだったよね

 

君たちはいつだってお茶目な顔して無理を言い

短い夏も長い冬もはつらつして新鮮を探していた

SAPPORO CITY GIRL

 

橋本が免許を取ったっていったとき

隠れて竹内も免許を取っていた

ぎゅうぎゅう詰めで2台に乗り込んで

人影もない銭函の海まで一直線

君らも僕らも服のまま海に飛び込んで

そりゃ冷たいよ六月の北の海だもん

僕は背中にガムテープを貼られ

君の名前を日焼けで刻んでいた

 

君たちはいつだってお茶目な顔して無理を言い

短い夏も長い冬もはつらつして新鮮を探していた

SAPPORO CITY GIRL

 

大通公園は観光の場所じゃない

あそこは札幌の無茶の塊だ

僕らの一番熱い夏は

大通公園でのやんちゃな鬼ごっこだった

当たり前に秋が来て

ほっといても冬がくる

受験という厳しい一言で

結局みんな札幌を後にしたんだよね

 

君たちはいつだってお茶目な顔して無理を言い

短い夏も長い冬もはつらつして新鮮を探していた

SAPPORO CITY GIRL

 

 

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