詩人 意味を成さず  ~掌握~ -15ページ目

詩人 意味を成さず  ~掌握~

私が詩だと思ったものを
ロックンロール

かわらないいつもの朝だったような

ぼくの家にむかえがこない

ゆうきがいつもぼくの家に来て

そのあとけんじときょうへいといっしょに学校に通っていた

ゆうきが学校を休むときはゆうきのおばさんが電話をくれた

今日はその電話もない

ゆうきを待っていたので少しおそく学校に向かった

いつもと違う子たちがぼくのつうがくろにいた

なんだか少しずついつもの朝ではないような

 

げたばこにくつをいれうわばきにはきかえる

いつもよりそとぐつが多くてうわばきがすくない

 

女の子とはなかよくしない

みんなにも言ってあった

だから女の子はぼくにはちかよらない

女の子とあそんでいるとなんだかバカにされそうで

みんなにも言ってあった

女の子とあそぶのはカッコワルイと

あそんでいたやつがバカにされるのはあたりまえだ

でもチョコレートはもらったことがある

これはみんなにはないしょにしている

 

シューズシューズぼくのシューズ

 

教室に入るまでだれにもあわなかった

座席につきよく見るとゆうきがいた

なんで家によびにこなかったのか聞いてみようとちかづいた

ゆうきはちかよっただけでむこうに行った

けんじもきょうへいもなんだか目を合わせてくれない

つよしもたーぼうもけいすけも目を合わせてくれない

おはようといった

みんなおはようと言った

ぼくの机のまわりに集まっていたやつらがこない

なんだろうと思っているときに朝の会がはじまった

 

ぼくの周りが変わってしまった

昨日まではぼくはどちらかというと活発で

みんなの中でも発言力があったような

なんだか急にみんなたいどが変わってしまったような

おはようが冷たい

 

中休みにみんなの中に入って野球の話をした

ぼくは地元の野球チームのエースだ

ぼくが野球の話をするとみんなも楽しく話をしてくれる

ぼくは野球が好きだ

みんなも野球が好きだ

だからいつものように野球の話をした

なんだか変だ

いつもならぼくの球の速さや

ぼくをキャプテンキャプテンって言ってくれるのに

 

シューズシューズぼくのシューズ

 

何かが変だ

野球の話をしてもろくな返事が返ってこない

ぼくのまわりだけにおいがちがう

遠くて

きもちも

なんかみんなとの間に線がある

 

2軍のやつに聞いてみる

2軍てのはなんだか本を読んだりスポーツのできないやつらだ

ぼくが話しかけるとなんだかびっくりした顔をしている

学校でなにかあったのかと聞くと

何もわからないよってていねいに答えてくれた

 

何もない

何かある

 

なんだかわらってみた

えがおで「ともだち」に

せいいっぱいのえがおで

 

おかしいぜったい

みんなと目があわない

 

話を聞いてくれるけど

話が続かない

今までぼくの話をぜったい聞いてくれていたのに

今までぼくの言うことにはぜったいみんなさんせいしてくれたのに

今日は話もちゃんときいてくれない

なまへんじばかりだ

 

わらってみた

だれもわらわなかった

苦わらいをした

何とかしなきゃと思いわらいつづけてみた

 

そして一番の親友のタクジに聞いてみた

 

シューズシューズぼくのシューズ

 

キミががきらいだ

いつも自分勝手で

弱いやつをいじめる

自分が一番だと思っていて

虫が好かないと前から思っていた

キミにさからうと

みんなに仲間はずれにされると思って

いつもみんなキミに気をつかっていた

キミはたしかにみんなを引きつける力を持っていたかもしれないけど

もうキミにはうんざりなんだ

もうキミにかかわりたくない

キミは自分の好きなようにやってくれよ

ボクらはボクらでやっていく

キミがさそってもだれもいかない

キミは一人であそべばいい

キミのおかげで泣いたやつはたくさんいる

キミはじぶんかってだ

気分屋だ

たえず誰かをバカにして

取りまきだけを連れていた

みんな一度はキミの取りまきになっていた

そしてみんな一度はキミの取りまきをはずされた

キミのわがままにふり回された

友達との関係をキミの好きなように引きさかれた

なんでボクはあいつをなぐらなければいけなかったんだ

キミが命令したんだ

 

シューズシューズキミのシューズ

 

もう何もいうことはないよ

せっかくだから教えてあげたんだ

多分他のだれも何も言わないと思う

キミとは話したくないって言ってる

 

キミと出あってうれしかったことがある

まだキミのせいかくが悪いって知らなかったころ

ボクが引っこしてきたばかりのころ

キミはボクに声をかけいっしょにゲームをしてくれた

初めての「ともだち」ができたって思った

こっちにきたボクのあたらしい生活がやっとはじまるんだなと思った

あのときのキミはやさしかった

そのあとすぐにキミは正体をあらわすのだけど

キミにはがっかりした

キミがこわかった

キミにはみんながっかりしている

みんなキミがこわいと思っている

キミに逆らうとひどい目にあうと思っていたんだ

 

ボクは少しの間だけどキミが「ともだち」だと思ったことがある

だから教えてあげたんだ

ボクたちがもう疲れ切っていることを

 

シューズシューズ誰のシューズ

 

いずれ早かれおそかれ先生に何かあったかと聞かれると思う

ボクらはそのときに何もないですって答えることにしてる

キミの父さんや母さんが心配するかもしれないけど

ボクらは心配しない

キミは親友じゃない

「ともだち」でもないし

もう話しかけることもない

話しかけないでね

キミと話しているのをみられたら

ボクも仲間外れにされる

それじゃ

 

キミは3軍だ

 

シューズシューズぼくのシューズ

 

わからないよ

「ともだち」ってのは何なんだ

みんな「ともだち」だろう

先生も言ってた

みんな「ともだち」ですよって

ぼくが楽しいときはみんな笑ってたじゃないか

みんなぼくのまわりで楽しんでいたじゃないか

みんなぼくを笑顔で囲んでくれたじゃないか

ぼくが一体何をしたんだよ

 

シューズシューズぼくのシューズ

シューズシューズぼくのシューズ

 

シューズシューズぼくのシューズ

シューズシューズぼくのシューズ

 

 

 

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俺は上半身だけ縫われてよみがえる

復讐も呪いもない

俺のしたいことは這って前進すること

ことごとく排除した

砂埃と白線だけの道を遅々と進む

俺に役目はない

たわいのない目的があるだけ

心から愛する人

変わり果てた俺をもっと教育してくれ

 

夢と希望と肉体を破壊された眠れる豪傑

それが俺の称号でもあるし蔑称でもある

やがてやってくる斜陽は命を持っていて俺がどうなっても気にしない

 

球をつめこられた大砲が暴発するとき俺は剣をもって憎しみと戦っていた

暴発した大砲の一部が俺の体となり俺の体の大部分が城の通路のシミになった

 

愛する者

身に余る愛と戦場

友は血液まで争いに巻き込まれた

一滴一滴と血を流し友は追い込まれ剣を飲み込むように馬から飛び降りた

 

誰も俺を思い出さない

フィアンセまでも意図的に俺を忘れ去ろうとしている

あまりにも失っていくものが多すぎて順をつけて弔うひまなんてありはしない

 

俺は上半身だけ縫われてよみがえる

戦術は単純だ

闘える奴から死んでいけばいい

記憶は半分しかない

脳が半分飛び出たから

なくなった記憶の範疇に嫌なものだけが詰まればいいのに

遅々として進む

可能な限り最短距離で

 

マッチ棒は箱の中では着火しないと信じひたすら濡らさないようにだけ気を付けた

人間の味を覚えた猛獣たちの踊りは凱旋中の敵の整列にも及ぶのだろう

 

懐疑的な意識のまとまりが敵意をもつ

悪口を言われている子どもの心境だ

指導者のところまではたどり着けない

大抵は誰が何を組織しているか謎

 

混じりけのないパウダーなんてありえない

大体お前ら全員が混じりけたっぷりだ

俺は体の半分と脳の半分が欠けている

混じりけのなさも半分だと信じて異様

 

ほっといて眠らせてくれてもいいのにおせっかいな奴が俺をよみがえらせた

この道は何かに続いているだろう

だから言ったろう

俺はただ進むのみ

 

俺は上半身だけ縫われてよみがえる

 

 

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口づけのペダル思いきり踏んでオーバードライブ

君の脳に直結する

 

数秒の触れ合い

唇に込めた愛をたたきこんでみせるの

夕立

 

心に火をつけられた

完全に火をつけられた

壁際に立てかけられた傘は1つ

 

距離は近くなった

グッと近くなった

矢は放たれた

残された二人

 

この豪雨まもなく終わるけれど

隙間のようなこの時間だけ誰にも邪魔されない

 

大げさなもの何もいらない

言葉

大した意味をもたない

 

夕立が丸ごと包み込んでる

誰にも見えない

聞こえない

夕立

 

7月もサヨウナラ

どんな水もはじくこの素肌に早く触れて

他の人がどんなキスをしていても

 

ねえ本当?大好きな人とのキスは甘いって

ふざけたこと抜かすんじゃないの

 

君がいいの

君しか見えないの

グラウンドはあっという間に乾く

 

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父さん

父さん俺はいま力尽きようとしている

俺にはまだするべきことがあるような気がする

ただ俺はもうどうしようもできなくなっていて

父さん

父さんなら俺に何を言ったのか

俺は

 

 

誰にもあこがれなかった

好きな教師なんて一人もいなかった

ただ

父さんが教師だったから

俺も教師になった

 

 

誰もが誰かの死を不公平に感じる

 

 

俺は何を感じたのか

父さんが水銀とともに俺にぶつけたもの

そこに

 

俺はいまさらになって

父さんから聞き漏らしたものを探している

 

父さんの唇の動きを

聞き漏らすために

聞き漏らすために父さんの病室に通っていた

 

 

俺はいま力尽きようとしている

 

父さん

 

父さんがいれば俺は今どれだけ救われるのだろう

 

父さんは自分のことを誠実だといった

自分の人生は誠実であったと

 

俺は

俺はその言葉を聞いて俺の人生に誠実であろうと思った

俺の好きなように

したいことを思うがままに

他人に誠実なのではなく

俺の欲望のおもむくまま誠実を言い訳に生きて

俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺 俺 俺

そして俺は多くを裏切った

多くをなくしてしまった

俺は大きく間違ってしまった

 

父さん

俺はもう誠実ではなくなってしまった

 

父さん

俺はもう誠実ではなくなってしまった

 

父さん

父さんが買ってきたドーナツやハンバーガーを食べなかった俺を許してくれ

俺が喜ぶだろうと土産を買ってきてくれた

そんな父さんの気持ちを誠実を失ってから初めて気づいたんだ

 

いつだって俺はつまずいている

 

 

病室で6月の脳をかきむしる

 

 

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父さんは呼吸器をつけない選択をしていた

母さんは泣いた

姉さんも泣いた

俺は泣かなかった

 

 

朝4時の電話を受け車に飛び乗った

 

病室に入ると看護師が父の上に馬乗りになって心臓マッサージをしている

看護師の本気のオーラに一人の人間の終末を感じた

 

これが白目をむくということか

これが白目か

脈が限りなくない状態から

看護師のめいっぱいの

渾身の心臓への直接の吹き込みで父さんはかぼそい意識を取り戻した

 

 

モルヒネは呼吸をとめる死

 

 

父さんは確実に俺の目をみて言った

間違いなく言った

父さんの目に命が戻ったかすかな瞬間のこと

何も話すことはできない

もう喉の管をおさえて話すことも

口の極小の動きをみてコトバを感じ取ることさえできない中

俺だけの目をみて

俺も父さんの目だけをみて

この世で父さんの話がわかる最後の人間として

尊厳死を望む男の

その最期の瞬間を嗅ぎ取り

察するなどというものでは表せないほど確実に俺は医者に言った

モルヒネを入れてくれと

 

病室が凍り付いても確実に俺は言った

モルヒネを入れてくれと

 

誰もが「もう頑張らなくていい」といった

「死ぬな」ではない

「死ね」と

 

俺は涙を流さなかった

一人の男を少しでも気丈に見送りたかった

いや

そんなんじゃない

もう疲れ果てていた

どうにもならないなにもかもにうんざりしていた


 

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病室に行けなくなる

あまりの密度の吐露に俺の容器が詰まっていく

あまりのやるせなさに

 

死へ向かう

恐怖と闘う

受け入れたはずの人生の終わりに

駄々をこねるように放つ父さんの失われていくきらめき

その最後の微々たる光線が

俺に

俺にだけ

 

 

俺の容器はあまりにも小さくて

 

病室に遅れていくとあの寛大だった父さんが怒った

 

俺はあまりの状況についていけず

母さんも

姉さんも

親戚も

誰もいない夜に

 

パチンコで時間をつぶしてから病室に向かった

俺は面会時間のギリギリに病室に向かった

そして父さんは怒った

話し相手は俺しかいない

父さんの焦りを俺は踏みにじった

 

父さん

もうつらくて聞いてられないよ

自分の遺言を俺にだけ刻んでいく

 

声の色を失うばかりではなく

声本体すら

 

もう誰も

父さんの言っていることはわからない

俺以外は


 

 

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腹に穴をあけ栄養という名の泥を入れる

喉に穴をあけ匂いのないガスを吸う

 

喉のパイプにタバコを詰めろだと

 

失われた声の色

かろうじて喉のパイプに指をあて

パイプを閉じるとかすれた声で

 

背中をかいてくれ

窓をしめてくれ

痰をとってくれ

 

 

水銀を飲むような日々が始まる

 

仕事が終われば病院にいく

毎日終末のコトバをぶつけられる

 

人生最後のコトバが毎日あの手この手で

ベッドの横に座る俺を

知らなかった父さんの信実が

インキのごとく俺に染み込んでいく

 

父さんのきらめく人生の一つひとつが

みせなかった葛藤や悲鳴の一つひとつを

今まで知らなかった父さんの人間としての様が

最終回のテレビドラマのように

毎日テレビドラマのペーソスあふれる最終回が

俺に

形をかえあらゆる角度から俺にだけ繰り返される

狂おしいほど鋭く鋼鉄のつまようじが全裸の俺を余すことなく突き刺していく

 

俺の中に植え付けられた種子は拡張して膨張して肥大して肥満した


 

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父さんの日常は凡てが乏しくなっていった

 

立つこと叶わず曲線にかたまっていった

 

筋肉という筋肉が弱り何もできずに精神の地獄に陥る

体がどれほどいうことをきかなくても

表情を表す筋肉まで動かなくなっても

頭は冴えているらしい

体も動かず

声も出せず

誰にもその脳の躍動を伝えることができない

ただ聞くしかない

だた考えるしかない

嘆きを

苦痛を

愛を

訴えることすらできない生き地獄

もう絶対に治らない

誰にも開けることができない精神の牢獄

 

最後に呼吸する筋肉が弱り

 

死ぬ

さもなくば

人工の呼吸器をつけることで

精神のみの塊は生きながらえることができる

 

曲線にかたまる

 

芋虫

 

いや芋虫よりも動くことができず

 

表現は自由ではない

父さんは表現ができなくなっていく

二度とジョークも言えなくなっていく

 

呼吸器をつけて地獄を続けるのか

呼吸器をつけずに先に逝くのか

 

俺ならどちらを選ぶのだろう

君ならどちらを選ぶんだい


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父さんが生まれたのは昼が一番長いころ

父さんが死んだのも昼が一番長いころ

 

 

ALSと診断された

しかしその診断はおかしいのではということになった

ALSであれば進行が遅すぎる

喉の調子がおかしい

それからいくつもの病院を渡り歩き

喉の病院にかかった

 

数年が経過し

少しずつできないことが増えていった

喉以外にも症状が出つつあった

 

セカンドオピニオンなんてものでは言い尽くせない数の病院をめぐり

またALSと診断された

 

診断を受け入れざるをえなくなった

もうこれ以上病院を変えても仕方がない

残された時間を大切にするしかない

そう思える納得の死刑宣告だった

 

余命宣告

 

死刑宣告と父さんは言った

 

 

痩せたのか

元から細かったのか

小食の父さんの細い筋肉はすべて脂肪になっていく

 

あっという間に老いていく

まだまだ若いのに顔がしぼんでいく

 

優しい男だった

その優しさは顔に表れていた

柔和なまま父さんは急激に衰えた

 

フロを愛した父さんは自力ではフロには入れなくなっていた

 

俺が全力で体をささえ

いや

全力ではなくても父さんをフロに入れることができた

軽くなっていた

 

俺が体を支える

俺が股間を洗う

俺が尻を拭く

父さんは喜んでいた

 

最後の谷地頭で父さんの背中を流した記憶がよみがえる

あれだけ一緒にフロに入ったのに背中を流したのは

谷地頭の湯にタオルを沈ませるとメタルな茶色に染まる

 

それも忘れていく


 

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