あなたは人間なのだから 2018 3 17
幼き少女は言いました
寒くて寒くて凍えます
温かいものをくださいな
残りのスープを温めてそっと渡してあげました
幼き少女は言いました
どこにも行くあてありません
わたしにおうちをくださいな
隣のばあさん刺し殺し荷物を全部捨てました
幼き少女は言いました
寂しい夜が続きます
誰か友達いませんか
首だけ人形こしらえてテーブルの上に置きました
幼き少女は言いました
わたしの話しを聞いてますか
もっと喜ぶことをして
上手に勃起を隠しつつ笑顔で相づち打ちました
幼き少女は言いました
この世の全てを我がものに
誰もがわたしを讃えるの
今解き放たれ僕は静かに後ろから少女に近づきまずは右手で絹糸のように白いサラサラとした髪に触れる
僕の右手は汗とは違う何かでベタついていた
ネトネトジトジトウチャウチャ
少女の髪の毛の数十本は溶けてー
振り返る少女
何も喋らない
左手を肩口に前を向かせる
少女のワンピースに同化する
左手の中指が皮膚まで浸透する
薬指も小指も
赤い血の中を駆け巡る酸素
―ああ収縮
これが最後の肺呼吸になるとは!
彼女の首筋に口づけすると僕の顔の下から半分は少女のうなじにめり込む
彼女が僕を取り込んだのか僕が彼女を取り込んだのか
もはやそんなことは
花は咲いているがこちらを向いてはいない
声は聞こえているが獣の姿はない
星は手の届かない場所で寝ている
不思議と不安はない
誰もいないところで僕たちは確実に生きている
次第に丸みを帯びてきた
足も体も動けば動くほど塊になって
丸い
丸い
2つの脳を持った有機物
その脳もいずれには
彼女はまだ喋ることができるみたいだ
うん わたしは何も持っていなかったから
こんな形も素敵 私の自己実現
ワールドイズマイン
私は私の内面を追求したかった
あなたの目で私の追求を確認してほしい
あなたは私の客観的な自我
内蔵されたモニターのように
僕たちは言葉を使わなくても会話ができるようになっていった
世界は僕ではなく2人になった
モニター
無理だった
2人は2人とも主観だったから
会話する球
その会話を誰も聞くことはできない
しばらくしてこの世は終わりを迎えた
荒れ果てた漆黒の闇の中を球は永遠に彷徨う
今日も会話する
幼き少女は言いました
ここはいったいどこですか
あなたはいったい誰ですか
ちっとも心配いりませんあなたは人間なのだから
あなたは人間なのだから









