皆さんおはようございます。今回もフィクションドラマ 「メディチ」(英国・イタリア合作)のサードシーズンの評価と解説を自分なりにまとめてみようと思います。シーズン3は今現在は日本では未公開、また一部ネタバレの可能性もありますので、嫌な方はスルーをお願いします。そして、以下に書いてある内容はあくまでも私個人の意見として読んで頂きます様お願いいたします。
*フィクションドラマ「メディチ」についての過去記事はこちらのカテゴリーから見ることが出来ます。
~メディチ シーズン3-ネル・ノーメ・デッラ・ファミリア~
サブタイトル Nel nome della famigliaは、「家名にかけて」とか「メディチ家の名のもとに」などの意味になります。
英語では Medici: Power and Beauty 直訳すると「力と美」という意味ですからサブタイトルはイタリア語と全く違う意味が与えられています。
私は英語圏に住んでいないせいかサブタイトルの直接の意味とシーズン3の内容を比べても正直言ってあまりピンとこないのですが、芸術のパトロンのイメージが非常に強いメディチ家にふさわしいと考慮された故のネーミングなのでしょうか?
<主人公と主な登場人物達>
主人公はシーズン2と同じ主人公ロレンツォ・イル・マニフィコ (ロレンツォ・デ・メディチ)で、
主な登場人物は妻のクラリーチェ・オルシーニや、ロレンツォのかつての思い人ルクレツィア・ドナーティなど他諸々シーズン2と同様の登場人物、また一部人物が同じでも俳優の入れ替わりがあり(例 シクトゥス4世教皇等)、その他にも新しい登場人物やまったくの架空の登場人物、また回想シーンとして亡き弟のジュリアーノ・デ・メディチの出演もあります。
全部紹介しきれないので、ほんの一部だけピックアップします。
神父 ジローラモ・サボナローラ Girolamo Savonarola (Francesco Montanari)
ロレンツォ夫妻とも交流があったが、のちにメディチ家に対する痛烈な批判をするようになる。
(左から)
イッポーリタ・マリーア・スフォルツァ Ippolita Maria Sforza (Gaia Weiss)
ナポリ王フェッランテ Ferdinando I Ferrante di Napoli (Ray Stevenson)
ナポリ国王子 エンリコ・ダラゴーナ Enrico d'Aragona (Daniele La Leggia)
イッポーリタはフェッランテの息子アルフォンソ2世(王の命令で教皇軍と共にフィレンツェに攻撃を仕掛けている張本人)の妻で、以前、アルフォンソとの結婚前にフィレンツェに滞在したことがありロレンツォとは面識があり、フィクションの中ではロレンツォとはお互いに特別な感情を匂わせるような演出があります。
<解説と評価>
ストーリーはシーズン2の最後に起こったパッツィ家の陰謀事件後からのお話です。
教皇はロレンツォとフィレンツェに対して破門宣告を告げ、教皇庁はナポリ王国と同盟を組んでフィレンツェと戦争を始めることとなります。
フィレンツェ共和国攻防戦中にフィレンツェ側の傭兵隊長が教皇軍から買収されてしまい、やがてフィレンツェは窮地に立たされます。
(*1~3の全シーズン共通で歴史上の人物名や場所などを使ったフィクションドラマなので全体的に史実と混ぜて話が進みます。例えばドラマの中でフィレンツェ側の傭兵隊長グィスカルディという人物や彼が買収されてしまう話等は史実と異なりフィクションであると私は推定します。とはいうもののいわゆる史実も事実と異なる場合もありますし、本やネットで調べても知らない、自分自身がまだまだ知らない事も多々あると思いますので、あくまでも推定の域です。)
そこでロレンツォは少数の人間だけを連れて単身でナポリへ向かい、ナポリ王フェルディナンド1世のもとでしばらくの間の(表向きは迎賓として迎えられ)滞在し、交渉を経てナポリ王との停戦条約の締結に結びつけ教皇軍の同盟は解消、その結果、フィレンツェの街とメディチ家を危機から守ることに成功し、フィレンツェへ栄光の帰還を果たします。(ここまではシーズン3の3話まで)
第4話からはそこから7年後の話になり、もうここからは我慢がならないほど、ロレンツォがだんだん地の底へ落ちていくようなダメダメ人間に変化していいきます。シーズン2では夫婦の危機を乗り越え、ロレンツォと結束することが出来たクラリーチェも、だんだん失望することが重なり、最後には嫌悪感を抱きながら、大きな失望のもとに亡くなってしまう程でストーリー全体で「こいつは汚い男でぇっす(^▽^;)」、みたいなあからさまなアピールをされながらそのまま物語は第8話まで続きます。
メディチ家の中でも史実上で一般的に評価のよくない息子ピエロからも、このフィクションドラマ内ではシリーズ後半から残酷で汚い父であるという疑いの目で軽蔑されてしまう程で、4話から8話までは主にロレンツォのそれまで親しかった友人や愛する家族、信頼できるメディチ派の人間からも侮蔑や疑いの眼で見られるようになる経過が描かれそして、最後に死を迎えこのフィクションは終わります。
なので、4話以降はそれまでの「良くできたフィクション」ではなくなり、なんでフィクションだからと言ってここまでロレンツォが落とされてしまうのか泣きたくなるような内容なのです。ロレンツォがどんどん地に落ちていく原因の多くはブルーノ・ベルナルディ(突然ロレンツォの目の前に現れ、のちに彼の側近・書記となる架空の人物)という男による誘導が原因となりますが、とにかく歴史のヒーローであるはずのロレンツォが裏で汚い手を使ったり、隠蔽目的でまじめで無垢な人間を殺してまで権力を維持していくように描かれてるのがとても残念でした。
説法をするジローラモ・サヴォナローラと聴き入る民衆
もちろん、ドラマがつまらないとは言いません。むしろ、史実で語られるエピソードにドラマという形で息を吹き込みリアルに近づけて再現してくれた部分の数々はとても興味深いです。
特にジローラモ・サボナローラの人間像やメディチ家との関わり様、そして後半の大衆に対してロレンツォを批判する説教する様などがそれまでの文章だけではなかなか想像しにくい様子がドラマとして細部までいきいきと表現されていたのは良かったですし、ナポリでのイッポーリタとの駆け引きやナポリ王と和平条約を結ぶまでの立ち合いがフィクションならではで結構ドキドキしながら見ることが出来ました。
なので、メディチ家に好意を持っている方にも「ドラマ メディチ シーズン3」の鑑賞をお勧めできます。
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最後に・・・
このメディチ家のドラマは2016年の秋にシーズン1が出て、イタリアでもそれなりに好評な結果におわりました。
イタリア人達が「外国人(またはハリウッド系)が作るイタリアの歴史ドラマはほとんど期待できないのよね。うふふ」と笑う人が多い中、イタリア人にもまあまあの評価を得たこのフィクションドラマでしたが
その後2018年の秋にはシーズン2がでて、ロレンツォ・デ・メディチの輝かしい青年期や今も昔もセンセーショナルなパッツィ家の陰謀事件が鮮やかにドラマ化されたことに私自身一種の感動をおぼえました。
翌年の2019年の冬にはシーズン3がでるとのことで、期待と共に視聴をしていると、途中からストーリーがあからさまにロレンツォを口先だけがたつ権力と名声と金にとらわれた頭の悪い悪人へと変貌させられていくのを見て、かなり不快感を覚えながらドラマのラストを迎えました。
私が何故、2020年になってメディチ家のドラマについて書いたかというと
俳優・背景・コスチューム・演出がなかなか出来もよく素敵だなあ、と思ったことも沢山あり、このドラマを見ることによってメディチ家やイタリアの歴史を日本人の方に少しでも分りやすく知ってもらえたら、と思ったことと
そして、もう一つの大きな理由には「ここまでメディチ家について誤解が生まれやすい酷い作話」について、きちんとフィクションであるという事を強調しておきたかったというのがあります。シーズン2までのフィクション的要素はまだ許容範囲内でしたが、シーズン3の4話以降はどうしてもおかしい、何故ここまでひどいのだろう、これはきちんと説明しないと誤解する人が多くなるだろう、と危惧したことからでした。
しかし、ネットのオンデマンド形式で辞書を片手にドラマをシーズン1からじっくりみてみると、やはりシーズン1と2でも、聞き流しながら何となくドラマをみているのとそうじゃないのとは、違うメッセージも見えてくることが分かり、このシリーズ全体でコジモやロレンツォに対する悪印象を少しずつ付けたいのかな?これからも、たびたびルネッサンス時代のドラマを作られるたび、メディチ家はゆくゆくはボルジャのようなイメージに変わって、いつかはそれが定着してしまうのではないか?と思い、
その為、2020年1月にメディチ家ドラマについて書いた初めての記事から、ドラマ「メディチ」はフィクションである、という事を何回も強調して書きましたし、シーズン2においてはロレンツォとジュリアーノ兄弟それぞれ結婚外の恋愛話についても、実際にあったかどうかはわからないという事を強調して書きました。そういった話は本来ならば大して重要ではない、あっても特別悪だという風にも思わないと自覚しておりますが、ドラマの制作者の根本的な目的(メディチ家をボルジア化したい意図)を覆すために私のブログを通して、日本の皆さんに理解してもらえたらいいな、と思った次第です。
この記事を読んだ皆様が メディチ ドラマを見たいと思ってくださったら幸いです。そして、その際には是非私が皆さんにお伝えしたかったことを思い出しながらフィクションとして、ドラマを楽しんでいただけたら幸いです。
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それではまた( `ー´)/ 続きはこちら
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