朝。

朝は好きだ。
空気が澄んでいるし、目が覚めたばかりの世界はおろしたてのシーツのような無垢な美しさがある。

ただ、僕自身朝起きるのは苦手であるし、特に冬は寒いし眠いのでその美しさに触れる機会は少ない。たぶん朝の方から嫌われているのだろう。
かといって夜から好かれているとも思えないが。

 僕はルナさんの車に相乗りする形でグンマに向かった。

車内には運転するルナさん、でぇやまさん、そして僕の3人の卓人がいた。

待ち合わせは東京の新宿だった。

僕らはTwitterやグループLINEではよくやりとりする仲ではあるが、こうして直に会う機会はなかなか無いので、話が尽きることは無かった。

ただ、今にして思えば、卓球などといった話題には一切触れなかったし、その殆どが小学生レベルの稚拙な内容だったと思う。

ふたりとも僕より年上ではあったが、僕はふたりのレベルに合わせるのにひとり疲弊していた。

明日は大切な試合だというのに。

試合は群馬の新体連が主催するペアマッチで、僕はミヤケン氏と共に合計年齢60歳以上の部にエントリーしていた。
前日入りする形で向かったのである。

チーム名は"コロキャン'sパイナポー"。

元は"ドス恋パイナポー"を提案したのだが、ミヤケン氏に却下されたためこうなってしまった。

彼のネーミングセンスを疑わざるを得ないが、ペアマッチである以上合わせる他無かった。

 
10時過ぎ、とあるSAにて早めの昼食を取ることにした。

  



豚バラわさび丼である。


明日はこの豚バラわさび丼が血となり肉となり共に試合で戦う。

「いただきマンモス。」

と畜された命と育んだ大地に祈りを捧げた。

いつからだろう。
いただきマンモスと言うようになったのは。

 

もう遠い昔のような気がした。

ここ数年は"いただき"を省略して“マンモス”としか言わないことの方が多い。

 かつてのマンモスは人類の祖先であるホモサピエンスによって絶滅の運命を辿ったわけだが、その血肉を食らい繋いだ命のリレーは数万年の時を経た今もなお続いている。
―僕自身のバトンは途絶えそうではあるが、それについてはここでは無視する。―

マンモスは絶滅してしまったが、この豚は肉を裂かれ熱々ごはんの上に並べられてはいても絶滅とは程遠い位置にいる。

その命を奪う行為が狩りからと畜という言葉に変わったように、人間は未だ欠陥だらけの種ではあるものの、そういう意味では幾分か進歩しているといえる。

 


 昼。

 群馬勤労福祉センターに到着した。



13時から17時までここで最終調整をするためだ。

勤労福祉センター(及び会館)といえば、“きんぷく”と称され渋谷きんぷくや目黒きんぷくで卓球をすることが出来るのだが、群馬にもきんぷくは存在した。

おそらくこの3つのきんぷくで練習した人間は世界で僕だけだろう。

そして、ここで今回のグンマ戦メンバーが集結したのである。

今大会の案内や申込をしてくれたカズポ氏、今回初めてお会いするぽちの氏、僕のペアであるミヤケン氏、そして明日の試合で僕と死闘を繰り広げることとなるおのぽん氏とそのペアのチャラ泉氏。

13時から17時までがっつりと練習をした僕らは源氏という和食レストランにLLGをした。

―LLGとはLet’s la goの略語であるが、今思いついたのでその時はこんな言葉は使わなかったし、これからも使うことは無いと思う。―


そこでしばらくぶりに合うメンバーと談笑しつつ初めてお会いしたぽちのさんとも親交を深めた。


夜。

食事を済ませたあと、僕は何人かとカラオケボックスにいた。
そこには群馬が誇る伝説のリア充ナカムラさんもいた。

皆思い思いのモテ歌を披露していたと思う。

僕はこういった空気というものが苦手な部類であったが、かといって冷めるような態度をとるわけにもいかず、数曲だけ歌い彼らと距離をあけてやり過ごす他無かった。

彼らのサビを歌い切ったあとのドヤ顔を忘れるにはまだ時間がかかりそうだ。


翌朝。

僕は寝坊した。

 
―続く―