記憶力のないABO FAN氏 | ほたるいかの書きつけ

記憶力のないABO FAN氏

 忙しいのだけどあまりにアレなのでざっとエントリ上げとく。
 私のところのコメント欄で ABO FAN氏が挙げた文献は以下である。記号の意味として氏が書いた部分も含め、まとめて引用しておく(このコメント 以降)。タイポは修正しといた。大量にあるので先に何をするかを言っておくと、★のついた文献(「データの差があったとしている文献」)の内実を見ていこうということである。無論、全部ではない。急に出されて読めるかっつの。それと、印のついていない文献も、リストということで出しておく。○印の文献について触れないのは、「データの差はないとしているが、実際には差が出ている」などというアホなごたくに付き合う義理はないからである。
★データの差があったとしている文献 →6件
○データの差はないとしているが、実際には差が出ていると思われる文献 →4件
×データの差がないとしている文献 →2件

【日本心理学会大会発表論文集】
■2006年
○血液型ステレオタイプに関する研究 野上 康子((株)教育測定研究所)
○血液型ステレオタイプの検討(3) 高橋 優(埼玉工業大学)井出野 尚(早稲田大学)   
■2007年
×血液型ステレオタイプの検討(4) 高橋 優(埼玉工業大学)井出野 尚(早稲田大学)   
■2009年
★自分の性格の評価に血液型ステレオタイプが与える影響 工藤 恵理子(東京女子大学)

【日本社会心理学会大会発表論文集】
■2006年
★血液型性格項目の自己認知に及ぼすTV番組視聴の影響 山岡 重行(聖徳大学人文学部)
■2007年
★潜在的な血液型ステレオタイプ信念と自己情報処理 久保田健市(名古屋市立大学)

【日本教育心理学会大会発表論文集】
■2008年
○女子学生へのアンケートと幼児の線引き行動からみた血液型と性格の関係 小林 小夜子 長崎女子短期大学

【その他】
■2005年
○『「心理テスト」はウソでした。』 村上 宣寛(富山大学教育学部教授)
■2009年
★『心理学ワールド』(No.46 2009年7月号)[巻頭随筆 ことばの森] 免疫学からみた血液型と性格
 藤田紘一郎(東京医科歯科大学名誉教授)

【海外の論文】
■2005年
×Personality and Individual Differences 38 (2005) 797?808
Blood type and the five factors of personality in Asia
 Kunher Wu, Kristian D. Lindsted, Jerry W. Lee
■2007年
★Physica A: Statistical and Theoretical Physics Volume 373, 1 January 2007, Pages 533-540
Blood-type distribution
 Beom Jun Kim, Dong Myeong Lee, Sung Hun Lee and Wan-Suk Gim
★韓国心理会誌:社会及び性格
Korean Journal of Social and Personality Psychology 2007, Vol. 21, No. 3, 27?55
血液型類型学研究に対する概観:
 社会文化的,行動科学的及び生化学的観点で
A Review of Sociocultural, Behavioral, Biochemical Analyses on ABO Blood-Groups Typology
 孫栄宇[教授],劉聖益[研究員]
 Sung Il Ryu , Young Woo Sohn

血液型ステレオタイプの検討(3):クラスター分析による血液型イメージの検討
日本心理学会大会発表論文集(2006年)
    埼玉工業大学 高橋 優
    早稲田大学  井出野 尚

日本応用心理学会大会発表論文集
公開シンポジウムI 『血液型性格判断、ホントかウソか』
 藤田主一(日本体育大学)大村政男(日本大学)荒木英幸(福島民報社)
 →福島民報(2005.9.4朝刊)によれば、血液型と性格が関係しているとのこと[未確認情報]。
ここで、★のついている文献をもう一度まとめておく。便宜上、番号をふっておくことにする。

(1)★自分の性格の評価に血液型ステレオタイプが与える影響 工藤 恵理子(東京女子大学)
(2)★血液型性格項目の自己認知に及ぼすTV番組視聴の影響 山岡 重行(聖徳大学人文学部)
(3)★潜在的な血液型ステレオタイプ信念と自己情報処理 久保田健市(名古屋市立大学)
(4)★『心理学ワールド』(No.46 2009年7月号)[巻頭随筆 ことばの森] 免疫学からみた血液型と性格
 藤田紘一郎(東京医科歯科大学名誉教授)
(5)★Physica A: Statistical and Theoretical Physics Volume 373, 1 January 2007, Pages 533-540
Blood-type distribution
 Beom Jun Kim, Dong Myeong Lee, Sung Hun Lee and Wan-Suk Gim
(6)★韓国心理会誌:社会及び性格
Korean Journal of Social and Personality Psychology 2007, Vol. 21, No. 3, 27?55
血液型類型学研究に対する概観:
 社会文化的,行動科学的及び生化学的観点で
A Review of Sociocultural, Behavioral, Biochemical Analyses on ABO Blood-Groups Typology
 孫栄宇[教授],劉聖益[研究員]
 Sung Il Ryu , Young Woo Sohn

さて、このうちいくつかは、既にネット上できちんと批判されている。順番が入れ替わるが、リンクをはっておく。

(6)について:
まったくカスなRyu and Sohn[2007] (「忘却からの帰還」)
「a meta-analytic method」を使って(カッコ付きであることに注意)、過去の文献を調べて血液型と性格の関係を調べた、というもの。使用されているデータの中には Furukawa (1927, 1930)なんてものもあるが、これはもちろん戦前の古川竹二の論文である。D'Adamo (2001)なんてのも使われている。要するに、無意味な論文。
 この件については、既にこのブログのコメント欄で、直接 ABO FAN氏には伝えてある。ここ(#4)のABO FAN氏のコメント 、及びそのすぐ後の私のコメント(#6)を参照のこと。
 というわけで、憶えているのか忘れたフリをしているのかわからないが、この問題については決着ずみ。なお、さらに少し後のコメント(#10)では、「孫さんの論文が正しいかどうかは関係ないのです。」などと言っているので、たぶん自分が何を言っているのかも理解していないのであろう。

(2)について:
こちらのエントリ を参照のこと。この論文自体は、ここからPDFを取得できる 。山岡さん御自身は、テレビでも血液型性格判断の危険性を強く訴えておられた。その趣旨を歪め、まるで血液型性格判断肯定派の一員であるかのように描き出すABO FAN氏のやり口は、端的に言って卑怯であると言わざるを得ない。
 なお、この論文の最後のところは、以下のように述べられている。
ある印象を与えるために編集した映像と一方的なナレーションなどで血液型性格を確定された事実のように放送すること自体が血液型による差別を生み出していることをマスメディア、特にTV局は強く自覚するべきである。
ABO FAN氏が読まなければならないのはここである。
 さらに補足すると、山岡さんと同じ番組に出演された中西大輔氏が御自身のブログできちんと述べている(「たけしのニッポンのミカタ! 「占い」なしでは生きられない! 」Garbage Articles)。これもABO FAN氏は把握しているはずである。

(4)について:
藤田紘一郎氏はもはやトンデモ認定されているので、この人が何を言っても無意味である。私自身は『心理学ワールド』は未読であるが、上に続いてやはり中西大輔氏がブログで批判しておられる(「『心理学ワールド』46巻 」Garbage Articles)。中西氏は、「一見もっともらしいが、トンデモだ。」「問題は、こんないい加減な主張を日本心理学会が出版している雑誌が堂々と2ページも割いて (何の注釈も断りもなく)、紹介しているという点だ。」と述べておられる。孫引きで眺める限りではあるが、まるで竹内久美子のようなトンデモ主張であるという印象だ。
 ついでに藤田氏と血液型性格判断について、いくつかリンクをはっておこう。
パラサイト式血液型診断~藤田紘一郎がトンデモさんリスト入り? (NATROMの日記)
血液型と食べ物の相性 (NATROMの日記)
カイチュウ博士こと藤田紘一郎センセが、水商売だけでなく血液型健康商売に手を広げたようだ (幻影随想)

(5)について:
これについては奥村さんが分析しておられる(B型の彼氏 )。論文自体はこちら 。未読なので、これ以上のコメントは控えておく。

(3)について:
これはABO FAN氏の期待する文脈とはまったく異なる話。ここから論文を取得できる

(1)について:
これはよくわからない。アブストだけは見られる
血液型ステレオタイプが自己評価に与える影響について、血液型ステレオタイプのプライミングおよび、血液型信念の効果を検討した。全体として、血液型ステレオタイプに合致するような自己評価が認められたが、プライムの効果は認められなかった。
「知識汚染」の効果がどれだけあるか、っちゅー話としか思えないのだが。

というわけで、以上、ざっと見てきたが、全然ABO FAN氏の主張を補強するものになっていない。もちろん何度もこのブログでは書いてきたが、血液型ステレオタイプの蔓延によって、性格が、あるいは性格の自己評定が歪み、血液型と性格に相関が見られることは可能性として十分ある(そして、それを示す研究結果もある)。が、知識の「汚染」なしに、血液型と性格の間にもともと相関があるのだということを主張する論文はないのである(無論、マトモな論文では、ということだが)。

また、上でも述べたが、幾つかについては既にABO FAN氏に対して反論しており、それに対してはABO FAN氏は話をずらすだけで正面からの再反論はしていない。ABO FAN流に言えば、「回答拒否」ということだろうか?まあそれはともかく、何度も同じ手間を取らせないでほしい。こっちだって忙しいんだし。

ABO FAN氏は記憶力が極端に低いのか、都合の悪いことは見なかったフリをしているのか。ここでは、ABO FAN氏の名誉のために、記憶力が極端に低いのだ、ということにしておく。なぜなら、わかってて見ないフリをするのは論者としては最低の行為だからである。そこまでは落ちぶれていないだろうという期待を込めて、そういう結論にしておく。

最後にどうでもいいことを一つ。大村さんの研究を持ち出す時点で「アウト」ですよね、ABO FANさん