『中華人民共和国』シリーズ二部作の第2弾。

 

13.95億人という世界第1位の人口を誇る「中華人民共和国」(以下、「中国」)とは、どんな国なのか?

 

なぜ中国は「世界の工場」と言われるまでに成長していったのか?

 

そこんところのカネの流れを追っていきます。

【中国】は本当に反日国家なのか?

https://ameblo.jp/firebird-1090/entry-12562254250.html

 

香港と台湾については、コチラのMYブログへ。

【香港】とはどんな地域か?

https://ameblo.jp/firebird-1090/entry-12480929389.html

【台湾】中華民国は本当に親日なのか?

https://ameblo.jp/firebird-1090/entry-12565593113.html

 

 

 

●中国とアメリカとの貿易

 

中国の急成長を語る上で、アメリカとの貿易を外す事はできないだろう。

・外務省(2019.07.xx)

米国経済と日米経済関係

・経済産業省

各国経済動向とリスク要因

 

アメリカの対中国の貿易赤字額に注目すると、

・2002年より増え始める。

・2006年に2000億米ドルを超える。

・2018年には4192億米ドルに達した。(貿易赤字全体の47.7%)

 

ブッシュ政権からオバマ政権時のアメリカが中国から輸入しまくった事がよくわかるデータである。しかし、アメリカから中国への輸出は少なく、輸入と輸出にこれだけ差が広がれば、貿易収支は不均衡になるに決まっている。

 

・アメリカの輸出、輸入、貿易収支

 

では、なぜ中国はアメリカにこんなにも多く輸出するようになったのか?輸出できるようになったのか?

 

それは、中国とアメリカの為替制度の違いにあった。

 

 

●人民元の為替相場制度

 

中国では、中国人民銀行(中国の中央銀行)が為替管理をしている。人民元は、その時代時代によって為替相場制度が改革されてきた歴史がある。

 

・1949年~1971年……固定相場制

・1972年~1980年……通貨バスケット制

・1981年~1994年1月……二重為替相場制

・1994年1月~1997年6月30日……市場の需給関係に基づく管理された変動為替相場制(管理相場制)

 →実質的なドルペッグ制で、「1ドル=8.7元」で固定。

・1997年7月1日~2005年7月20日……固定相場制

 →アジア通貨危機の影響によるもので、実質的に「1ドル≒8.2765元」(1元=0.1208ドル)で固定。

 
・2005年7月21日以降……市場の需給関係に基づき、"通貨バスケットを参考とする"管理された変動為替相場制(管理相場制)

 →「1ドル=8.11元」(1元=0.1233ドル)に。約2%の切り上げ。

 →2008年9月15日のリーマンショック以降、2010年6月18日までの間は「1ドル=6.83元」(1元=0.14ドル)で固定だった。(ドルペッグ制に回帰)

・独立行政法人経済産業研究所

人民元問題を巡る米中の攻防 -急がれる「完全変動相場制」への移行-

・HUNADE

中国の人民元 切り上げの意味 貿易への影響は?

 

貿易を行う時、

(a)輸出する…通貨レートの低い・安い・弱い国が有利

(b)輸入する…通貨レートの高い・強い国が有利

 

ゆえに、以下のようになる。

 

(A)中国が貿易相手国へ輸出する場合は、人民元の切り下げが有利

 

△人民元の切り上げ

 →中国での商品価格が上がり、輸送費も高くなる。

 →貿易相手は、中国からの輸入価格が高くなり、販売価格も高くなってしまう。

 →中国は、輸出を促進できない。

 

▽人民元の切り下げ

 →中国での商品価格が下がり、輸送費も安くなる。

 →貿易相手は、中国からの輸入価格が安くなり、販売価格も安くできる。

 →中国は、輸出を促進できる。

 

 

(B)中国が貿易相手国から輸入する場合は、人民元の切り上げが有利

 

△人民元の切り上げ

 →貿易相手国での商品価格が下がり、輸送費も安くなる。

 →中国は、貿易相手国からの輸入価格が安くなり、販売価格も安くできる。

 →中国は、自国での価格競争を優位に行える。

 

▽人民元の切り下げ

 →貿易相手国での商品価格が上がり、輸送費も高くなる。

 →中国は、貿易相手国からの輸入価格が高くなり、販売価格も高くなってしまう。

 →中国は、自国での価格競争を優位に行えない。

 

 

かつて貿易世界で弱小だった中国は「人民元"安"」だったわけだが、金融勢力の介入もあってメキメキと経済的実力を付けてGDPを上げてきた。だが、経済的実力が上がってからも「人民元"安"」は固定のままにされ続けた。

 

中国(中国人民銀行)は「管理相場制」。

基軸通貨国でもあるアメリカ(連邦準備銀行)は「変動相場制」。

 

そんな中で、ブッシュ政権やオバマ政権の下、米中の間で「人民元"安"」の固定化が容認されてきた事実がある。

 

人民元が安く固定されている間は、中国側は輸出を促進できる。

しかし、外国製商品は価格の影響により中国市場に入り辛い状況になってしまった。

 

気が付けば、米中の貿易はほぼ一方通行となり、米ドルに対して人民元は最大40%も割安になっていた。そのために中国に対して追加関税を課すべきといった声も挙がったほどだ。

 

この事は、トランプも2012年6月13日のツイッターで言及しており、2016年の大統領選挙期間中にも貿易不均衡問題を取り上げていた。

 
中国の通貨操作は、我が国の最大の主権の脅威の一つだ。
2005年以降、人民元はドルに対して40%上昇している。
 
 
●米中貿易戦争の正体
 
そして、2017年1月20日にトランプが大統領に就任すると、2018年7月6日に中国に対して追加関税措置に踏み切った。
 
これをマスコミは「米中貿易戦争」と煽り立て、いかにもアメリカ(トランプ)と中国(習近平)の仲が悪いように仕立て上げたわけだが、その実態は全くの逆である。
 
「米中貿易戦争」の実態は、貿易不均衡を是正してアメリカ国民の仕事を取り戻すというそれだけの話である。その事は、中国金融腐敗を取り締まりたい習近平も実はわかっている事なのではないか。
 
仲悪そうにしているのはあくまでも"プロレス"であり、決して、トランプ(アメリカ)と習近平(中国)の仲が悪いわけではなかろう。残念ながら、反トランプや反中バカの思い通りにはならないだろう。
 
2018年11月12日のツイッターでも言及している。「貿易を公正かつ自由なものにする時だ」と。
 
あくまでも公正なルールを作り、フェアにやりたいだけであろう。これが2020年1月15日の「米中経済貿易協定」の署名へと繋がっていくのである。
・JETRO(2020.01.16)

 

 

●ドル建て名目GDPの推移

 

2005年頃までは5~10位辺りを行き来していたが、2006年頃から急に伸び始め、2010年には一気に2位に躍り出た。(米ドルベース)

 

その頃のアメリカで何が起こったかがポイントだ。

 ・リーマンショック(2008年9月15日)

 ・オバマが大統領に就任(2009年1月20日)

 ・ボルカールールの施行(2010年7月21日)

 

GDPの推移のグラフは「ガベージニュース」さんから拝借。通貨単位に注意。

・ガベージニュース(2019.01.02)

日本は1990年代からデフレへ…日米中のGDP推移を詳しく見ていく(最新)

 

また、1960年から2017年までのドル建て名目GDPの動きを表したランキングの動画を見てもわかりやすいと思われ。

・Youtube動画

Top 10 Country GDP Ranking History (1960-2017)

 
 
●中国は「世界の工場」となったが、中国国民は奴隷のまま…
 
いつしか中国は「世界の工場」と言われるようになり、中国市場に投資してきた連中はボロ儲けできたのである。
 
アメリカはもちろん、日本でも「MADE IN CHINA」が溢れ返り、アメリカ国民や日本国民の仕事は、中国市場に奪われる形となってしまった。
 
一方で、一生懸命に働く中国国民の生活が潤ったかと言えばそうとは言えず、まるで奴隷のようにコキ使われた。どれだけ働いても給料は安く、せっかく稼いだ利益は価格変動によって金融屋に吸い上げられるという構造ができていた。
 
そんな中国の急成長の背景には、米中の市場に巣食う金融勢力による戦略があった。
 
 
その事に関しては、次回に続く。(たぶん)