長々と書いてきたこの項も最後。
実はこの「間違いだらけの中小企業経営」は、ある意図を持って書き始めました。
それはモデルとなったこの食品卸会社の経営者に、「何が間違っているのか」を冷静に理解していただくため、時系列的に事実の整理をしたかった、ということです。
文中にも書きましたとおり、この会社の社長は普段無口なくせに「出来ない理由」とか「駄目な理由」「上手く行かないことに対する責任転嫁」とかの話しをし始めると、なぜか理路整然とした話しでまとめるのが天才的に上手くなるのです。
しかし、その中味は対症療法のみで且つ自身に都合の良いよう事実を捻じ曲げていたり、主観を客観のように偽った手法を駆使していますから、丁寧に紐解けば誰もが「おかしい」ということに気づきます。しかし、その「おかしな」理論に一番納得してしまうのが、実は社長本人なんです。
ご本人がその矛盾に気づかず、他者の意見を跳ね除けて「私の主張は正しい」と言い続けていますと、物事はどこまで行っても解決しません。
私はコンサルとして社長のおかしな論理を聞くたびに逐次論破してはいましたが、そのやり方では社長本人には「言い負かされた」という怨念だけが残り、何の解決にもつながっていないことに気づきました。
論争ならばそれで良いのでしょうが、私の目的は「経営者に気づきを与え、良い方向へ変えていく」ことですから、社長に納得してもらわねばなりません。
そこで、この項でもう一度事実の整理を図ったと言うことです。
しかし、残念ながら現実はこのブログの進行よりも早く社長の暴走が飛躍してしまい、悪化の一途をたどりました。
いつからか、「社長」と「夫人を始めとした従業員」の心は急速に離れ、社長は一人ぼっちで経営は荒れ続けています。最早私の言うことに耳を傾けないばかりか、会う事すら避ける始末です。
そのような状況になりつつあった中、本項を同時進行で書くことに躊躇も覚えました。中味は何やら見方によっては社長の悪口オンパレードになってますし、そのようなことをコンサルとして記すのは倫理観に反するのではないかとも考えました。
しかし、私は間違っていることが明白な経営者におもねってゴマをするようなタイプではなく、「駄目なものは駄目」と言い切ることに存在意義があるタイプのコンサルです。そこに賛否両論がありますが、少なくともこのモデル企業の社長以外の従業員さんは皆その姿勢を買ってくださっています。
ということで、躊躇中の長い中断を挟みながら、一応事実は事実として記しきろうと決めました。
改めて社長にも直接読ませたい、そんな思いすらあります。
しかし間違いの最たるもの、即ち「人を信じない」状況にある今の社長には、この文章は残念ながら逆効果にこそなれ真に私の想いを伝えることにはならないでしょう。
人間誰しも間違いはあります。「確信して」間違わないように動いたつもりでも、やはり間違いは起こります。だから本当に大事なことは、間違いを間違いと素直に理解する能力、自身の間違いを素直に認め正しい道に方向転換する能力だと思います。これこそが、中小企業のみならず企業経営に携わる者全てに共通する必須の要素だと私は考えます。
この項の最後に、本田宗一郎さんの話しを。直情型で、自分の意見に逆らう者には鉄拳を振るうことすら辞さないタイプだった若き日の宗一郎氏。でも彼ほど又自身の間違いにすぐに気づき、それを率直に認め素直に謝れる人もいなかったといいます。彼の「力いっぱい人間を愛せよ」という教訓は、どんなに間違っても最後は人間同士カバーは可能と言う力を与えてくれる言葉です。私は、悩みの迷路に入り込んでしまったこのモデル企業の社長にも、やはりまだ可能性を信じているからこそこの項をまとめました。決して起こした「間違い」を攻めるつもりではありません。彼の人間性を愛しているからです。彼もまたその「人を信じ、人間を愛することの正しさ」を思い出していただきたい、ただそれだけで物事はがらりと変わると信じています。
(おしまい)