プリンシパル/エージェンシー理論から見た村上ファンド | アツキココロ

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広島県在住の経営コンサルタント・児玉学の熱血ブログ。

最近世間を賑わす、「村上ファンド」。


ニッポン放送買収騒動の件でも、引鉄は確か村上ファンド。今度は阪神電鉄の筆頭株主に踊り出て、阪神球団の株式上場を目指すとか何とか・・・。


その動きには賛否両論ありますが、プリンシパル=エージェンシー理論的に見た場合、ある深刻な考えが浮かび上がります。


村上氏が操るおカネは村上氏「個人のもの」じゃなく、あくまで投資家から「預っているもの」です。確かに預っていようが借りていようが、表向きは村上氏の自由になる。で、そのおカネを持っている村上氏のミッション(果たすべき役割)は「預ったお金の極大化」です。この場合、プリンシパルは「投資家」でエージェントが「村上氏」です。


一方、阪神電鉄株を購入した村上ファンドは株主になったわけですから、企業経営上「プリンシパル」となり、阪神電鉄の経営陣はその負託を受けた「エージェント」になります。(ここが株主=経営者となる中小企業とは違うところ。)そして彼らは「企業価値の最大化」という目的において、本来利害が一致する関係にあるはずです。しかし、今のところ両者の意見は真っ向から対立しています。


ここで重要なのは「企業価値の向上とは何か」、という基本的な価値観の違いです。


一昨日の日経新聞社説にはこう書いてありました。「受益者の利益だけを考える投資ファンドと、株主以外の顧客・債権者・従業員の利害関係者にも責任を負う経営者とでは『時間軸』が異なる」。

すなわち、企業が数十年かけて稼ぐであろうキャッシュフローを現在価値に引き直し、株価を極大化して売り抜ければ終わる、という投資ファンドでは、企業価値を上げる時間軸は「短ければ短いほど良い」。

一方の経営者は、過去の蓄積・現在のステークホルダーとの関係・将来への布石、すべてのバランスをとりながら企業価値を上げる必要があるため、「今さえ良ければいい」という時間軸感覚は持ちません。それを見誤ると、日本のカネボウや米国のエンロンのような事件を起こす羽目になるのです。ですから、「未来を展望した中長期の時間軸」を持つ必要性がより高まっているのです。


プリンシパルとエージェントが価値観を共有しない状態。これでは理論上から見ても、うまくいくはずがありません。

真のプリンシパルたる投資ファンドも実はたくさんあります。これらの投資ファンドは、企業価値の向上を短期の時間軸では見ていません。いわゆる「ハンズオン型」で行くので、時間はかかります。しかし、これがプリンシパル=エージェント理論上は正解。エージェンシーコストはかかりますが、「価値観の共有」という最もベーシックな要素を押えるためには欠かせないコストだと思います。

村上さんも「短期収益」にこだわりすぎると、失敗しますね。王道を行かねば。覇道はやがて破滅を招きます。


そう言えば、ハンズオン・ハンズオフの件でもプリンシパル=エージェンシー理論が重要な示唆を与えてくれていますが、それは又明日にでも。