インフルエンザは一週間あれば治る。
ペストは衛生面を高めたら撲滅ことができる。
結核も早期発見で治療ができるし、感染も防止できる。
しかし、公共の電波に乗って感染し、一定の年齢で自ら感染を望むことさえある病。
それに現代の医学では手の出しようがない。
その名はニート予備軍【中二病】
インフルエンザは一週間あれば治る。
ペストは衛生面を高めたら撲滅ことができる。
結核も早期発見で治療ができるし、感染も防止できる。
しかし、公共の電波に乗って感染し、一定の年齢で自ら感染を望むことさえある病。
それに現代の医学では手の出しようがない。
その名はニート予備軍【中二病】
サフィリアは両腕で自分の肩を抱きしめた。
「寒い……」
小さなつぶやきにこたえる者はいない。
広い塔の中にいるのは、サフィリア一人だ。
サフィリアが着ているローブは、薄手の春の服装である。
冬は終ったのだと、有無を言わさず取り替えられたのだ。
インボルグが春の訪れとはいっても、山を見ればうっすらと雪が残っているところは多い。
暦の上で春とはいえ、たった一日で気候が一変するはずがない。
そして、石造りの塔はおそろしく冷えた。
サフィリアは寝室に向かって歩き出した。
窓一つなく、閉じられた塔の中に緩やかな風が流れ始めている。
太陽が沈んで、さらに気温が下がったからだ。気温の変化が閉じられた塔の中にも風を作り出す。
窓さえない塔の中で、時間を見失うことはよくある。
もとより、【書を守る者】が自由に塔を出て、太陽の光を浴びることはできないのだ。
そんな時、風と気温に感覚を研ぎ澄ますことで、朝と夜に気付くことができる。
同時に、広い塔の中でたった一人である事も気づいてしまう。
一人きりであること。そして、暗闇の深さが怖い。
我に返ることが恐ろしいと思うようになったのはいつからだろうか。
時間を忘れて本や思考に没頭するか、疲れ切って眠ってしまうのが一番いいのに。
足音が余韻を残しながら、響いてゆく。
闇の向こうから後ろから追いかけてくるように聞こえる。
だが、塔の中には誰もいない。当然、自分をおびやかす何者もいないのだ。
サフィリアは気持ちを落ち着けて、足を止めた。
再び、塔の中は静寂に満たされる。
今度は、巨大な影がサフィリアを取り囲むように踊り始めた。
サフィリアは深呼吸して、目を閉じる。
これは恐怖が精神集中を乱し、魔術の光が揺れているからだ。
塔の中には幾重にも結界が張られている。異界の怪物が進入できるはずがない。
すべては、未熟と臆病が見せる幻覚にすぎない。
記憶の塔ほど、安全な場所は世界中のどこにもないのだから。
魔術の明りを消し目を閉じたまま、歩数を数えることだけ集中する。
予想通りに100歩で扉に手が触れた。
瞳を開くのももどかしく、扉を開けるとベッドの中に飛び込んだ。
しかし、毛布も春物に変えられており、全身にまきつけても暖かさはない。
寒さと恐怖で冴えた思考に、眠りは訪れなかった。
「リーザ……」
さびしさに目元が熱くなって、顔を押し付けた枕さえも冷たくなってゆく。
どのくらいの時間をそうやってすごしていたのか、サフィリアは顔を上げた。
そういえば、インボルグに見るようにとリーザから言われていた。
枕元にあった魔術の杖を手繰り寄せ、光をともす。
寝台についてある引き出しから、古びた革表紙の本を取り出した。
表紙には何も書かれておらず、ページをめくっていったがすべて白紙だった。
ただ、裏表紙に クマとキツネとウサギを足したような生き物が描かれていた。間違っても、実在の生き物ではない。
リーザが生き物をかたどる時、たいてい空想さえも絶する謎の生物が誕生することになる。
たぶん、リーザの価値観からすると可愛いに属するのだろう。だが、血走ったようにも見える大きな眼が怖かった。
気味悪さを押し切って、サフィリアは裏表紙の絵に触れた。
ポン、と軽い音がなって本から何かが出てくる。
「キャー!」
サフィリアは、我も忘れて悲鳴を上げた。
本に書かれていたまがまがしい生き物が、サフィリアの倍以上の大きさになっていた。
更に、覆いかぶさるようにこちらに倒れてくるではないか。
杖を落とし、魔術を使うことも忘れ、手足を動かすことさえ忘れていた。
押しつぶされること、更には死を覚悟したが、予想に反してやわらかい感触が触れただけだ。
謎の生物は転がって、ベッドから落ちていった。背中には謎の背びれがついている。
ぬいぐるみである。
サフィリアは安堵のため息をついて、体を起こす。
そして、目の前に広がる光景にサフィリアは目をぱちくりさせた。
厚手の毛布や、羽入りの枕。
毛糸のマフラーや手袋、わた入りの服が並んでいた。
手を伸ばせば確かな感触がある。それ自体が熱を放っているかのように暖かい。
幻覚でなければ、夢でもない。
縮小化の魔術だろうか。
魔術師がローブのすそに、必要な物をすべて収納するときに使われる。
だが、縮小化の魔術ではここまで小さくはできない。
これほど大きなものを薄っぺらい紙に変える方法は、魔術書にも記されていない。
では、召喚(コンジュアレーション)の系統だろうか。
物質転送(アポート)や、異次元の扉(ディメンジョンドア)の魔術なら、同じことが出来るだろう。
しかし、召喚(コンジュアレーション)の系統には大きな結界陣が必要となる。
サフィリア自身も、これが魔術の品だと気づかなかった。
魔力の反応もなければ、魔術の印も描かれていない。
通常の魔術の常識では考えられなかった。
そもそも、記憶の塔へ持ち込まれるあらゆる物品は厳重に調べられる。
リーザはどんな方法を使って、魔術師の目を盗んだのか。
魔術理論の書棚を探しに行こうという意思は、すぐにくじけた。
書を守るものにはふさわしくないと、遠ざけれらた品物の数々が目の前にあるのだ。
サフィリアは服に袖を通し、毛布を頭からかぶった。
新しい枕はやわらかくて、暖かい。
ベッドの上にだけ春が来たようで、リーザに抱きしめられた時のことを思い出す。
次はいつ会えるだろうか、その時はレイザークの話を聞かせてもらおう。
そんなことを考えているうちに、サフィリアは眠りに落ちた。
夢の中では、サフィリアはケーキやたくさんの食べ物に囲まれて、インボルグを祝っていた。
暖かい日差しが差し込み、窓の外にはリンゴの木と、花畑。空と湖はどこが境目かわからないほどに青く広い。
テーブルの反対側には笑顔のリーザと、傷の治ったシーグがいた。
稲光。
なぜ、このように呼ぶのか。
読んで字の通り、稲光は稲の色とそっくりに光るからです。
雷光が稲の中に入り込んで、稲が育つと信じられていたのです。
春に雷が多い季節には、豊作が多いと言い伝えがありました。
「稲妻ひと光で稲が一寸伸びる」
「雷と稲光は稲をよく育てる」
こんな言葉もあるくらいです。
なるほど、雷雲はたくさんの雨を降らせます。
治水技術が今ほど発展していなくて、ダム建設などができなかった時代には定期的な雨は必要だったでしょう。
しかし、これだけではありません。
稲妻は電気を発します。
空気中で電気火花を飛ばすと、N2とO2とが化合して窒素酸化物ができます。
この窒素化合物は、植物の成長に欠かせないものなのでした。
迷信と思えることが、実は科学的裏付けもあったのです。
雷と稲光
差は分かりますか?
ほとんど同じ意味で使われていますが、違いがあります。
雷とは
英語で「サンダー・thunder」
神鳴りなどともいわれますが、主に音のことです。
稲光とは
英語で「ライトニング・lightning」
主に光のことですね。
地震
雷
火事
おやじ
などと、災害の怖さを例えることわざがありますね。
【例】
父親は息子に雷を落とした
The father thundered at his son.
こちらは、サンダー。つまり、音。
なるほど、父親が発光現象を起こすなんて、センセーショナルすぎます。
さて、【稲光】ですが、稲の文字があります。
どうし て、お米が関係するのでしょうか?
次回はそのあたりの話をしましょう
大昔にバビロニアで呪われた実験があったといわれています。
産まれたばかりの赤子を閉じ込めて、外界とのつながりを一切絶つ。
完全に監禁行為なのですが、これには宗教的意味がありました。
バビロニアは世界で、最古ともいわれる文明です。
自分達は選ばれた民であり、自分達の話す言語こそが原初の言葉、魂の言葉と信じていました。
穢れた異文化に触れるから、外国語を話し、異教の神を信仰ようになってしまう。
そんな悲劇がなければ、誰もがバビロニアの言葉を話し、神々を信仰するようになる。
つまり、赤子から一切の情報を遮断すれば、純粋なバビロニア人 が育つ。
結果として、言葉を一切話せない、発達の遅れた子どもが育っただけでした。
外界から隔てた空間。
【聖域】を作り、人を限定することで突出した存在になる。
そのような思考は古今東西、あらゆる文明に存在します。
小説内の舞台、メティスはそういった思考に極端に偏った文明です。
被害者となったのは、サフィリアとシーグです。