ミルドレッド・ピアース&マミー・ディアレスト | Let's talk about...

Let's talk about...

あくまでも個人的な映画論です。ネタバレにご注意ください。




Let's talk about...




1945年、マイケル・カーティス監督





どうみても女装したオカマにしか見えない女優が好きだったりする。

シェールだとか、アンジェリカ・ヒューストン、フェイ・ダナウェイ、ソフィア・ローレン、そしてジョーン・クロフォード・・・今回は私その中でも、私がが敬愛するハリウッドの大女優、ジョーン・クロフォードについて語りたい。

彼女の代表作、ミルドレッド・ピアースは、彼女がデビューした20年代から契約を続けてきたMGMからも43年に切られてしまい、失意のそこにあったところをワーナー社が彼女を助け、45年に製作された作品である。
1945年に製作されたとは思えないほど、新鮮な魅力を持った映画だ。
彼女はこの作品で悲願のアカデミー賞主演女優賞を獲得。名実ともにハリウッドの女王として返り咲くことになった。


筋書きはというと、夫と娘二人を持つ主婦、ごく普通の主婦だったミルドレッドが、夫との離婚を決意し、シングルマザー&ビジネスウーマン(そして再婚も)として成り上がるさまを、ミルドレッドの2番目の夫が殺害されてしまう殺人事件の謎解きと平行して、痛快に描くサスペンス・ドラマである。


この映画のキー・ポイントは、ミルドレッドの娘に対する甘やかし方、とくに美しく才能もある長女への、甘やかし方が度を越えている、ということだと思う。

私自身も一人娘がおり、母になってわかったことがあるのだが、子供は甘やかすときりがない、ということである。子供は無垢で、かわいくて、ましてや目に入れても痛くない我が子なのだから甘やかし、過保護になってしまう気持ちもわかる。特に現代の親は、経済的に余裕がある家が多し、物だけでなく、様々な分野にわたって子供を楽しませる機会が多すぎるのもあり、猫かわいがりする親がとてもとても多い。(特に女の子にいたっては、たくさんのドレス、アクセサリー、子供用の化粧品まで出回っている世の中だし・・)

私も経済的に余裕はあまりないが、娘に対して過保護気味なことが多いので、たまにはっと我に返って思うことがある、かわいい子には旅をさせろ、と・・。このままではどういう大人に育ってしまうのか、と。
子供は甘やかすと限度を知らないので、図に乗ってもっと、もっと、を繰り返す。そこをうまい具合に防止&ストップをかけてあげ、少なくとも、礼儀作法やマナーを教えてやるのが親の役目だと思う。

個人的な子育て論になってしまったが、この親の子供に対する過度な甘やかしは悲劇を生む、ということがこの映画では、うまく描かれている。ミルドレッドの長女、ヴィーダ役のアン・ブライスがとてもうまい。わがまま放題の小憎らしい娘をとてもうまく演じている。彼女もこの役でアカデミー賞助演女優にノミネートされていたが、受賞は逃している。惜しい事だ。


もうひとつ、この作品を対比してみてみると、おもしろいのが、ジョーン・クロフォードの私生活を 彼女の実生活の養女の視点から描いた、マミー・ディアレスト、(邦題:愛と憎しみの伝説)だ。


Let's talk about...

1981年 フランク・ペリー監督

ジョーン・クロフォードの養女として、39年に生まれてまもなくの頃からジョーンに育てられたクリスティーナ・クロフォードは、77年のジョーンの死後の翌年、映画と同名の暴露小説を出版する。クリスティーナのほかにもう一人、養子を迎え、彼らの良き母親として、メディアの前で振舞ってきたクロフォードだが、実は彼女は精神的にも肉体的にも彼らを虐待していた鬼母だったという、実際の物語だ。
クロフォードが、良妻賢母のイメージを世間に広めたいがための養子縁組だった、ということもこの映画ではっきりと描かれている。


小説の方は手元にあるが恐ろしくて未だに読んでいないのだが、映画の方はジョーン・クロフォードの大ファンであった、フェイ・ダナウェイの熱演を越したヒステリー演技が恐ろしすぎる結果になり、この作品の監督やダナウェイもその後、仕事を干されてしまう、という結果になってしまったようだ。

いや、この作品は生半可な気持ちで見るとショックを受ける。特に中盤の、クリスティーナを虐待するシーンが、半端なホラーよりも怖い。子供がこのシーンを見たら怖くて泣き出してしまうだろう。

この映画は、大失敗のものとなるのだが、このダナウェイのオカマにしか見えないクロフォードの姿や、熱演を通り越した鬼婆のような演技が、ゲイやオカマたちにうけて受け継がれ、今では割と有名な作品になった。

しかしこの映画は、クロフォードのファンとしてはかなりショッキングな内容だったにもかかわらず、彼女の女優としての生活がどのようであったかも、よく描かれていて、その辺を垣間見れるのはほっとするのである。とはいえ、女優としても彼女は気位がものすごく強かったのだが。

母親としては大失格だったクロフォードだが、女優としてはハリウッド黄金期の女王としていつまでも生き残って欲しい。