めまい | Let's talk about...

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あくまでも個人的な映画論です。ネタバレにご注意ください。


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1958年、アルフレッド・ヒッチコック監督




ヒッチコック監督の映画は、15,6歳の頃から見始めたが、何せあまり人生の何たるかもわかっていない頃なので、無駄だったと思う。映画の知識が培われた、ということでは、若い頃から色々見てきて良かったな、と思うのだが、内容などはまるでわかっちゃいなかった・・・と今になって気づかされる作品が多い。


その中のひとつが、ヒッチコックのめまい、だ。
15のときに初めてみたときは、まったくよさがわからなかった。裏窓やサイコなどは、当時でも十分理解できたし、楽しめたと思うのだが、いかんせん、この映画はテーマが大人すぎた。
ヒロイン、キム・ノヴァクの美しさと、こちらを不安にさせるようなまなざしのエロティシズムなどは、大人になってからようやく理解できるようになった。ヒッチコックは、この作品で彼女の魅力のすべてを引き出した、と言っても過言ではないと思う。めまいはキム・ノヴァクの映画だろう。



自他共に認める世界一のヒッチコック・オタクだったフランソワ・トリュフォー監督が、ヒッチコック自身に彼の映画人生すべてを肉薄したインタビューで語らせたものをまとめた、定本 ヒッチコック 映画術 トリュフォー (山田宏一 蓮實 重彦 訳)が手元にあるが、めまいの箇所を読んでみると、この映画が、ただのサスペンス映画ではない、病的なエロスとフェティッシュに満ち満ちた映画、というのがとてもよくわかってくる。

もともと極度の高所恐怖症持ちの元警察官という設定の主人公で、マデリンという謎の女を尾行するという依頼を友人から受けたのをきっかけに、彼の高所恐怖症を軸にしながら、物語はサスペンスとエロスの狭間を彷徨う、というヒッチコックの最高傑作のひとつだ。全編に漂う不安定で緩やかなリズムと対比する、畳み掛けるようなラストが素晴らしい。

(蛇足かもしれないが、この映画と同じくサンフランシスコが舞台のエロティック・スリラー、氷の微笑、とこの映画を比べてしまうと、氷の微笑がなんとも安っぽく、プラスチックで下品な映画と思わされてならない・・。)




主人公のジェームス・スチュアートは、素晴らしき哉人生や、スミス都へ行く、などの20世紀のアメリカの良心のようなものを描かせた映画の主人公がはまり役だったが、ヒッチコック作品によって新しい演技の幅をひろげたのだろうと思う。何せめまいは、一人の女に気が狂ってしまうほどマニアック(偏執的)に恋してしまうフェチ男の話なのだから。


ソール・バスがデザインした幾何学的なタイトルバックも素晴らしい。







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撮影中のヒッチコックとキム・ノヴァク

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イーディス・ヘッド女史が手がけた衣装も、ヒッチコックのリクエストに完璧にあわせて造られたものだそう。

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