最後の晩餐  | Let's talk about...

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あくまでも個人的な映画論です。ネタバレにご注意ください。


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1973年、マルコ・フェレーリ監督

この映画については、以前別ブログ、The Vintage Purple でほんの少しだけ、書かせていただきましたが、今回はもっと斬りこんでいきたいと思います。


この映画を見たいと思うようになったきっかけは、長年の愛読書、アラーキーの亡き妻、荒木陽子さんのエッセイ集、愛情生活に収録されている、”長篇旅日記 アワビステーキへの道”というエッセイの中で、この映画について語っている箇所があり、この映画がかなり気になってしまったのだった。

以下、愛情生活 ”長篇旅日記 アワビステーキへの道” から抜粋 (映画のネタバレに注意)

あの最後の晩餐という映画は壮絶であった。男友達三人が、食って食って食いまくって死んでいく話なのだが、最初にマストロヤンニが自動車の中で死に、次に、空気嚥下症のミシェル・ピッコリがブーブーおならをし続け、膨大な量のウンチを垂れ流しながら死んでいき、最後にフィリップ・ノワレも、ピンク色のオッパイ型のババロアをてにして死んでいくのである。それまでに三人は様々な肉、魚、野菜、チーズを貪り続けるのである。あの映画を私は三度も見てしまった。食欲と排泄とセックスと死が、渾然一体となってエロスという腐肉の匂い漂わせていたあの画面に、私は魅了されてしまったのである。


さすが、アラーキーの妻なだけあって、陽子さんも只者ではないのだった・・・。


この映画を思い出すだけで、胃腸のあまり強くない私は吐き気を覚えてしまうのだが、今度また、体の調子がよく、適度に空腹なときに再見したいと思う。このようなえげつない映画なのに、もう一度見たいと思わせてしまう魔力がある映画かもしれない。


まず、当時のフランスの人気俳優たち、ミシェル・ピコリ、フィリップ・ノワレに加えて、イタリアが誇る大スター、マルチェロ・マストロヤンニが、かなり真剣にこのようなえげつない内容の映画で演技をしているのだから、なんと贅沢なことよ・・と私は思ってしまう。現在の日本の状況で言ったら、佐藤浩市、阿部寛(ピコリとノワレに比べたら彼らは美男過ぎるが、人気度を比較した場合、ということです)と、金城武か、ぺ・ヨンジュンがこのような映画にでている、といった感じか。



そして、忘れてはならないのが、これまたイタリアのスター、ウーゴ・トニャッツイというおじさんが、シェフの役で出ており、上記の三人に加わり、食べて食べて食べまくって、最後には最も下品な死に方をする。



紅一点の年増女、アンドレア・フェレオルは、たぷたぷとした体型がなんとも退廃的でいやらしい。これでこの役を演じたのが、ブリジット・バルドーやミレーユ・ダルクのような、細身で美しく、はつらつとした女性だったらこの映画はぶち壊しになっていただろう。あの彼女のたぷたぷとした脂肪と、いやらしく美しくない顔つきが、この映画のデカダンスを極めているのだとおもう。
ちなみに、この男たちがいる館に、娼婦たちも招かれるのだが、若くて美しい彼女たちは、男たちの醜態に違和感を覚え、愛想を尽かし、食べ過ぎたものを嘔吐して館を去ってしまう。



もっとも印象に残ったのは、最後に生き残ったのは、アンドレア・フェレオルのみ、ということだった。
実は酸いも甘いも知っている年増女が、精神的にも肉体的にも男より強いという、年増女賛歌の映画でもあったわけだ!(このように解釈していいのだろうか・・・とも思うが。)



左から、フィリップ・ノワレ、ウーゴ・トニャツイ、アンドレア・フェレオル

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マルチェロ・マストロヤンニ。大好きな俳優です。

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横になっているのが、ミシェル・ピコリ

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空腹時に見ることをお薦めします・・・。