
「無比人」
製作:2005年
▼今回も功夫片のレビューをしようかと思っていましたら、先日とんでもない作品と遭遇したのでコチラを急遽紹介してみます。ちなみに今回は久々の視聴となるVシネの格闘アクション物なんですが…こんな凄まじい映画は久々に見たかも(汗
さて、前にもちょっとだけ触れましたが、漫画原作者として有名な真樹日佐夫氏は、とかく「裏社会の住人」を主人公にしたがる傾向があります。『ワル』シリーズしかり、『愛しのOYAJI』しかり…そんな真樹センセイが(一応)表社会の人間を主役にし、著名な格闘家を実名で出演させたのがこの『無比人』という作品です。
原作は『紙のプロレス』紙上で掲載された同名小説で、掲載紙の縁故なのか菊田早苗が主人公を演じています。他にも、真樹センセイの人脈がフル活用された豪華な出演陣にも注目したいところですが、本作はそれ以上のある問題を2つも抱えていたのです…(後述)。
■しがないプロレス雑誌の編集長だった四方堂亘は、あるとき盛り場で用心棒をやっていた男・菊田早苗と出会う。現役レスラーの頭突きを物ともしない彼に、亘はプロレスラーにならないかと持ちかけた。かくして菊田はリングに上がり、タイガーマスクやグレート・サスケ(本人)たちと闘いながら、確実に成長していった。
のちに路線を変更し、異種格闘技戦に血道を明ける事となった菊田は、こちらでも怒濤の快進撃を続けていく。ボクシング・キック・柔道・ムエタイの強豪たちに対し、プロレスで真っ向から立ち向かう菊田。そんな中、連れの女のことで彼と亘は揉めごとを起こし、一険悪な関係に陥ってしまうのだが…。
そして次は空手に挑戦するということで、やっぱり出ました真樹センセイ(笑)の助力を得た菊田は、空手への対策を講じていく。そして、交流戦で数見肇と互角の勝負を繰り広げるのだが、その矢先に謎の集団(中国武術か?)から襲撃を受け、瀕死の重症を負ってしまった。
菊田との関係に行き詰まりを感じていた亘は、病院で彼の生命維持装置を外そうとするが、突然目覚めた菊田がそれを制止。そのまま菊田は息を引き取り、物語は幕を下ろすのだった。
▲…という話なんですが、そんなことより本作には致命的な問題があります。この作品、とにかく「暗い」のです。作品のカラーが暗いというわけではなく、全編に渡って照明がほとんど機能しておらず、絵的に非常に見辛いのです。
ストーリーの照明も酷いんですが、これが格闘アクションになると更に悪化。試合ではリング上にスポットライトが2基しか設置されておらず、ほとんど真っ暗闇の状態でバトルが行われていました。
本作は超低予算の作品らしく、モブシーンなどはフッテージで処理されています。恐らく、これらの暗さは観客席が映らないようにするための措置と思われるのですが…いくら予算が無いとはいえ、さすがにこの演出は無理がありすぎます(爆
また、本作は濡れ場の多いマキ印の作品の中でも、特にサービスシーンが多く用意されています。ストーリー部分では必ず濡れ場が挿入されており、しかもこれが「女王様とお呼び!」なSMショーばっかり!
濡れ場と格闘シーンが交互に描写されるあたりは、陳恵敏(チャーリー・チャン)の『火爺』を彷彿とさせますが、全体的な出来は『火爺』の方が圧倒的に上だったと思います(爆
様々な格闘団体が協力し、大勢の格闘家が出演しているにもかかわらず、ニコイチ映画やマーシャルアーツ映画以下のしょうもない代物になり果てた失敗作。本作の監督は『ワル序章』も担当しているけど、こっちは大丈夫なのかなぁ…?

「ハード・ブラッド」
原題:黄飛鴻'92之龍行天下/龍行天下
英題:The Master
製作:1989年
●徐克(ツイ・ハーク)が李連杰(ジェット・リー)と初めてのコラボを果たし、『ドラゴンファイト』に続いてアメリカロケを行った作品です。
様々な点で『ドラゴンファイト』とダブる要素があり、徐克にしては突き抜けた爽快感や独創性の感じられない作品となっていますが、『ドラゴンファイト』がシリアスで陰惨な物語に徹したのに対し、本作は明るい雰囲気の動作片として味付けされています。
アメリカで漢方屋を経営していた武術家・元華(ユン・ワー)は、格闘界を牛耳ろうとする元弟子のジェリー・トリンブルから襲撃を受け、重傷を負ってしまう。一方、元華を尋ねて渡米してきた弟子の李連杰は、行方不明になった元華を探そうと奔走するが、一向に手がかりは掴めなかった。
そんな中で出会った郭錦恩(クリスタル・コォ)と都合よく良い雰囲気になっちゃったりするのだが、とある功夫道場に所属していたアン・リチェッツと遭遇した事で、彼女が匿っていた元華とようやく再会する事が出来た。
しかしトリンブルにボコられたのが相当応えたのか、元華は店の立て直しには否定的なご様子。そこで李連杰が立ち上がるのだが、格闘界の支配を目論むトリンブルとのバトルで警察沙汰になってしまう。正当防衛が認められてトリンブルはムショにぶち込まれたが、元華は「お前は帰れ」と李連杰を拒絶し、やむなく帰国の途に着くことに…。
郭錦恩の気持ちも知らないで別れようとする李連杰(笑)だったが、刑務所を脱獄したトリンブルが元華を一網打尽にしようと動き出していた。忘れ物を取りに店へ戻った李連杰と郭錦恩は、そこで元華の真意と彼がトリンブルの挑戦を受けた事を知り、すぐさま彼らの元へと向かった。
元華はトリンブルの手下たちを相手に奮戦していたが、怪我が治りきっていなかったため苦戦を強いられている。そこへ李連杰が現れ、雑魚たちを一瞬にして叩きのめすと、強敵トリンブルに立ち向かっていくのだった。
…という話なんですが、正直言ってそれほどご大層な作品ではありません。コメディや恋愛描写もギクシャクしているし、話の繋がり方もちょっと雑。蛇足に次ぐ蛇足のようなラストなど、のちの『ワンチャイ』系列と比べると出来に大きな落差があります。
とはいえ、その後の『ワンチャイ』を髣髴とさせる場面が多々あり、例えば仲間の不良トリオに修行を課すシーンや、その後の店に現れたトリンブルの手下たちを迎え撃つシーンなどは、なんとなく黄飛鴻っぽさを感じさせます。
ラストバトルでの雑魚を相手にした無双っぷりや、片足を封じられた際に李連杰が取ったポーズなど、それっぽいカットがいくつもあるところを見ると、徐克は本作の段階で李連杰を黄飛鴻にしてしまおうと考えていた…のかもしれませんね。
功夫アクションは外人との立ち回りが多く、いまひとつ乗りきれていない部分があるけれど、本作の目玉は何といってもジェリー・トリンブル!この男の存在に尽きます。キックやテコンドーの猛者であるトリンブルは、その輝かしい経歴とは裏腹に作品には恵まれませんでした。
タイマン勝負できる相手が居なかった『キング・オブ・フィスト』しかり、カレン・シェパードとの共演を台無しにされた『ターミネーターコップ』しかり…。ですが、本作でトリンブルは動ける香港側のキャストと関わったおかげで、それまで演じたくても演じられなかった凄まじい格闘ファイトを披露しているのです。
オープニングでは元華と対戦し、七小福を相手に互角の戦いを熱演。中盤では李連杰と車の上で戦い、一進一退の攻防を見せるが決着は付かないまま流局。そしてラストではトリンブルVS李連杰のリターンマッチが行われ、両者は迫力の蹴り合いを展開していきます。
マーシャルアーツ映画では絶対に実現できない素晴らしい接戦の数々…この3つの勝負だけでも、本作には大きな価値があったと私は思います(感涙
徐克作品としてはいささか疑問を感じるところではありますが、格闘映画ファンとしてはトリンブルの活躍っぷりが強く印象に残る作品。裏を返せば、徐克作品にありがちな重苦しさや正面切ったテーマ性は無いということなので、軽い気持ちで見るのが吉です。
ところで本作にはビリー・ブランクスが端役で出演しているんですが、李連杰やトリンブルとの絡みやアクションは無し。彼も一緒に大暴れしてくれたら良かったんだけどなぁ…(ビリーは駐車場で李連杰を襲う悪党メンバーの一員としてチラっと登場します)。
ちなみに、劇中で郭錦恩に言い寄って李連杰に軽くヒネられた男は、ハリウッドの東洋人俳優であるジョージ・チャン氏。『ラッシュ・アワー』では運転手、『アルティメット・ディシジョン』ではヒロインの父親、『ハイ・ボルテージ』では悪のボスを演じるなど、この手のジャンルには縁のある役者さんです(香港映画への出演は珍しいかも?)。
氏は本作の9年後に『リーサル・ウェポン4』へ出演し、かつてヒネられた李連杰の手下として思わぬ再会を果たしますが、こちらについてはまた別の機会に触れるという事で…(笑

「恋はいつも嘘からはじまる」
原題:過埠新娘
英題:Paper Marriage
製作:1988年
▼デブゴンこと洪金寶(サモ・ハン・キンポー)が主演した現代アクションであるが、今回は香港返還に絡んだ移民問題を取り上げ、更には張曼玉(マギー・チャン)を呼んでジャッキー的な演出にも挑戦している。軽快なサモハン・コメディにしてはテーマ性が強いように思えるが、その原因は直前に撮られた戦争超大作『イースタン・コンドル』が関係している。
この頃、サモハンはフィリピンで一大ロケーションを敢行した『イースタン・コンドル』を発表したが、本人の思惑とは裏腹に客足は伸び悩んだ。ベトナム戦争を背景にしたハードで暗い物語は、明るく楽しい作品を求めていた香港の観客には受けなかったのである。加えて、『イースタン・コンドル』はテーマ性が希薄であり、取って付けたようなアメリカ批判で物語は締めくくられていた。本作はこれらの失敗を鑑みたサモハンが、明確なテーマと明るいコメディ描写を前面に押し出して作った「観客への返答」ともいうべき作品なのである。
■ボクサー崩れのサモハンは異郷の地でしょぼくれた生活を続けていた。同じ頃、彼氏といっしょにカナダへ移住しようとしていた張曼玉は、永住権を得るために偽装結婚をしようと計画していた。この偽装結婚のバイトに友人の紹介で乗ったサモハンであったが、彼自身は妻に逃げられた過去を持っているため、あまり張曼玉にいい印象を抱いていなかった。ところが、張曼玉の彼氏が結婚資金を持ったまま逃走してしまったことから、張曼玉は無一文で放り出されてしまう羽目に。
ただでさえ貧乏なのに、更に新しい同居人が増えてしまったとあっては家計が火の車。そこでサモハンは、再びリングに上がってボクシングの試合に参加する。手始めに高飛(コー・フェイ)を倒すと、かつての妻が再婚した男・周比利(ビリー・チョウ)との因縁の対決にも見事勝利した。ファイトマネーを手に意気揚々と帰宅したサモハンだったが、一方の張曼玉は知らないで参加した泥レスの試合で酷い目にあっていた(このシーン、私はあんまり好きじゃありません)。
このことでサモハンと張曼玉は悶着を起こすのだが、騒ぎの中で張曼玉のバッグがマフィアの持っていたバッグと入れ替わってしまい、目も眩むような大金が2人のもとに転がりこんだ。「これで大金持ちだ!」と喜ぶサモハンと張曼玉であったが、当然マフィアが黙っているはずがない。マフィアの狄威(ディック・ウェイ)は張曼玉を連れ去ると、例の大金を持ってこいと要求してきた。サモハンは仲間たちの協力を受け、遊園地でマフィアと対決するのだが…?
▲一連のサモハン式コメディ映画としては、少々中途半端な作品である。あまり笑えるギャグも無いし、張曼玉の扱われ方も単に惨めなだけで面白くも何ともない。ストーリーも勢いで押し切っている"だけ"という感じであり、全体の評価は及第点一個下といったところだろうか(ただ、移民問題に振り回されるサモハンたちの七転八倒ぶりは、滑稽だが悲壮感を感じさせるものとなっている)。
しかし、功夫アクションとなると途端に生き生きしてくるのがサモハン映画というものである。見せ場は中盤の試合とラストの大乱闘の2つだけだが、どちらも激しいスタントとアクションで彩っていて、とりわけ周比利のキャラがとても魅力的だ。本作の周比利は寡黙なキックボクサーで、サモハンにとっては妻を奪った恋敵でもあるのだが、彼はなんとラストの決戦にも参加!昨日の敵は今日の友と言わんばかりに、次々とマフィアを蹴っ飛ばす大活躍を見せるのだ。個人的には『精武英雄』の極悪軍人藤田、『ワンチャイ/天地覇王』の馬殴り王と共に、周比利3大名演の1つとしてカウントしています(笑
そんなわけで、アクションは満点だけどストーリーはチョメチョメという、サモハン映画の典型のような作品。お世辞にも張曼玉の魅力が発揮されたとはいえないが、周比利の魅力は存分に発揮されているので周比利ファンなら満足できるかも。…ところで、最後のアレで周比利は死んじゃったのだろうか?

「ラスト・キョンシー」
「キョンシー・セブンキッズ」
原題:靈幻七小寶/靈幻七小子/哈哈小疆屍
英題:Aloha Little Vampire Story/The Cute Vampire
製作:1988年
▼多くの名作を送り出し、台湾映画界に大きな功績を残した巨匠・李作楠(リー・ツォナン)。彼が作る作品は、一筋縄ではいかないストーリーと高度な功夫アクションが持ち味で、郭南宏(ジョセフ・クォ)作品と共に功夫映画ファンからは全幅の信頼を得ている。攻防戦に重点を置いた『鷹爪興蟷螂』、不戦の誓いを立てた男が闘う『勾魂針奪魂拳』、棍術を題材した『セイント・スティック/怒りの聖拳!』等々…どれも傑作と呼ぶに相応しいタイトルばかりだ。
だが、功夫片の時代を過ぎた80年代中期ごろから、李作楠は突然失速してしまう。ニンジャ映画ブームの際には、『地獄のニンジャ軍団・クノイチ部隊』のような見世物小屋的な作品を撮り、以後は羅鋭(アレクサンダー・ルー)作品に参加。キョンシー映画ブームになると、『妖魔伝』『新・桃太郎3』等を手掛けるが、どれもこれも傑作と呼ぶには程遠いものばかり。時折、キラッと光る物を見せる事もあるが、功夫片を作っていた頃と比べるとあまりにもレベルが違いすぎるのだ。
時代が移り変わる中で、流れに乗り切れなかった映画人は大勢いる。しかし、李作楠は時代の主流に乗ろうとせず、ニンジャやキョンシーに固執するという奇妙な行動を見せている。単に「落ちぶれた」という一言では語れない李作楠の動向…果たして、彼は何を思ってこれらの作品群を作っていたのだろうか?
■ある日の夜、キョンシーたちの宴で大人のキョンシーが大ゲンカを繰り広げ、ウンザリしたベビーキョンシー・鄭泰祐が家を飛び出してしまった。
鄭泰祐は山で遊んでいた陳彦儒(『新・桃太郎3』では羅鋭の息子を演じる)たちと出会い、なんだかんだで次第に親睦を深めていく。一方、街の名士・常山(!)は吸血鬼になった男を救うため、子供のキョンシーの血を欲していた。この常山が雇った道士…の息子が陳彦儒とケンカしたことから、道士に鄭泰祐の存在が発覚してしまう。
こうして鄭泰祐は、彼の血を狙う道士&連れ戻そうとする大人のキョンシーの双方から狙われる羽目になった。鄭泰祐は混乱を避けるため、陳彦儒たちと一緒に町から脱出を試みるのだが、道士と大人のキョンシーは追及の手を緩めようとはしなかった。
野を越え山を越え、時にはアクシデントに遭遇しながらも、鄭泰祐を生家へと送り届けようとする子供たち。しかし、鄭泰祐は皆に迷惑をかけまいと、陳彦儒たちの元から去ってしまった。陳彦儒は鄭泰祐を追いかけるのだが、行く手には道士のワナが待ち構えていた…。
▲本作は李作楠と荘胤建の共同監督作であるが、内容はそれほどはっちゃけた物ではなく、ごくごく普通の子供向けキョンシー映画となっている。前半はよくあるキョンシーもののドタバタ劇で、後半からは子供たちの逃避行を描いており、便乗作品としては良心的な部類に入る。
ただ、太陽が苦手である・人間の血を好む・息を止めたら襲ってこない…といったキョンシーの基本設定は完全に忘れ去られているので、キョンシー好きにはちょっと辛いかも?ちなみにラストで常山が悪人であり、道士を騙していたという説明がなされるのだが、常山が何をやりたかったのか解らないまま終わっている。一応、このへんのどんでん返しは李作楠らしいと言えばらしい気はするが…。
そんなわけでストーリー面にアラがあり、とても李作楠の作とは思えない代物になっている本作。しかし、武術指導が羅鋭&李海興であるため、功夫アクションだけは妙に気合が入っているのだ。ラストでは大人のキョンシーVS常山一味のバトルが展開されるが、常山は当たると爆発する電磁グローブを着用し、途中からバリバリ動ける吸血鬼までもが参戦!正直言って、ここだけ羅鋭作品みたいになっちゃってて浮いてます(笑
データベースサイトでは荘胤建の単独監督作として扱われているので、本作を李作楠の監督作だと断定していいのか微妙だが(ただしオープニングではしっかりと導演:荘胤建&李作楠と表記されている)、少なくともキョンシー映画としては悪くない作品だ。李作楠作品とは思わないで、単なるキョンシー映画の便乗作品として見れば、そこそこ楽しめるかもしれない。

「タイガー・コネクション」
原題:洗黒錢
英題:Tiger Cage 2/Tiger Connection
製作:1990年
●例によって問題児な元刑事・甄子丹(ドニー・イェン)は、あるとき黒社会がらみのトラブルに遭遇し、敏腕弁護士の關之琳(ロザムンド・クァン)と一緒に事件に巻き込まれてしまう。この事件は黒社会の一員・仇雲波(ロビン・ショウ)と呉大維(デビッド・ウー)の2人が、大金を巡って起こした抗争によるものだった。
仇雲波は關之琳が大金を隠したのではないかと勘違いし、さらに偶然から彼女と甄子丹は殺人犯の容疑を掛けられてしまう。2人は自らの疑いを晴らすべく奔走して、呉大維から真相を聞き出すことに成功する。捜査に当たっていた刑事・楊麗青(シンシア・カーン)も真実に近付く中、甄子丹たち3人は消えた大金をエレベーターの中から見つけ出した。
さっそく彼らは豪遊を始めるが(笑)、呉大維は仲間内の問題を片付けようと1人で仇雲波の元へ乗り込んでいく。が、既にボスの羅烈(ロー・リェ)は仇雲波によって亡き者にされ、呉大維も健闘むなしく惨殺されてしまう。怒りに震える甄子丹は、アメリカから来た刺客のジョン・サルベティ&マイケル・ウッズを倒し、仇雲波との最終決戦に挑む!
『タイガー刑事』で甄子丹に肩慣らしさせた袁和平(ユエン・ウーピン)が、彼を主演に迎えて作った現代動作片です。功夫アクション的には『タイガー刑事』よりも工夫に富んでいました。例えば、手錠のままの戦闘・暗闇での駆け引き・バス上でのバトル(ここで背景に『ポリス・ストーリー』の永安百貨がチラッと映ります)など、ただの雑魚との闘いでも細部にわたって色分けができています。
1VS1のバトルはクライマックス以降に集中していますが、ここでもそれぞれ違った闘いを構築しています。ジョン・サルベティとの闘いでは日本刀を駆使したソード・アクションを、マイケル・ウッズとの闘いでは鎖で自由が利かないハンディキャップ・マッチを、そして仇雲波との闘いではオーソドックスな打ちあいを展開!改めて甄子丹の身体能力と、袁家班のアクションレベルの高さを再確認できました。
ただ、ストーリーが刑事アクションによくあるパターンの話なので、その点では不満が残ります。「犯罪組織を追い詰めようとする刑事が、陰謀によって犯罪者に仕立て上げられながらも、最後は巨悪を倒して終劇」…この手の話は『皇家師姐』シリーズや『タイガー刑事』『ドラゴン電光石火98』等々で繰り返し演じられてきたため、真新しさというものが全く感じられないのです。
違うのは個々の功夫アクションと役者だけであり、本作も『タイガー刑事』と『クライム・キーパー』にラブストーリーを足す事で完成してしまいます。いくら定番のストーリー展開とはいえ、さすがにこれでは工夫がなさ過ぎるのではないでしょうか…。
ただ、本作ならではの要素がない一方で、全体的な作りはしっかりしているし、功夫アクションに手抜かりはありません(単に粗暴なだけではない甄子丹のキャラなど、評価できる部分もいくつかあります)。これでストーリーにも工夫が行き届いていたなら、本作は甄子丹の代表作になったと思うんですが…つくづく惜しい作品でした。